久々のマル外大物候補ダッシングブレイズ 出世レースに参戦
2015/1/6(火)
東京デビューを選択した理由
-:シンザン記念(G3)を予定されているダッシングブレイズ(牡3、栗東・吉村厩舎)について、よろしくお願います。デビュー前から色々と話題に富んだ馬でしたが、実際に先生がご覧になった時の印象から教えて下さい。
吉村圭司調教師:今でもそうなのですが、だいぶ緩さのある馬でした。2歳のセリで購入した後に、早来で見させてもらって、やっぱり時間を掛けてあげた方が良いのかなという印象でしたね。
-:血統的には異色ですね。
吉:僕もここ何年かしかアメリカのセリには行っていないのですが、Kitten’s Joy産駒は向こうで数はいたんですよ。高く取引されているし、Kitten’s Joy自身も芝で活躍した馬で、産駒からも芝のG1馬が出ているのでね。異色というか、TapitやKitten’s Joyは人気のある種牡馬ですよ。
-:しかも、お父さんの母父がアメリカのLear Fan。日本のファンに知られている馬とすれば中山で行われたジャパンCのサラファンがそうでしたね。
吉:そうですね。やっぱり、血統的にも色々おもしろいところもありますしね。
-:セリの時から、日本の芝に合いそうな感触はありましたか?
吉:それで購入してきたはずなので。実際、動かしてからは軽そうでしたしね。早来からノーザンファームしがらきに移して、向こうのスタッフとも話していたら「結構良いモノを持っていそうですよ」ということだったので。
-:それで新馬戦を迎える訳ですが、東京の新馬戦を選ばれた理由はありますか?
吉:マル混(混合戦。外国産馬は出走できるレースに制限がある)でゲート試験を受かった後に番組を見ていると、マイル戦のマル混でちょうど良い番組があったので、大体この辺かなとなりました。それにオーナーも東京の方なのでね。
-:府中の新馬戦をムチも使わず楽勝しまして、勝ったことだけじゃなく、輸送もクリアできたことも大きかったのかなと思います。
吉:ええ。マル外だから空輸で来ている馬ですし、輸送に関してはやっぱり強いと思いますね。
敗戦の中にも収穫あった2戦目
-:2戦目の中京は人気に推されましたが、結果は2着でした。
吉:やっぱり人気にもしてもらっていましたし、結果を出したいことが本音だったんですが……。でも、展開ひとつで違った結果だったんじゃないかなと思いますしね。
-:コースは違えど、同じ距離に出走しながら、結果として新馬戦よりタイムが遅くなるという異例のケースでした。大概、新馬の方が時計が遅くて、2戦目は一つ、二つ詰まってくるというのが常です。この馬の場合は、馬場状態が影響したということは関係ありますか?
吉:いや、多分それはないと思いますよ。思ったよりも、スタートで幾らか遅れたので、後ろからにもなったのですが、流れ自体もそんな速くなかったでしょうし、道中は逆に折り合いが付いていたから、むしろそれは長い目で見れば、プラスだったと思うんです。
それに、正直、ちょっとホッとしたところがあるんです。それはちょっとまじめな部分がある馬なので、2戦目でどうかなと。気負いがあるかもしれないと思って見ていたから、あれを見て、逆にホッとしましたね。
-:逆に2000mなどの中距離戦へ向けて、メドのつく内容でしたか?
吉:あれくらいだったら、距離を延ばしていっても十分対応できると思いました。
-:シンザン記念に向かうにあたり、初の京都は合いそうですか?
