小倉から2歳女王の座を狙う個性派オーミアリス
2014/12/7(日)
重賞制覇が初めての口取り
－：阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に出走するオーミアリス(牝2、栗東･藤沢則厩舎)ですが、遅ればせながら、小倉2歳Sの優勝おめでとうございました。
藤沢則雄調教師：ありがとうございます。
－：全く人気がありませんでしたが、何故ここまで人気がなかったのでしょうか？
藤：新馬戦が同着で、その相手がオープン特別を使ってダメだったので、その比較で人気がなかったのではないでしょうかね。優作(国分優騎手)にも追い切ってもらって、動きも凄く良かったし、時計も出ていたんですけどね。
－：レース前の新聞を見ていると、人気になっている馬は先行馬が多く、逃げ切りで好時計で勝っている馬が目立っていました。オーミアリスの新馬戦は3番手から抜けだしての同着ということで、少し溜めながらの競馬ができたことは個人的に評価していました。ただ、小倉2歳Sでは思った以上に下げた印象を受けました。
藤：ゲートを出なかったんですよ。それを見て、優作を乗せて、1度ゲートをやっておけば良かったかな、と思ったのですが、最後は本当に凄い脚を使ってくれました。
－：あのような末脚が秘められていたことはあまりイメージしていなかったですか？
藤：僕にとって、初めての血統でしたし、ホワイトマズルの仔なので、ある程度、中距離の馬かなと思っていました。でも、仕上がっていましたし、その時期は距離がないので、芝の1200を使ってみようと。向きも良かったので、良い競馬はしてくれるとは思っていました。新馬戦も友一(北村友騎手)がちょっと外に行ってしまって、それがなかったら、もっと楽に勝てていたかもしれないですね。ただ、もし2着だったら小倉2歳Sは使えていないので、同着でも勝てて良かったですよ。友一も負けたような口ぶりで、馬も帰っちゃったんですよ。だから口取りもできなかったんです(笑)。
－：珍しいパターンですね。
藤：そうですよね。なので、前走に初めて口取りができたんです。
意外性が売りのホワイトマズル産駒
－：ホワイトマズルが父で牝馬となると、真っ先に思い出すのはビハインドザマスクなのですが、あの馬もあまり長い距離では戦ってなくて、終いのキレがありました。
藤：ホワイトマズルはそういった仔が出てくるんですよね。
－：イメージだと牡馬の場合なら長くてズブい印象があります。
藤：持久力タイプの印象はあります。でも、びっくりするような芝の短距離タイプもいるんですよね。
－：先日、オーミアリスの立ち写真を撮らせてもらい、馬体をじっくり見る機会があったのですが、今の体重が440キロぐらいで、ハッキリ言って、そのようには見えない大きさがありますよね。
藤：オーナーもそれをずいぶんと心配されているんですよね。
－：それはもうちょっと体重があってもいいのではないかと。
藤：そうですね。
「あれで結果が出ているのでね。あとは成長の度合いで10キロぐらい増えてもとは思います。年を越すに連れて、そうなってくれたら良いですね」
－：馬体的に言えば、骨格は足長で雄大な感じです。確かに筋肉量は少ない感じですが、440キロには見えない大きさがあって、スレンダー系の牝馬ですね。それでも良いような気がするのですが。
藤：あれで結果が出ているのでね。あとは成長の度合いで10キロぐらい増えてもとは思います。年を越すに連れて、そうなってくれたら良いですね。
－：先生のおっしゃっていたホワイトマズルの距離適性を考えますと、阪神JFでも距離が長いということはないですよね。
藤：長いとは思いませんけどね。ただ、マイナス要素を考えると小倉しか使っていません。阪神、京都で勝ち上がっている馬と比較すると、今回も人気はないと思います。坂路では走っていますが、小倉の1200を2回使って、平坦な馬場で走ってきていますし、大丈夫だとは思いますが、距離も1200からのマイルになります。ただ、引っ掛かるとか気負うような馬ではないので、そういう面では大丈夫だと思います。兄弟馬もどちらかと言えば、中距離で勝ち上がってきていますしね。
