関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

佐藤良児調教助手

皐月賞の戦前は初の右回りなどが不安視されていたイスラボニータだが、終わって見れば全く危なげのない走りで一冠目を奪取。2歳時から安定していたとはいえ、その成長には見張るばかりだが、今度の舞台は4戦4勝の東京コース。二冠目奪取に向け、待ったなしの条件だ。今回はデビュー時から同馬を担当する佐藤良児調教助手に、大一番に向けて態勢を聞かせてもらった。

歓喜の皐月賞時の雰囲気

-:まずは見事に勝利したイスラボニータ(牡3、美浦・栗田博厩舎)の皐月賞ですが、レース前の調整過程について教えてください。

佐藤良児調教助手:共同通信杯が終わってから放牧に出て、競馬の1ヶ月前に戻ってきました。戻ってきてからも、だんだんと大人になって、いらないことをちょっとずつしなくなりましたね。普段の攻め馬も落ち着いていました。気負いすぎることなく皐月賞まで順調にきたと思っています。

-:レース当日の馬の状態はどうでしたか。

佐:競馬場についてからはいつもおっとりしていますし、パドックに行くまでは少しバタバタしますが、自然と落ち着いてくれます。パドックの周回もおとなしいですし、初めての競馬場でしたが、いつも通りでしたね。

-:当日の競馬場の雰囲気、レース内容を振り返ってどうでしょうか。

佐:スタンドは人が多いし、馬場入場で歓声が上がったとき、首を高くして見ていたので、若干いつもより気を張っているのかなと、返し馬の後は気にはなりましたが、競馬自体はキレイに外に出ましたし、(蛯名)正義さんにうまく乗っていただいたなと。

-:佐藤さんにとってはクラシック初勝利ですが、レース直後はどんな気持ちでしたか。

佐:ホッとしましたね。後で何回もレースのVTRを見て喜んでいますが、レース直後は、とりあえず無事に終わってよかったなと。



やんちゃな馬の精神面が日々成長

-:その後の馬の状態はいかがですか。

佐:競馬を使った後、全然ゆがみもなかったですし、疲れもありませんでした。その後は週明け水曜日に、いつも通り山元トレセンに放牧に出ました。今月の7日に厩舎に帰ってきて、その後も順調にきています。今週(5/22)の1週前追い切りは、正義さんに跨ってもらいました。

-:今週は雨で馬場が良くなかったですね。

佐:馬場が若干重かったかなと。それでも、いつも通り順調に良い調整ができていると思います。皐月賞が終わって、そんなに緩んでいるわけではないので、その辺は全然心配していないです。

-:皐月賞の時の状態をすごくいい形でキープできているということでしょうか。

佐:そうですね。肉体的には、すごく大きくなったとか、この間で変わったというのはないですけど、気持ち的には、どんどんどんどん大人になってきて、鈍感になってくれています。

-:先ほど仰っていた、余計なことをしなくなってきたということですね。

佐:それが、どんどんいい方向に来ています。競馬に向けて、どうしてもイライラしてくる馬もいるけど、そういうのも出さずに来てくれているので、すごくいいかなと思います。



-:デビュー戦の頃はまだまだヤンチャだったのですか?

佐:そうです。普段の運動でも常歩なんてなかなかできなかったし、何かあればかっ飛んで歩いていました。まだたまにやりますけど、だんだん減ってきています。

-:佐藤さんからご覧になっていて、イスラボニータはどんな性格の馬ですか?

佐:小僧ですね。ヤンチャです。悪いことをするという気はないんでしょうけど、ただ遊びたいから。子供です。

-:じゃれてきたりとかですか?

佐:常にそういう感じです。

-:では、そういう面を残しながらも、だんだんレースに向けて余計なことはしなくなっているんですね。

佐:普段は全然まだお子ちゃまですけどね。運動とか、そういうことに対してはいらないことはしなくなってきました。あまり真面目じゃないところも良いところだと思います。真面目な馬だと、調教を積んでいくうちに精神的にいっぱいいっぱいになって、調教に対して嫌気がさしてきたりすることがありますけど、イスラボニータは適度に気を抜くことができているので。

初距離も不安は微々たるもの

-:レースに関しての良さはどのようにご覧になっていますか?

