迷走の女王メイショウマンボ 完全復活の時へ
2014/11/9(日)
多少は渋った馬場が理想といえば理想
-:ちなみにこの2戦では両方7枠でしたが、枠は着順に関係ありそうですか?
塩:どうなんでしょう。折り合っていて、全然引っかかっていないですからね。でも、勝っているレースは、大丈夫かな、と思うほどのスタートなんです。いい子すぎると駄目なのかも知れません。
-:それを踏まえると、パドックでの仕草というのはいかがですか?
塩:京都に関して言えば、エリザベス女王杯の時の方が、うるさくもなく楽に引っ張っていた印象があります。一方の京都大賞典では、久々のレースということもあり、やる気が無いわけではありませんが、これくらいは仕方がないかな、と思いながらパドックを引っ張っていましたね。
-:今回はいかがでしょうか?
塩:分からないですね……。でも、結果が出ない時は、スタート直後から手応えがないんです。
-:時計勝負という点ではいかがでしょうか?
塩:どうなんでしょうね。“雨女”と言いますか、重馬場のレースが結構多いじゃないですか。僕が“雨男”なのかもしれんけど(笑)。真面目に走ってくれさえすれば、良馬場でも勝負になるとは思うのですが、あそこまで速いと少し難しいかも知れません。
-:実際、秋華賞の1分58秒4というタイムは、遅い時計というわけでは無かったですからね。
塩:しかも、京都はレコード連発だったじゃないですか。2歳戦でも速かったですしね。
-:一方で京都大賞典はレコードになるほどの速い時計ではありませんでした。
塩:ですから、時計については余り考えていません。他馬と比べて、パワーは牝馬ながら持っているので、渋ったり、荒れてくれたりした方がウエルカムですね(笑)。
-:では、今の好度計を連発している京都の馬場は、一抹の不安があるということでしょうか?
塩:不安というよりは、時計が掛かってくれる方が有り難いということです。この馬は抜けると多少ソラを使ってしまう部分があり、最後まで走り切るタイプでは無いんですよ。ですから、もう少し真面目に走れば、勝った時でも速い時計が出ると思うんですけれどね。でも、やはり、渋るか、荒れるかしてくれた方が有り難いなあ。
-:とはいえ、G1を3つも勝つ馬ですから、あまり関係ないでしょうね。G1を1勝の馬だったなら、ラッキーの1発もあるかも知れません。しかし、3つ、それも同一年というのは、よほど馬の力が抜けていないと勝てません。実際、秋華賞での8枠16番にしても、歓迎できることではなかったですよね。幾らでも内に入れたい気持ちはあったと思うんです。
塩:力は他馬よりも抜けていると思うし、抜けていて欲しい(笑)。もちろん担当者ですから主観が入ってしまうことは否めませんが、最近をとっても、ヴィクトリアマイルであの位置から2着に来たのだから(力はある)、という思いはあります。
-:しかも、前走の惨敗から一変しての結果でしたよね。
塩:ですから、問題はメンタルだけだと思うんです。牡馬に対してのメンタルといいますか。
-:それで若干ヘコんでしまわれた。
塩:今年は本当にめっちゃヘコんでます(笑)。オーナーサイドじゃないですが、やはり不完全燃焼には違いないので。
燃える気性が好調のバロメーター
-:馬の普段の様子、目つき、顔つきはいかがですか?
塩:機嫌はいいですよ。もともとは怒りん坊ですが、とても怒りん坊と、少し怒りん坊の周期が今はあるくらいで、基本は穏やかになったなあ、と思いますね。
-:では、また燃える女に……。
塩:先週は穏やかだったんですが、先々週のような怒りん坊の周期は、乗り替わりで足を上げようとする人へ噛みに行ったりしました。僕には余り怒らないんですけれど。おっとりしたというのは、相変わらずまるでありませんね。
-:相変わらずということならば、もう少し期待してもいいのでしょうか?
塩:ですから、今回である程度のお願い、神頼みというか(笑)。
-:もともと体だけ見ると、それほど見栄えするタイプでは無いですよね。そう考えると、10キロほど体重が増加したなら、むしろ良く見えるのでは、と素人目には思うのですが。
塩:この馬にしたら太いのかなあ……。でも、今の体重はある程度調教で攻めての体重なので、飼葉減らすのも、というのはありますね。去年の秋と比べたら飼葉の量は増えているんですよ。体つきをみても成長分ということで、敢えて体重を減らす必要はないのかな、と思います。おばちゃん体型になったとも言えますが、それが良いのか悪いのかは分かりません。ただ、この体重はしっかり乗り込んだ上でのものなので。
-:この馬は、立ち写真を撮る1週前に見ても、あまり良く見えなくて、レース直前くらいに凄く良くなっています。
塩:その方が結果が出ていますよね。
-:それが京都大賞典ではちょっと足りなかったですか?
