【出走回避】円熟期を迎えるエアハリファ
2015/2/15(日)
※2/17(火)、右前脚のフレグモーネのため出走回避となりました。
このインタビューは2/12(木)に行ったものです。
フェブラリーSに向けて、まさに負けられない一戦だった根岸Sを快勝。かねてから安定度は抜群のタイプとあって、出走叶えば本番も有力馬の一頭と数えても差し障りはないだろう。前哨戦で的確なコメントを残してくれた清山宏明調教助手だが、今回のジャッジは果たして……。戦前は1強ムードの2015年G1第一弾に、遅れてきた大物が待ったをかける。
重賞初制覇を振り返って
-:フェブラリーS(G1)に出走するエアハリファ(牡6、栗東・角居厩舎)ですが、前走の根岸Sでは鮮やかな勝利。おめでとうございます。念願のG1に出走できますね。
清山宏明調教助手:ありがとうございます。そうですね。目標としていたところで結果を出せたということは非常に良かったですし、なおかつG1に出られるということで、モチベーションも上がります。こういったサークル内にいる人の目標とする形で、ここまで来られたことにありがたい気持ちもありますし、こういった馬に携われていることに感謝の気持ちを持っています。
-:根岸Sを振り返っていただきたいのですが、ペースとしては1400mの割にはあまり速くなかったです。その中でポジションとしては、思っていたよりも後ろにいましたね。
清:僕も正直そう思いましたし、もっとスムーズな形になるのかなとは思っていたのですが、あのような前半スローの展開の中でもジョッキー(三浦皇成騎手)がそういった位置に持っていったことは、何かイメージがあってしたのだと思います。結果からすると、ペースが緩かった道中でも我慢ができたことで、エネルギーが蓄積されて、最後の差し脚に繋がったのだと思います。そういったところに柔軟に対応できたことがエアハリファの能力だと思いますし、あえて厳しいレースにしたのかなと、僕は思っています。
「心身ともに大人になってくれたのかなと。これからG1に向かうわけで、厳しいレース内容になると思いますが、厳しい条件で対応できたので、次のレースでも、同じようにできるのかなとは思います」
-:これまでのエアハリファを見ていると、馬群の中からの競馬ではあまり良いイメージがありませんでした。
清:少し躊躇するというか、経験が浅い時はメンタルの弱さが出てしまって、デリケートなところはありましたね。今回はあのような形になってしまって、少し心配して見ていましたが、杞憂に終わってくれたので、心身ともに大人になってくれたのかなと。これからG1に向かうわけで、厳しいレース内容になると思いますが、今回も厳しい条件で対応できたので、次のレースでも、同じようにできるのかなとは思います。それまで不安に思っていたところを、ある程度払拭させてくれるレースでした。
-:持っている能力からすると、もっとポンポンと出世するのかなと思っていたのですが、12年の観月橋Sでアクティビューティに逃げ切られたりなど、惜しいレースもありました。押さえ込められたり、締められたりすると伸び切れないといった、歯がゆい部分があった馬があそこまで馬群をスパッと割って来られたというのは、これまでに積み上げてきたものが結果に繋がったのかなと思いました。
清:おっしゃる通りですね。今まではレースに向けてハートの熱いところを前面に出していたり、それと同時に脆いところも持っていて、ポテンシャルと精神的なところのバランスが合わない状態でレースを迎えていました。そういうところから結果に結びつかないことがありましたね。時間を掛けてその部分を徐々にクリアして、結果を出してくれていると思います。本当に1つのレースの経験がどんどん積み重なって、良い形になっていると思います。
見られるか?三浦騎手のG1勝利
-:今回は府中の1600mということで、エアハリファとしてはこれまで4戦して2勝、2着2回と成績の良い舞台になります。ファンからすれば、いきなりG1でも通用すると見ても良いのでしょうか?
清:正直、やってみないと分からないところはあります。ただ、データを重視するのであれば、エアハリファが得意とする舞台だと思いますし、条件的に下級であっても得意でなければ、そのような成績にはならないと思います。しかも東京のダート、1600というのは本当に力がないと勝てないコースですし、そこで勝てているというのは、エアハリファの能力ですし、得意とするところかなとも思います。前走の根岸Sを見ても、東京の舞台は合っていますし、勝った勢いを持ちながら、得意の舞台で勝負できるので、フェブラリーでも前向きにいけるのかなと。ただ、あくまでもチャレンジャーで、結果を残している馬たちを相手に勝負できるところまでやっと来れたという立場です。あとは持っている能力を出せるのか出せないのかというところだと思います。
-:元ジョッキーの目線から見て、ということでお聞きしたいのですが、2走前の武蔵野Sでは速いペースを先行して粘っての2着というレースで、そのようなことがあったから、根岸Sでは下げて、ワイドバッハに勝とうという考えはあったレースだったのでしょうか?
清:あえて僕の中でイメージすると、次の舞台設定を考えながらトライした部分もあるのではないかなと。それと武蔵野Sではかなり速いペースを先行して、勝ちに等しい2着だったことを考えると、乗っているジョッキーの立場では本当に自信を持って、どんな形になっても良いパフォーマンスをしてくれる、ということは確信していたと思います。それでもレースなので、同じ徹は踏みたくないという思いもあったと思います。なので、色々なことをイメージしていて、その上で自然と体が動いたのではないでしょうかね。
-:三浦騎手にとっても初のG1制覇が懸かっていますし、ファンも楽しみにしていると思います。前回、ダート戦でありながら、あれだけの瞬発力を発揮できたということで、楽しみにして観られるのではないですか?
