新潟2歳Sを制した当時から「クラシック候補」の呼び声が高かったミュゼスルタン。左前脚遠位端の骨折により一時は出走も危ぶまれたが、スプリングSからNHKマイルCという変則ローテを経て大目標である日本ダービーに辿り着いた。上がり33秒台の末脚は健在で、やはり気になるのは2400mへの距離適性。今回は大江原哲調教師に、ファンが最も知りたい質問を直球でぶつけてきた。

変則的なローテで臨む経緯

-:日本ダービー(G1)に向けたミュゼスルタン(牡3、美浦・大江原厩舎)の調整過程について教えていただけますか?今年は休み明けでスプリングSを使われましたが、その時の調整過程はどうでしたか?

大江原哲調教師:それはもう再三に渡って、速いところをビシッとやって、一度競馬を使ったぐらいの負荷をかけましたよね。

-:新潟2歳S以来だったわけですが、一回レースを使うくらいの負荷をかけた調整過程で、スプリングS当日の馬の状態はいかがでしたか?

大:半端じゃないくらいうるさかった。本当にうるさかったね(笑)。

-:それは競馬場についてからですか?

大:その前の装鞍所や、厩舎を出た時からうるさかったね。馬場入りの時はそうでもなかったのですが。

-:レース自体はどのようにご覧になりましたか?

大:出負けもしましたし、久しぶりの競馬なので、行き脚も悪かったですね。やっぱり半年間のブランクはあった印象でした。

-:久しぶりのレースを走った後の状態はどうでしたか?

大:反動はありましたね。2週間くらい楽をさせました。NHKまで6週間ありましたから、そこから立て直しを図りました。

ミュゼスルタン

▲NHKマイルC時の追い切りの様子


-:皐月賞に進むという考えもあったと思うのですが、NHKマイルC出走を決定するまでの経緯も振り返っていただけますか?

大:スプリングS終わってすぐマイルCに決まりましたよ。中山の最終週の馬場で、2000mのコースを1周回る競馬になるし、2回ターンしないといけないという点が、ちょっと嫌だなと感じまして、オーナーに提案して、それを快諾してもらいました。

-:NHKマイルC(3着)の結果についてはどのように感じられましたか?

大:スローの流れで位置取りが厳しかったですね。しかし、それは贅沢な悩みですね。

-:直線では非常に良い末脚でした。位置取りだけが厳しかったということですね。

大:いい脚を使ってくれましたね。ポジションはジョッキーに任せていたので、結果論です。走りはすごく良かったですよ。

-:レース後の馬の状態はどうでしたか?

大:1600m走った後で、気持ちがグッと入ってきているので、その気持ちを2400mに向けてなだめてます。今回は中2週ということで、時間は短い印象なので、テンションが上がり過ぎないように気をつけているつもりです。そうして、ダービーの2400mに対応できる調整に心がけていますよ。

気になる距離適性はこう見る

-:スプリングSの後はNHKマイルCに向けて調整して、レース内容は先ほど伺った通りです。今回はダービーに向けてあまりテンション上がらないように調整しているということで、金曜日に1週前追い切りとなりました。そこの指示はどのようにされたのですか?

大:ウッドチップコースを5Fから15-15で入って、そこから少しペースアップしていく形ですね。馬の気持ちをあんまり高ぶらせたくないですが、どのくらい気合が入ってるのかな?と反応を見るような乗り方でした。

-:それでは狙い通りの追い切りができましたか?

大:そうだね。ピッタリの時計でしたよ。

-:当週はどのような予定を立てられてるのですか?

大:今週だいたい5F70秒-3F40秒ぐらいでした。来週は併せるので、もう少し速くなると思いますが、感触をつかむ程度ですね。70秒を少し切るくらいで、ウッドチップをやろうと思っています。

-:それで丁度よくなるだろう、という算段ですね。先生から見て、この馬の良さはどの辺にあると思いますか?

大:競馬で折り合いつきますし、切れる。競馬は上手じゃないかな。

ミュゼスルタン

22日、助手が騎乗して、ウッドコースを単走の一週前追い
5F70.8-13.1秒を馬なりでマークしている


-:それがこの府中の2400mという距離でどう出るでしょう。

大:3歳の今ほどの時期だったら、上手く対応はできるかなと。だからといって将来も長いところを走れるという保障はないものですが。

-:本質的に、この馬はどのあたりが一番力を発揮できる舞台だと思いますか?

大:2000mくらいまでかな。マイルから2000mだと思ってます。

-:まだ3歳の今の時期なら他の馬も未経験ですし、対応できるだろうというお考えですね。

大:本当の大人になる前だし、人間でいうと「ハイスクール」だね (笑)。

-:みんなにとって未知数の条件でもありますよね。

大:これから路線が別れていくからね。長距離やマイルに。

-:各々の適性はこれから出てくるということで。「日本ダービーはホースマンの夢」と言われてますので、先生のレースに対する想いがあったら聞かせてください。

大:この世界に入ったのは日本ダービーって言葉が一番最初に飛び込んできて、今に至りますからね。今回のように段々とチャンスももらっているので、なんとかスルタンに頑張ってもらいます。

(取材=競馬ラボ 写真=競馬ラボ特派員)