下馬評を覆せ!無敗のTR勝ち馬キタサンブラック
2015/4/12(日)
宇治田原ステーブルの調教が隠し味
-:気になる状態面ですが、今回の皐月賞に向かって、スプリングS後も順調ですか?
押:いったん宇治田原に短期放牧に出して、先週帰ってきました。3月25日に出て、4月1日には戻ってきました。小旅行みたいなものです(笑)。
-:年明けから本田厩舎や「タガノ」冠馬が好調なのですが、その影には宇治田原ステーブルがありますね。
押:そうです。シッカリ乗ってくれて、うまく調整してくれています。
-:それらの馬が走る時はタフな馬場でしたが、そんな時に決まって宇治田原ステーブル調教馬が走っていると感じていたのですが。
押:結構キツイ坂路ですからね。宇治田原は。
-:良血馬は硬い馬場で瞬発力でビュッと来るのが特徴ですが、重いタフなステージで調整して戦って、まさにそれがキタサンブラックですね。
押:そうですね。
-:ここから成長していけば、よりスタミナやパワーに磨きがかかっていきますね。
押:ええ、体もまだ良くなりそうな余地があるので。
-:前回の競馬を同じ中山でしてしまうと、今度は目標になるのじゃないか、という怖さがあります。答えをトライアルで見せてしまったということはないですか?今度はリアルスティールがキタサンブラックを射程圏内に入れて、と。
押:ノーマークということはないですものね。前回はリアルスティールらが後ろで牽制し合って、出し抜けした感じで勝ちましたからね。しかし、どちらにせよ大崩れする感じではないですね。シッカリと自分の能力はどんな展開でも発揮しそうなタイプですから。
ブラックタイド産駒のイメージを覆す
-:あと、馬体重に関してですが、今のところどれくらいか教えていただけますか?
押:502キロですね。ずっと504と502の間ですね。栗東で調整している間は。
-:競馬でも504でしたね。輸送では減らないタイプですか?
押:減らないですね。シッカリ変わらず、イレ込まず。競馬場についてもよく食べます。基本、イレ込まないですからね。ホント暴れたのは前述の1回ですね。
-:この馬はどこでスイッチが入るのですか?ゲートが開いてからですか?
押:競馬でもカーッと走っていないですからね。上(鞍上)の言うとおりに走っているだけで。素直に走っている感じじゃないですか?
-:しれっと勝ち続ける化け物じゃないですか(笑)。
押:切れる馬には分が悪いかもしれないですが……。
「新馬戦を使ってから、攻め馬の行きっぷりがガラッと変わってきましたね。新馬戦を使うまでは、まだ何も分かってないような、乗り味だけいい子という感じで、攻め馬をしていたのですが、勝ってからグッと行きっぷりが良くなりました」
-:順調に調教していって、あの先行力に一歩一歩磨きがかかっている感じではないですか?
押:安定というか、いいオープン馬になりそうですね。
-:クラシックで成績を出そうと思ったら、成長力を問われます。どこかでガラッと変わってくる手応えがあると思いますが、この馬は新馬から見てきてどこが一番変わってきましたか。
押:新馬戦を使ってから、攻め馬の行きっぷりがガラッと変わってきましたね。新馬戦を使うまでは、まだ何も分かってないような、乗り味だけいい子という感じで、攻め馬をしていたのですが、勝ってからグッと行きっぷりが良くなりました。
追加登録料を払って出走する大一番
-:芝馬で500キロといえば大型に入ります。なかなかそれで走る馬は少ないですよね。
押:このままうまく育っていけば楽しみですよね。
-:新馬戦で510キロです。牧場時代はもうちょっとあったと思うのですが、それで脚元にトラブルが出なかったというのも、この馬の能力のひとつですよね。
押:入厩も成長を見ながらゆっくりとさせました。気性がいいから、厩舎に入ってからは全然問題なく来ていますね。クラシックは追加登録なのですよ。さすがにクラシックに間に合うと思っていなかったのか、200万を払って追加登録で出走です。
-:この活躍を見れば、スプリングSだけでも安いものです。遅れてきた怪物ですね。
押:今回走ってくれたら、そうなるのですけどね。
-:いや、まだ負けてないわけですから(笑)。
押:やっている方からしても「あ、勝ちよったわ」みたいな感じで(笑)。変なプレッシャーもかからないし、普段から扱いやすくて悩む必要もないので、本当に楽な馬です。
-:距離体系は違いますが、同じ清水厩舎のトウケイヘイローのパワフルさと脚質が似ていますか?
押:ヘイローよりは全然融通は利くと思うのでね。あの馬はビューっと行ってという感じで。この馬は終いからの競馬しかできないのかなという印象でしたからね。新馬を勝った時がずっと長い脚を使う感じでしたから。
-:2戦目の500万を府中にいて見させてもらったのですが、強かったですね。
押:メンバーは強いし「キツイかな」という感じでした。このメンバーで勝ったら大したものだと思っていたら、強い勝ち方をしたのでね。
-:残念ながら北村宏司ジョッキーが騎乗停止のため、乗り替わりとなりました。
押:乗りたかったでしょうね。クラシックだし、印も付くし。ウチとしてはよく浜中騎手が空いていたなと。乗り役と厩舎の相性もいいので。
-:あと1週間、楽しみに待ちます。今度勝ったら平常心ではいられないですよ。
押:僕らも競馬は楽しみですね。結果はどうあれね。もし、勝てればダービーでワクワクするでしょうね。ただ、余計なプレッシャーは厩務員も調教師も感じなくていい存在だと思いますからね。扱いやすいのがいいです。
-:G1挑戦に向けて意気込みを語っていただけますか?
押:今回は少し人気して、有力馬にマークされると思うのですが、この馬の能力を発揮してくれたらいい競馬になると思うので、頑張ってほしいですね。
-:ダービーに向けて、今後ともよろしくお願いします。
押:よろしくお願いします。
(取材・写真=高橋章夫 写真=武田明彦、山中博喜、競馬ラボ特派員)
キタサンブラック・押田道郎調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒
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プロフィール
【押田 道郎】Michiro Oshida
父は元騎手の押田年郎。妹も元騎手の押田純子という競馬一家で育つ。静内の目名トレーニングセンターで競走馬の育成、休養馬の調教に携わる。(当時10歳ながら)新潟の吾妻小富士OPを制したハヤブサオーカンにも乗った経験がある。
栗東トレセンに入って、いくつかの厩舎を経て飯田雄三厩舎から新規開業した清水久詞厩舎に所属。馬に乗るときのモットーは「邪魔をしないこと」。明るいキャラクターで厩舎のムードメーカーとして活躍する攻め専助手。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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