塩:良すぎましたよね。
-:オークスの1週間前に見させてもらった時に、大丈夫なのかと思って見ていましたが、レース当日にはパンッとした感じがありました。
塩:たぶん、気持ちの問題なんでしょうね。最終追い切りでグッと良くなったりもするんでしょうけれども、普通の女の子より気持ちの部分が大きいのかなという気はします。
-:あと10日間で、なんとかスイッチがどこにあるのか探して下さい。
塩:それは幸四郎(騎乗で)で入っているはずなんですけどね。普段の攻め馬とかでは入らないです。そこで入ってしまうと調教もできませんしね。2週続けて幸四郎で、もし必要なら来週も併せ馬です。おそらく直前はやらないで、下(コース調教)で微調整程度になると思います。去年の秋は、併せ馬が大好きだったので、最後まで併せ馬でした。やり過ぎなんじゃないかというくらい、攻めてはいましたね。あとは先生がどう判断するか分からないです。様子を見ながら微調整ですね。
-:走らない馬を走るようにするより、走っていた馬を取り戻す方が、可能性はだいぶ高いと思います。
塩:もともと、抜けているくらい能力は違うと思います。走ったことがない3歳世代は別として、同世代とかとはちょっと違うな、というレースをエリザベス女王杯でもしてくれたので、何とか気持ちひとつとは思います。
「復活してほしいですよね。本当にそう思います。もともと賢い馬なので、レースが近いことはジョッキーが2週続けて乗って分かっていると思います」
-:ずっと取材させて頂いていて、こんなに負けるとは思っていませんでした。何とか復活してほしいです。
塩:復活してほしいですよね。本当にそう思います。もともと賢い馬なので、レースが近いことはジョッキーが2週続けて乗って分かっていると思います。これでスイッチが入らなかったらどうしようとは思います。最後まで、先生も幸四郎も色々考えているみたいですし、相談しながら、いかに真面目に走るやる気を出すかですね。
-:ちょっと引っ掛かって行くくらいの返し馬を期待しています。
塩:勝っている時も、放す時はうるさいですが、放すと幸四郎が上手く抜くんですよ。
-:入れるまでの、引き手を放すまでの手応えに注目しておきます。
塩:もうやることないくらいに、あれこれとやっているので、残りはメンコを取るくらいです。
-:まだそれは決まってないんですか?
塩:まだそんな話はないです。
-:直前に馬具変更などがありそうなら教えて下さい。
塩:こいつの場合、中から燃えるかどうかだけですね。
-:2回続けて外枠だったので、今回は内枠でも当たって、馬込みの中でちょっと揉めるくらいの方が良いかもしれないですね。
塩:外枠でも、ポンッとは行ってないですよね。上手に出てポジションを取るんです。
-:流れも向いた方がいいんですかね。
塩:気持ちさえ入れば、流れも何も関係ないはずなんですけどね。力を出し切れるかです。
-:今回は出し切ってもらいましょう。ファンは応援していると思うので、何とかして欲しいです。
塩:テレビの取材がずっときていて、その放送映像を見せてもらったら、牧場の人たちも出てきていたので、是非とも、という思いはあるんですけどね。たまにはディープでもハーツクライでもない馬がきてもいいじゃんって。
-:もう3つも獲っているじゃないですか(笑)。血統AAやSの馬が負けています。
塩:強欲になりすぎたんですかね。僕も実は欲深いですね(笑)。
-:とにかく、無事にレースまでいってください。
塩:何とかこの馬らしいレースができるように、やるだけのことはやります。
-:ありがとうございました。
(取材・写真=高橋章夫)
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プロフィール
【塩見 覚】 Satoru Shiomi
競馬に縁のない過程で育ったが、トレセンで働いていた知人の影響で興味を持つ。静内のグランド牧場で5年の勤務を経て、トレセンへ。ナリタブライアン、メジロパーマー、ナリタタイシン、シルクジャスティス、イイデライナーらを擁した大久保正陽厩舎から、厩舎を渡り歩き、現在の飯田明弘厩舎へ。
これまではオープン馬を一頭しか扱ったことがなかったが、母も手掛けていた自身所縁の血統馬メイショウマンボと運命的な出会いを果たす。デビュー当初のメイショウマンボについては「兄弟も走っていないし、そんなに期待もしてなかったんです。大人しくて自分で乗れたら良いや、ぐらいのスタンスでした」と振り返る。
プロフィール
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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