－：むしろ、楽しみにしていいのではないですか？しかもファンタジーSでは小倉2歳Sで二桁順位だったクールホタルビが勝ちましたし、京王杯2歳Sでは7着だったセカンドテーブルが勝ちました。俄然オーミアリスの評価が上がっているのではないでしょうか。
藤：2着の馬(レオパルディナ)がファンタジーSで6着でしたけどね(笑)。
条件的には好位からの競馬も可能
－：小倉2歳Sもオーミアリスを除けば、おおむね人気順になっていますし、色々な結果を分析してみても、まだまだ可能性が広がる馬だと思います。先ほどおっしゃっていたゲートの面で何か対策はしてきましたか？
藤：この前は悪かったですが、どうもないと思うので、特にはしていません。前走はたまたま出なかっただけなので。
－：それでは、今回はマイル戦に変わってある程度のポジションで競馬ができそうですか？新馬戦の時も3番手に行って、気の良いところもありますし、前を見ながらの競馬ができる位置にはいられるのかなと思うのですが。
藤：良いポジションには行きたいですよね。
－：まだ2戦しかしてないので、馬群に入った時とか、雨が降ってきた時など条件が変わるところに関しては、どのように考えていますか？
藤：雨に関してはみんなが嫌がると思いますけどね。いつもの調教を見ても、馬を怖がったりする様子はないので、多頭数も心配する要素にはならないと思っています。
－：雨が降った時はあれぐらいキレる馬だけに嫌だと。
藤：それはありますね。
12/3(水)、CWコースで国分優作騎手が騎乗。
一杯に追われて6F81.5－66.1－50.7－37.3－12.6秒をマークしている。
－：小倉で2戦を使われて、2連勝でしたが、今回の阪神は雨が降らなくても、小倉ほど軽くはならないと思います。その場合はこの馬のスタミナやパワーに関する特徴としてはどのように思いますか？
藤：今日の荒れた馬場で良い時計で走っているので、そういった面では見た目以上に力強さはあると思います。軽い馬場でキレるだけではなくて、底力も秘めた馬ではないかなとは考えています。
－：前走はたまたま展開がハマって、拾ったレースではないような気がします。
藤：中々、2歳のあの時期であのような脚は使えないですからね。
－：しかも1着から3着ぐらいまで後ろからの馬が占めていたら、そういうレースなのかなとも思うのですが、逃げていた馬も上位にいますし、あまり展開がハマったというよりは終いの良さで上に来たように思えます。
藤：2番目に脚を使っている馬より0秒5も速いんですよね。
－：最後にこの馬の血統やこれからの可能性も含めて、ひと言お願いします。
藤：小倉2歳S勝った時に大きな口を叩いて、「ホワイトマズルの仔で、兄弟馬も中距離で勝っているから、今回もいけますよ」とは言ったのですが、引っ掛かるような馬ではないですし、これから1戦1戦経験を積んで、距離も保ってくれたらと思います。そうしたら、来年の春も楽しみだと思います。
－：良血ばかりでなく、そういった馬を応援するファンもいると思います。阪神JF楽しみにしています。
藤：頑張ります。
－：ありがとうございました。
(取材・写真＝高橋章夫)
プロフィール
【藤沢 則雄】Norio Fujisawa
昨年までの重賞勝利はシルクフォーチュン(11年プロキオンS、12年根岸S、12年カペラS)、ナリタセンチュリー(04年京都大章典05年京都記念)などの7勝。厩舎では晩成の馬の活躍が多く、2歳で結果が出せるようになることを目標の一つとしていたが、小倉2歳Sでオーミアリスが優勝。自身初の2歳重賞制覇となった。また11年の11月6日京都2Rスズカヘリオス号が勝ってJRA通算200勝を達成。モットーは『丁寧な仕事をすること』。師の遠縁が藤澤牧場を経営。北海道・日高の牧場の動向にも非常に気にかけている。
1954年北海道出身。
1998年に調教師免許を取得。
1999年に厩舎を開業。
初出走：
1999年3月6日 1回阪神3日目2R シアトルマッシュ
初勝利：
1999年4月4日 2回中京4日目1R シーパッション
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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