昨年のリベンジを果たすGⅠ2勝馬グランプリボス
2014/9/28(日)
担当助手すら驚いた大激走
-:スプリンターズSに出走するグランプリボス(牡6、栗東・矢作厩舎)についてお願いします。まず、聞きたいのは安田記念2着という好走の原因です。
久保公二調教助手:今でもびっくりしているのですが、報道の通りに春先に放馬で大怪我しました。春は全休かな、というくらいの怪我だったのですが、ノーザンファームしがらきで立て直してもらって、何とか使える状態まで持っていけました。新聞記者さんなどにも、怪我の影響があるかもしれません、と言っていたのですが、結果は2着と激走しまして、逆に馬券ファンには申し訳ないことをしました。
-:そういう話を僕は直接聞いてはいなかったのですが、馬体だけを見ると、良い時の張りもなければ筋肉も落ちていて、どうしたんだろう、と思いました。
久:怪我をして1ヶ月くらい馬房に入れっぱなしで、動かすこともできなかったので、筋肉もげっそり落ちましたし、骨と皮だけみたいな、見る影もないような馬体にまで減ってしまいました。それを見ているので、今回はどうなのかな、という思いがありました。
-:報道する側の僕らからしても、今のグランプリボスは良い状態ですよ、と推せる状態ではなかったですよね。
久:見た目的にもそうですよね。
-:1週間前に僕から「大丈夫?」というメールを送りました。
久:確か「自信ない」と返信しましたね(笑)。
「気持ちの強さはあったと思います。底力は凄いものを持っていますので。ゴール寸前までは夢を見ました。安田記念をついに勝てたか、と思いました」
-:「何とか立て直したい」という返信がきていたと思うのですが、よくそれで立て直せたなと。この馬の気持ちの強さというのがあったのでしょうね。
久:あったと思います。底力は凄いものを持っていますので。
-:しかも、あの馬場ですからね。あわや勝つのかというぐらいでした。
久:ゴール寸前までは夢を見ました。安田記念をついに勝てたか、と思いましたが、また2着でした。
-:17頭中16番人気という、G1馬にあるまじき人気を覆しました。
久:大したものです。
安田記念時より断然良い状態で帰厩
-:激走した安田記念の後は放牧に出しましたが、男馬で年齢も6歳となると、今年の初夏の暑さは厳しいものでした。初夏にしては異常に暑かったですよね。
久:僕は北海道に行っていたのですが、そうみたいですね。栗東の暑さは経験してないです。
-:ボスは北海道に放牧に出ていたのですか?
久:ノーザンファームしがらきで、ずっと夏休みを送っていました。帰厩は9月12日です。僕が札幌から帰ってきた日に、ボスも帰ってきました。
-:10日間くらい接しているわけですが、今年の暑かった夏の影響というのはなさそうですか?
久:馬体の張りも充実していて、しっかりと夏休みを過ごせたみたいです。
「(安田記念より)断然良いです。体調はすこぶる良いです。昔は3走目しか走らないなど言っていましたが、安田記念では休み明けを走りました。年齢を重ねたことで、そういうことは関係なくなってきましたね」
-:少なくても安田記念の時よりは良いですか?
久:断然良いです。体調はすこぶる良いです。まだちょっと太いくらいで、今日(9/24)は目一杯(追い切りを)やりました。
-:ボスはどちらかと言うと、太目に見えても良いくらいですよね。
久:馬体に関しては、そんなに気にしてないです。
-:もう6歳ですし、急激に変わることはないですか?
久:ないですし、レースが近づくと自分で体を作ります。
-:休み明けのG1も心配なさそうですか?
久:昔は3走目しか走らないなど言っていましたが、安田記念では休み明けを走りました。年齢を重ねたことで、そういうことは関係なくなってきましたね。
-:去年もスプリンターズSには出走しましたが、結果的にはツキもなく、1枠1番という枠で包まれて、直線だけの競馬になってしまいました。今回はまた左回りです。
久:左回りで、内回りとはいえ、中山よりは直線の長い新潟なので、とても条件の良いコースだと思います。
-:しかも、ずっと使っているので、馬場も荒れていて、コースも替わらないです。今のボスにはプラスですよね。
久:プラスになると思います。パワーがあるので、荒れた馬場でもへっちゃらです。
-:かなり楽しみにできますね。
久:この秋3戦は楽しみにしています。
近走の雪辱を晴らす秋3戦に
-:その「秋3戦」とは、スプリンターズSを使った後はどうするのですか?
久:マイルCSからの香港になると思います。
-:去年は悔しかったですね。
久:包まれて、最後の直線でしか競馬をできない悔しいものでした。枠もあるでしょうが、今回は安田記念で初めて乗った三浦皇成騎手とも相性が良さそうですし、楽しみです。
-:安田記念でゴールしてからの皇成騎手の悔しさはいかほどでしたか?
久:僕の方が悔しかったです(笑)。また2着か、と。人のことを気にするどころではなかったです。
-:それでも、送り出す前は、勝ち負けというものを意識していなかったですよね。
久:ゲート裏の輪乗りでも、人間も緊張していなくて、皇成騎手にも「楽しんできてや」と言っていたくらいです。
-:楽しむどころか、直線ではかなり熱い必死の走りでした。今回はもうちょっとクールに乗れそうですか?
久:1200ですし、僕は乗り役じゃないので分からないです。1200なので忙しくはなると思いますが、サクラバクシンオー産駒なので、なんとか対応してくれると思います。
-:去年のような1枠1番よりは、もうちょっと外目ですんなり行きたいですね。
久:外目ですんなり良いところに付けられればいいのですけどね。
-:乗る方からしたら、凄く難しいですよね。
久:新潟の1200は馬場も荒れていますしね。
-:その時の旬のコースがありますよね。絶対に2頭くらいしか伸びないというところを皆も分かっていて、そこで凌ぎ合いがありますよね。
久:その辺は乗り役さんに一任します。僕がどうこう言えることじゃないですね。
グランプリボス・久保公二調教助手インタビュー(後半)
「G1馬グランプリボスへの接し方」はコチラ⇒
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プロフィール
【久保 公二】Koji Kubo
高校1年の時に、笠松から中央に転厩してきたオグリキャップに憧れて、この世界に入ることを決意。それを親に納得させるため、高校2年の夏休みに北海道の荻伏牧場(ブルーインベスターズの前身)に一ヶ月間、丸々アルバイトに行き、なんと卒業後は同場に就職して2年間勤務。当時の思い出の馬はシルクムーンライトで、1歳の馴致で入ってきたウイニングチケットにも跨ったことがある。トレセン勤務は吉永猛厩舎からで、定年解散後は伊藤雄二厩舎に8年間勤務し、ニホンピロニールやメイショウカチドキ、ロードアトラスなどを担当。現在は矢作芳人厩舎に所属。これまでにグランプリボス、スーパーホーネットを担当するなど、名門厩舎の快進撃を支えている。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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