天性の素質の持ち主エアハリファ GⅠ参戦へ結果を
2015/1/25(日)
結果を出さなければいけない一戦
-:重賞勝ちまで後一歩のところまで来ているエアハリファ(牡6、栗東・角居厩舎)ですが、根岸S(G3)で重賞初制覇に挑みます。昨年の武蔵野Sでは道中4番手から勝ちに行って、追い込んできたワイドバッハの末脚に屈しました。あのレースの清山さんの感想から教えてください。
清山宏明調教助手:結果としては2着でしたが、レースの内容は強かったと思っています。ジョッキーも馬の癖や特徴を考えて乗ってくれましたし、競馬なので勝った馬を褒めるしかないと思います。
-:これまでのレースを見ても、やや勝ち味に遅いところがあります。性格や特徴を教えていただけますか?
清:非常に前進気勢の強い馬で走る事に真面目過ぎる面があるんです。そういった面をなるべく出さないようには注意しているのですが、キャリアを積んで大分マシにはなってきています。若い頃は真面目すぎるし、精神的なモロさもあったし、今より苦労しましたよ。
-:競馬に行って一生懸命に走りすぎるんですね。
清:そうなんですよ。その辺りのコントロールというかオンとオフの切り替えができると、違った結果になるのでしょうけどね。
-:ただ、武蔵野Sは府中の1600m戦ですし、一生懸命走ってしまうとゴールまでもたないような気がします。そう考えると以前より進歩しているのでしょうか?
清:確かに府中コース自体はごまかしの効かない、能力通りの結果が出てしまうコースなので、武蔵野Sに関しては上手く乗ってくれたかな?と思っているんです。しかも府中の成績は安定しているでしょ?コース相性というのも大きいと思います。
-:では、今回の根岸Sは狙って使ってきたと思って良いですか。
清:狙って使うというよりも、その先(フェブラリーS)を見据えて結果を出さなければいけない立場なので、なんとか今回の根岸Sでも、この馬らしい競馬を期待したいですね。
ダート路線に統一してきた理由
-:清山さんがエアハリファを乗るようになって、一番最初に感じたフットワークの印象はどんな走りでしたか?
清:僕が担当するようになったのは3歳の途中からでした。その時に「これは芝で走りそうだな!」と思いましたよ。僕自身も騎手でしたので、エアハリファの体の使い方、体の柔らかさ、乗って感じる瞬発力などを総合すると、芝が合う馬だと思ったんです。実際、レースで乗ったジョッキーに聞いても同じように「芝が合いそうだ」と言ってくれましたよ。これまでも芝に使うチャンスはあったのですが、ダートの方が結果も出ていたし、オーナーの希望もあってダート路線を歩んできました。
-:血統的にDiscreet Catという種牡馬もあまり耳にしませんし、しかも、芝が合いそうだと言うのも意外です。もしかしたら府中の1600mでもスタートは芝なので、エアハリファにとってアドバンテージのある条件なのでしょうか。
清:そこだけが結果につながる訳ではないので、何とも言えませんが、本当に柔らかい良い走りをする馬なんですよ。
「どちらかというとパワーよりスピードがこの馬の良さだと思います。可能性は感じられますので、ワクワクしているというのが現状ですね」
-:ダートというとパワーがないとこなせないイメージがありますが、エアハリファの場合はむしろスピードが強みになると思ってよさそうですね。
清:どちらかというとパワーよりスピードがこの馬の良さだと思います。可能性は感じられますので、ワクワクしているというのが現状ですね。
-:この馬は様々な距離を使ってきましたが、ベストの適性というのはどの辺りにあるのでしょうか?
清:今は1400から1600mのダートに統一していますし、コントロールできるようになったとはいえ、気性的に前進気勢の強い子なので、最近使っている距離が能力を発揮できるのかなと思っています。
-:性格的に枠はどの辺りがベストなのでしょうか?
清:今となってはどこでも大丈夫ですよ。
-:前まではそうではなかったと。
清:少し脆いところがありましたから、外の方が良かった時期はありましたね。揉まれない方が良いといった心配点はありました。でも、レースを使いながらクリアしてくれているところもありますし、今は本当にどの枠順でも、どんな形になっても持っている力は発揮してくれていますよ。
身上のスピードで1400mに対応
-:芝適性もありそうなダート馬ということを考えると、パサパサのダートよりも少し湿っているダートの方が、この馬の良さが出るということでしょうか?
清:そうかもしれないですね。ただ、どの条件でもこなしてくれているので、一概には言えないですし、そのような馬場の方が能力は発揮しやすいかもしれません。
-:パワーよりもある程度スピードを感じられるダート馬ということですね。最後にこの馬を応援しているファンの方々にメッセージをお願いします。
清:昨年の暮れから、少し時期的にはスライドしてしまいましたが、体調的には非常に良い状態でこられています。こちらとしてもどのようなパフォーマンスをしてくれるのか楽しみにしているところがあります。今まで歯がゆい部分もありましたが、結果はどうあれレースに向かっていく上では、楽しみを持ちながら臨めると思います。なので、応援をして頂いている方々には、同じような気持ちでレースを見てもらえたらと思っています。
-:清山さんも日々愛情を注ぎながら接しているのですね。
清:フフフ(笑)。そうですね。本当に可愛いのでね。
-:そうでなければ、このように着実にステップアップすることはなかったと思います。
清:こちらとしてはサポートするだけなのでね。能力の発揮をしやすい状況を、より高い可能性で作ることができればと思いながら接しています。
-:エアハリファのスピードを生かして、どこかで我慢した上で、最後まで伸びてくることを祈っています。ありがとうございました。
(取材・写真=高橋章夫 写真=武田明彦、競馬ラボ特派員)
プロフィール
【清山 宏明】Hiroaki Kiyoyama
鹿児島県出身。競馬学校騎手課程第2期生で、同期には横山典弘騎手や松永幹夫調教師がいる。騎手としては重賞4勝を含むJRA通算141勝の 成績を残し、2002年に引退。重賞の舞台で、人気薄ながら2度の逃げ切り勝ちを決めたロンシャンボーイとの個性派コンビでも名を馳せた。引退後は領家政蔵厩舎の調教助手になり、その後角居厩舎へと移る。これまでにウオッカやディアデラノビアなど厩舎の看板ホースの調教を担当。トップステーブルを支え続け、数多くの取材を受ける厩舎のスポークスマンとしても広く知られている。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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