吉:まだ3走目ですし、器用な馬で跳びも軽いし、まあ大丈夫だと思いますけどね。
「本当に、決め手は非凡なモノを持っているはずなので。(調教でも)やればスッと反応していましたしね。新馬の前は、いけるんじゃないかなという手応えはありました」
-:左(回り)、左と来ているが大丈夫ということですね。ちなみに2戦目に、初戦に乗ったブドー騎手が乗れなかったことをすごくガッカリしていて「何で乗れないんだ」と言っていました。
吉:もちろんブドーで行きたかったんですが……。
-:初戦勝った後に「あんなの何にもしなくて、あれだけのレースをしているんだよ」みたいな。
吉:結果的に乗れへんかったんよ、減量で、ハハハ(苦笑)。2戦目は朝日杯FSとも思っていたのですが、1勝馬で(枠に)入れる確証もなかったので、早目に前倒しをしてね。打診はしたのですが、そもそも彼らは中京にはなかなか行かないですからね。
-:その辺はエージェントさんとの兼ね合いもあって、ブドー自身では決められないと。
吉:そうですね。
-:でも、楽しみな馬であることは間違いないですね。
吉:本当に、決め手は非凡なモノを持っているはずなので。
-:その辺は調教でも感じるところがあるのですか?
吉:やっぱり、やればスッと反応していましたしね。新馬の前は、いけるんじゃないかなという手応えはありましたけど、でも、やっぱりやってみないと分からないからね、本当。調教で動いていても、なかなか力通り発揮できないことも多いし。
シンザン記念で何が何でも賞金加算
-:馬体に関しては初戦、2戦目と大幅な変化はなかった訳ですが、逆に言えばある程度仕上げて出しましたか?
吉:いや、そこまでメッキリはやっていないですよ。あんまりやり過ぎると、さっきも言ったとおり、まじめなところがあるので気負い過ぎるなと。男馬ですが、そういうタイプだと思っているので。
-:厩舎で見ている感じでは、そういうところはないですね。
吉:うん、扱いやすいですね。
-:どっちかと言うとオットリしていて、変に環境の変化に動じて反応することもないですしね。
吉:調教の時はけっこうチャカチャカします。まだ、常歩があまり上手にできないほどですから。
-:その辺がまだちょっとまじめ過ぎるところですね。ファンが、パドックでダッシングブレイズを見る時に注意する点というのはありますか?
吉:前走も落ち着いていましたしね。その辺の落ち着きがあるかないかというのは、ちょっとまだ3走目なので何とも判断できかねますが、じっくり見てもらっていた方が良いかもしれませんね。
-:開幕してすぐの馬場なので、位置取りもある程度気にされていると思いますが、先生の方からは度離されずに付いていってくれ、という指示は出されるつもりですか?
吉:やっぱりそうですね。中団より前ぐらいだなと思っています。
-:シンザン記念の後は2000mくらいのレースに向けて、という楽しみも出てきますね。
吉:何とか良い結果を出しておけば、後々が楽なので、ローテーションが組みやすくなるしね。
-:2勝目でいきなり重賞を獲ったら、春のローテーションは確約ですからね。
吉:何とか良い結果を出したいところですけどね。
-:中京を終わってからの動きはいかがですか?
吉:いつもと変わりないですよね。反動もなかったし、これなら使っていけるなと思っていましたから。あの時も、そこまでやっていなくて(負荷はかけていなかった)、菱田を乗せた当週も「反応を確認するぐらいで良いよ」と言っておきましたし。
-:逆に今回の方が?
吉:そうですね。競馬も使って、もちろんそのまま厩舎で調整しているし。結果が出れば、注目してもらえると思いますので。
-:見栄えも良い馬ですし、顔も良いですからね。また今後とも取材をよろしくお願いします。
吉:頑張ります!
(取材・写真=高橋章夫 写真=武田明彦、競馬ラボ特派員)
プロフィール
【吉村 圭司】Keiji Yoshimura
荒尾競馬で調教師をしていた父の影響で競馬界へ。トレセンへ就業後は飯田明弘厩舎、池江泰寿厩舎と渡り歩いた。技術調教師として池江厩舎に在籍していた当時は、オルフェーヴルの三冠達成を目の当たりにするなど、貴重な経験を得て、2012年3月から厩舎を開業し、3年目となった昨年は27勝をマークと着実に勝ち星を伸ばしている。名門で培った経験を糧にさらなる飛躍を誓う。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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