清:ジョッキー心理としてもワクワクしながら乗れると思いますよ。
「ある程度、形態が作りやすいメンバー構成となっていると思います。人気を背負っている馬が前にいるということは、目標を持って進められます。目標があることはレースを考えれば、大きなプラスだと思いますよ」
-:相手関係を見ますと、コパノリッキーが出していくと思いますが、その中でエアハリファがどのように組み立てていくのかは清山さんとしてはイメージしやすいですよね?
清:ある程度、形態が作りやすいメンバー構成となっていると思います。人気を背負っている馬が前にいるということは、目標を持って進められます。不安要素としては、後ろから来る馬の目標になってしまうことですが、そこは自分の馬を信じるしかありません。目標があることはレースを考えれば、大きなプラスだと思いますよ。
-:エアハリファの能力を考えれば、ある程度は先行できるのかな、と思うのですが。
清:そこはゲートが開いてからということになると思うのですが、前回のように我慢させるとしても自信を持ってできると思いますし、その時の状況を見ながらになるのではないかなと。ジョッキーも前走が自信になったでしょうし、より信頼して乗ってくると思いますよ。
芝スタートに対応できる理由
-:根岸Sから中2週というローテーションが少し厳しいのではないかな、と心配されるファンもいるかもしれません。坂路で追われた1週前追い切り(2/11)はいかがでしたか?
清:レースを使ってからのケアも非常にスムーズに行きましたし、様子を見ながらやって来ました。最近は間隔を詰めながらレースを使えていませんが、状態としては高いレベルで安定していると思います。
-:同厩舎のサンビスタも出走しますね。
清:強いですよね。チャンピオンズCでも4着と結果を残しています。前走も横綱相撲というか、強い競馬をしていました。
-:初めてのG1挑戦です。希望する枠、条件があれば教えてください。
清:枠は問わないですね。スタートも速いですし、ポジションもどこになっても問題ないと思います。今はどこが良いという注文を付けるよりも、どこでも対応できるようになっていると思いますよ。
-:府中の1600mは芝スタートで外枠のほうが芝の部分を長く走れる分、有利なのかなとも素人目ながらに思いますし、エアハリファ自身、清山さんが(前回のインタビューで)おっしゃっていたように芝でこそ、という面を持っています。外枠でこそ楽にダートコースに入っていけるのではないですか?
清:色々と見ながらポジションを取れますよね。そういった芝への対応というのも本質的には持っていますし、長く芝を使えるというのは確かにプラスかもしれませんね。
-:馬券を買う方としてはエアハリファの能力を信頼して、枠などはあまり考えなくていいということですか?
清:ただ、今回はチャレンジャーになります。ようやく重賞を獲らせて頂いて、やっとG1の舞台に立てる立場です。前走の内容を高く評価してくださるファンの方がいるというのは嬉しい事ですし、自信にもなります。G1初挑戦で、そのように言ってくれるのは勇気になりますし、私たちとしてはファンのためにエアハリファが能力を出し切れるようにサポートするだけです。そのサポートができているのか、ということをレースの前までに吟味して頂いて、応援してもらえればと思います。
-:話は変わりますが、フェブラリーSが中山で開催されるよりは府中で開催される方が期待は大きくなりませんか?
清:先行できるので、中山の方が得意なのかとも思うのですが、あまり結果は出ていないんですよね。回りは関係ないと思うのですが、中山だと気持ちが入りすぎたままレースをしてしまうのかなと。そういったことで結果を残せていなかったと思っています。故に東京の方が良いと思いますし、実際に成績も残せていますからね。
-:前走の1400mよりも1600mの方が条件は良いと思いますので、楽しみにしていたいと思います。
清:あとは残りの日数を大事にして、エアハリファがしっかりと走れるように微力ながらも支えていきたいです。根岸Sの時も本当に良い状態でしたが、今回もそれより落ちるということはないと思います。少しずつですが、上積みもありますし、本当に下降することはないのかなと。もともと一回使うことで状態を上げるタイプということは、僕自身もこれまでに感じていますし、今回も同じような状況なのかなと思っています。
-:それではレース当日を楽しみにしています。ありがとうございました。
(取材・写真=高橋章夫 写真=武田明彦、競馬ラボ特派員)
プロフィール
【清山 宏明】Hiroaki Kiyoyama
鹿児島県出身。競馬学校騎手課程第2期生で、同期には横山典弘騎手や松永幹夫調教師がいる。騎手としては重賞4勝を含むJRA通算141勝の 成績を残し、2002年に引退。重賞の舞台で、人気薄ながら2度の逃げ切り勝ちを決めたロンシャンボーイとの個性派コンビでも名を馳せた。引退後は領家政蔵厩舎の調教助手になり、その後角居厩舎へと移る。これまでにウオッカやディアデラノビアなど厩舎の看板ホースの調教を担当。トップステーブルを支え続け、数多くの取材を受ける厩舎のスポークスマンとしても広く知られている。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
■公式Twitter
@aklab0328さんをフォロー