佐:競馬に対してすごくセンスがあります。折り合いに関しては、使う度にだんだん良い方向にいっています。競走馬の多くはなかなか綺麗に良い方向にはいかないものだから、それが経験を積む度に良い方向に行っているのが頼もしいです。

-:こういうレースをしたいと思っていても、なかなかできないですからね。折り合いがもっとつけばとか、こういう位置からできればとか。

佐:みんながうまくいくわけではないのでね。なかなか実践できるのは難しいですけど、それをやってくれているセンスはすごいと思います。

-:今度は東京2400mという舞台になりますが、そういう競馬センスの良さで、どんな走りをしてくれるのかという期待の面はどうでしょう。

佐:東京2400mは初めてですけど、それは別に今までもそうでしたから。



-:皐月賞の中山だって、右回りが初めてだとか言われていましたからね。

佐:今までの初条件と比べれば、初条件の度合いは少ないです。

-:距離くらいですね。

佐:あれだけ折り合ってくれれば、良くはないにしろ、こなしてくれるんじゃないかとは思います。距離どうのこうのではなくて、折り合いさえついてくれたらいいかなと思います。

人気よりも常に走ってくれる馬

-:イスラボニータはプール調教も交えていますよね。

佐:そうです。体を鍛えたいというよりは、頭に色々な刺激を与えたいというのが、もともとの狙いです。色々な経験をしている方が、何か新しいことがあった時に、馬の頭の中で対処できるようになるだろうということと、元気がいい方なので、それを発散させる意味合いですね。追い切り後なんかにプールを使っています。

-:プールに入っている時はどのような様子なんですか?

佐:おとなしいですよ。何をやるかは大体理解していますし、全然嫌がったりもしません。遊びながら泳いでいますよ。泳いだほうが馬は体を使いますから、発散できている部分はあるのかなあと思います。

-:体の使い方にプラスの面も出たりするのでしょうか。

佐:体や関節は本当に柔らかくて、可動域が広いので、それが走り方に繋がっているのかな。


「凄く薄くて、良い皮膚をしています。ただ、俗に言う“走る馬”というのは分かりませんでした。だから、今までこういう評価だったのかなと思います(笑)。他の厩舎の人たちからは、『走りそうだね』と言われるより、『大変そうだね』と言われることの方が多かったですからね」


-:触った感触など、今までの馬との違いはありましたか?

佐:凄く薄くて、良い皮膚をしています。ただ、俗に言う“走る馬”というのは分かりませんでした。だから、今までこういう評価だったのかなと思います(笑)。6戦5勝ですけど、1番人気は一度だけですし、結果に対して人気は無い方じゃないですか。トレセンでもヤンチャな仕草を見せていたこともあって、他の厩舎の人たちからは、「走りそうだね」と言われるより、「大変そうだね」と言われることの方が多かったですからね。

-:周りの評価は関係なく結果を出してきているということで。では、最後に、日本ダービーという大舞台に向けての意気込みをお願いします。

佐:ここまで問題なくきてくれていますし、後10日くらいですけど、何といっても順調にきてくれるように、できることは気をつけて、無駄な事故や怪我がないように。何とか無事にいってもらいたいですね。健康が一番ですので。

-:そのための調整はしてきているということですね。

佐:そうです。レースに関しては、僕らがどうこう言うことではないので、後はジョッキーに任せます。

-:とにかく無事に本番を迎えて下さい。ありがとうございました。



蛯名正義騎手 日本ダービー全成績
馬名 人気 着順
2014年 イスラボニータ ?人気 ?着
2013年 ヒラボクディープ 5人気 13着
2012年 フェノーメノ 5人気 2着
2011年 トーセンラー 7人気 11着
2010年 ハンソデバンド 13人気 16着
2009年 ナカヤマフェスタ 9人気 4着
2008年 ショウナンアルバ 8人気 12着
2007年 ドリームジャーニー 8人気 5着
2006年 エイシンテンリュー 14人気 12着
2005年 ダンスインザモア 11人気 14着
2004年 ハイアーゲーム 3人気 3着
2003年 スズカドリーム 11人気 15着
2002年 ノーリーズン 2人気 8着
2001年 ダイイチダンヒル 9人気 11着
2000年 ジョウテンブレーヴ 5人気 6着
1999年 オースミブライト 4人気 4着
1998年 クリールサイクロン 13人気 15着
1997年 セイリューオー 7人気 10着
1996年 サクラスピードオー 4人気 5着
1995年 ホッカイルソー 6人気 4着
1993年 ステージチャンプ 7人気 9着
1991年 シャコーグレイド 3人気 8着
ダービーには延べ21度騎乗。初参戦となった91年は皐月賞2着のシャコーグレイドで挑んだものの8着。トウカイテイオーの二冠を許した。

95年からは毎年名を連ねており、最も栄冠に近づいたのは一昨年のフェノーメノ。勝ち馬にハナ差届かず2着に敗れ、検量室で涙を流した。大本命イスラボニータで臨む今年こそ、悲願のダービージョッキーへ!


【佐藤 良児】Ryoji Sato

1977年11月21日生まれ。中学卒業後に上野育成牧場で勤務し、競走馬の育成に携わる。その後競馬学校を経て、2004年にトレセン入り。2009年より栗田博憲厩舎に所属している。イスラボニータをデビュー時より担当。2014年皐月賞で、自身の担当馬による初めてのG1勝利を果たした。