関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

田重田静男厩務員

昨年は日本ダービー直後にフランス遠征を決断し、ニエル賞を制した上で凱旋門賞4着と日本を大いに沸かせたキズナ。帰国後は登録していた有馬記念を回避というまさかの事態もあったが、2014年を盛り上げるべく英断であったと大阪杯で証明してくれるだろう。その本年緒戦に向け、現在は先を見据えながらの仕上げを敢行中。多忙を極める中、田重田静男厩務員が中間の態勢を聞かせてくれた。

有馬記念回避が良い方向に

-:大阪杯で今季緒戦を迎えるキズナ(牡4、栗東・佐々晶厩舎)についてお伺いします。今日(3/26)は1週前追い切りが坂路で行われましたが、その前にCWコースで軽く足慣らしをしている場面を見させていただきました。有馬記念を回避した時の馬体と比べると、全く別の馬といいますか、丸みや張りを帯びていましたね。かなり回復、パワーアップしている感じが窺えましたが、それを太いという人も、成長分と見る人もいると思います。田重田さんのジャッジを聞かせて下さい。

田重田静男厩務員:両方ですね。どこまでか成長分で、どこまで絞っていいかを考えて調教していますし、レースに向けて、佐々木先生がどれくらいの体重で出したいという希望も聞いて、それは自分とも一致しているんですが、今の状態だと若干オーバーするかもしれませんね。

-:今日は2頭併せで追い切られましたが、馬場状態が悪いことを考慮しても“もうちょっと余裕を持って交わしてくれるのかな?”という目で見ていました。意外とてこずったなという印象が残りましたが、それも重さに関係しているのでしょうか。

田:そうですね(笑)。といっても、まだ1週前ですからね。

-:ここからあと一歩上向くと言ったところでしょうか。

田:先週、武豊騎手が乗って「最終追い切りも乗りたい」ということだったので、ならそうしようかということになりました。なので、来週に備えて今日は坂路で。もうちょっと絞って出したい気持ちもありますけどね。



-:体重以上に、見た目の締りが出るといいですね。

田:そうですね。中身の方ももう少ししっかりしてくると良いですね。

-:競馬場に行ったら、気合も乗って体の締りも違ってくると思いますが、あと一枚絞れると……。

田:例えるならば、本当にあと一枚。アナタの目は鋭い(笑)!

-:茶化さないで下さい(笑)。有馬記念前は、余裕がなさすぎる感じが見えたので、取り消した時は正直に良い判断だったと思いました。それが今の体に繋がっているということですよね。

田:だから、有馬記念の時に「取材の写真を撮らせてください」と言われても、正直、レースは使えないと思ったからね。

-:今日は存分に撮って良かったんですね?

田:ええ、立ち写真もよろしくお願いします。



-:ライバルになるであろうエピファネイアやメイショウマンボも休み明けとなります。キズナ自身に関しては心配しなくてもよいでしょうか?

田:我々が頑張るだけですね。今の状態で、完調にどこまで近づけるかということをメドに調教しています。

-:もちろん、先も見据えてということですね。次もまた取材させていただきますので、健闘を祈っております。

田:いつもありがとうございます。



囲み取材での佐々木晶三調教師のコメント

-:追い切り時計についての印象はいかがですか?

佐々木晶三調教師:結構速いんじゃないの。(坂路)53秒台で最後も13.2秒やもんね。良い馬場やったら51秒くらいだっただろうから、ちょうど良いな。51の12.4秒くらいやろうね。日ごとに凄く良くなってる。理想的な調教ができています。

-:先週はCWコースでの追い切りでしたよね。

佐:CWコースでした。ユタカちゃん(武豊騎手)が乗るからね。凱旋門賞以来だから、息作りの意味合いの内容でした。コースでどうかな、と思っていましたが、それでも絶品の動きでしたね。

-:来週はそれほどやらない感じでしょうか。

佐:来週はまたユタカちゃんが乗りたいというので、最終追い切りはコースで単走を予定しています。結局、トータルでレース当日までに11本やれるのかな。



-:有馬記念は回避となっての復帰ですね。

佐:使って使えないことは無かったと思うけど、万全ではない状態で無理をして出すことはいけないと思ったのでね。ホースマンとしては当然の判断です。

-:その後は順調ですか?

佐:凄く良いよ。有馬記念を回避して、大山ヒルズではウォーキングマシンだけで1ヶ月過ごしたんだけど、その間にまた成長したなあ。凱旋門賞の時点で、ある程度完成したかと思っていたんだけど、まだ成長してる。ワンパワーだけじゃなくて、ツーパワーアップくらいしていますね。

-:まだまだ体も大きくなっているんですか?

佐:多分10キロ増くらいになっていると思うけど、ムダ肉が付いていないから、ほぼ成長分やろなあ。まだ成長しているのは珍しいですね。

-:今回は同世代のクラシックホースが3頭揃いました。

佐:盛り上がっていいじゃない。桜花賞の8割くらい(ファンが)入るって聞いたよ。先週はゴールドシップも快勝したし、天皇賞(春)も盛り上がりそうだね。こっちも世界で4番目に来ている馬だから、頑張ります。

●ダービー前・キズナについてのインタビューはコチラ⇒



【田重田 静男】Shizuo Tajyuta

1955年1月10日生まれ。
久保厩舎から、ホースマンとしての第一歩を歩み始めると、昭和47年の京都牝馬特別など10勝したセブンアロー等、そして、宝塚記念を制したアーネストリー、現オープン馬のダノンスパシーバなどを担当してきた。 息子は池江泰寿厩舎で有力馬を担当する田重田裕生調教助手。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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