桜花賞は無念の除外も、忘れな草賞のデモンストレーションを経てオークス快勝。春は“持ってる女”ぶりを見せ付けたミッキークイーンだが、夏場の充電を経て、春の課題も除々に解消しつつある様子。牝馬二冠制覇に向け、まずはローズSで順当な滑り出しを見せてくれそうだ。池江厩舎の正確なコメンテーターとしてお馴染み、兼武弘調教助手に秋緒戦に向けてのポイントを聞かせてもらった。

帰厩後は春先に比べてカイ食い良好

-:今回もよろしくお願いします。ローズSのお話を聞かせていただく前に、札幌2歳S(G3)プロフェット(牡2、栗東・池江寿厩舎)は惜しかったですね。

兼武弘調教助手:本当に、首の上げ下げの差でした。ついていなかったですね。

-:今後も楽しめそうな馬が池江厩舎から出てきました。

兼:そうですね。ハービンジャー産駒で楽しみですね。洋芝が合いそうな印象だったので、向こうに持って行ったのですが、上手いことハマったというところですね。

-:ハービンジャー産駒にしては、気性面での激しさはマシに見えますが?

兼:お母さんのジュモーが相当に激しい気性だったのです。入厩する時に、どんなにヤンチャな子が入ってくるのかなと思ったら、そこまではなかったです。自分(の気持ち)を持ちながらも、何とか収まってくれているので。

-:セレクトセールの後に牧場に行って、ハービンジャーを見せていただいたのですが、けっこうな荒くれ者で、元気一杯ハービンジャーここにあり、という感じでした。

兼:馬体はあれくらいのサイズ感の方が良いですね。切れがあるなというイメージです。

兼武弘調教助手

池江厩舎のスポークスマンとしても知られる兼武助手


-:さて、ローズS(G2)ミッキークイーン(牝3、栗東・池江寿厩舎)ですが、オークスではクルミナルのゲート入り不良で、終わってみれば1~10着までの間に偶数番の馬が8頭入るという……。奇数枠で来たのはクルミナルとアースライズだけで、後は偶数枠の馬がズラッと並んだという異常事態に陥いりました。

兼:運があったんですね。元々、ゲートに注文が付く馬だったので、できれば偶数枠の真ん中が理想だったのですが、イメージ通りの良いところが当たってくれて。

-:それ以上に、あの馬の切れというか、良さを最大限に活かせたレースだったのではないですか?

兼:直線の長い東京で、思う存分の脚を魅せてくれて、ねじ伏せましたね。


「春先と比べて、今回の方がカイ食いは良好なので、良い材料だと思っています。ローズSで言えば、プラス体重では絶対に来てほしいところですね」


-:そうなると、期待は秋華賞になる訳ですが、あの頃からの成長度合いというのがファンは気になっているところだと思います。ひと夏超えての成長はいかがなものですか?

兼:体は少し増えたかな、という雰囲気ですね。大きくとまではいきませんが、春先と比べて、今回の方がカイ食いは良好なので、良い材料だと思っています。

-:ディープインパクト産駒の牝馬と言うと、カイ食いが細い馬が多いのですが、今のところの体重はどれくらいでしょうか?

兼:先週の段階では448キロで、明日追い切り後に量って、少し減ってくるとは思っています。ローズSで言えば、プラス体重では絶対に来てほしいところですね。

-:元々、デビューした時も440キロはありましたからね。その時は太かったのかもしれないですが?

兼:ええ、ゆったりはしていましたね。

兼武弘調教助手

実績どおりに馬場状態は不問

-:先週、今週とCWコースで追われましたが、動きはいかがでしたか?

兼:素晴らしいですね。「さすが」といった印象で、今日(9/9)ジョッキーに跨ってもらったのですが、馬場が重い中でも楽々と走り抜けていました。やっぱりこの馬は違うな、といったところですね。

-:血統的な背景を見ても、重いCWコースは動かない印象がありますが、それでも動けるのですね。

兼:そう、意外に動くんですよね。

-:オークスはそれほど速い時計でもありませんでしたし、それほど時計が出る馬場でもなかったのに勝てたというのは、ディープ産駒の中ではある程度、馬場の許容範囲があるタイプですか?

兼:そうなのでしょうね。だからこそ、CWがこんなに重くてもスッと動けてくるところにもなるのかなと。

兼武弘調教助手

1週前追い切りの様子


-:とはいえ、今週から始まる阪神競馬場の馬場状態も気になりますが、もちろんこの馬には軽い方が良いと。

兼:そうですね。そう思っています。

-:体だけを見ると、パンパンの良馬場がいかにも良いタイプですね。

兼:(良馬場が)向きそうな馬ですよね。それでも、時計の掛かった忘れな草賞でもしっかり走れてきているのは、「頼もしい」の一言ですね。

-:休み明けのここも、何の不安もなく挑める一戦ですね。

兼:体重をずっと気にしていた馬だったのですが、今回は順調に来られていますし、オークス馬として恰好を付けたいですね。

課題のゲートを克服したい前哨戦

-:3歳牝馬世代は順調さを欠いている馬もいますし、ミッキークイーンも順調に秋華賞まで辿り着いて、池江厩舎の看板馬の一頭として相応しいレースをしてほしいですね。

兼:そうですね。あとは、課題だったゲートは、不安のない状態とまでは言いきれないですが、少しずつ良くなって来ていると思っています。もちろん今もゲート練習はしています。

-:休み明けで奇数番だった時は、ゲートに一抹の不安があるかもしれないと。

兼:あるかもしれないですが、レース毎に落ち着きつつあるかな、という気配なので。

兼武弘調教助手

-:オークスの時と違って、極端に内枠とか極端に外枠になったりするのは、別に気にしなくて良いですか?

兼:そこまで前に行かないと駄目なこともありませんし、じっくり構えられる馬ですからね。

-:牝馬特有の一瞬の切れというよりは、長く捲れると。

兼:切れはあると思うのですが、ある程度、長めからでも行けるので。ローズSは阪神の外回りの1800mなので、直線距離もありますから。問題ないと思いますね。

-:まとめとして、ファンの皆様にメッセージをお願いします。

兼:春はオークスで見事に優勝してくれまして、本当に嬉しかったですね。順調に夏も越せました。また新しく進化したミッキークイーンを見ていただければと思いますので、応援して下さい。

(取材・写真=高橋章夫 写真=競馬ラボ特派員)