貫く攻めの姿勢 逆転へ望み託すロードクエスト
2016/4/10(日)
厩舎と騎手が感じたスプリングS
-:皐月賞(G1)に出走するロードクエスト(牡3、美浦・小島茂厩舎)のお話を聞かせてください。まずは、前走のスプリングS当日の馬の気配について、先生がご覧になっていかがでしたか?
小島茂之調教師:毛艶とかはもう一息だったんですよね。でも、調教はけっこうしっかりとやってきたので。新潟の時とかは暴れたりとかあったのですが、大体こちらも術を心得ていたから、当日も落ち着いていたし、これで良い競馬をしてくれるだろうなと思いました。しかし、思った以上に走れなくて……。終わってからの息遣いというか、息の戻りというかね。返し馬に行った時の池添騎手が感じた息というのは、攻め馬をあれだけやってきても、休み明けの息だったのかなというのは感じていますね。
-:初コンビだった池添騎手からは、レース後どのようなお話を?
小:僕はえらいガッカリして、ちょっとこんなんじゃ困るなと思ったのですが、池添騎手は「もちろん勝ちたかったけど、使ったことで変わる感じがするから、これで良いんじゃないですか」ということだったですけどね。
▲スプリングSを終え、引き上げるロードクエスト
-:前走後からここまでの過程を教えていただけますでしょうか?
小:レースが終わったらいつも放牧に出すのですが、今回は在厩なので、ウチの在厩する馬と同じように木曜日まで楽をさせて、その後から淡々と乗り出しています。競馬を使った後はちょっとカッとしやすいところがあるので、それを落ち着かせるようにして、落ち着いてからは順調ですね。
-:中間、先生が跨って坂路などで乗られていますが、馬の状態はどのようにお感じになられていますか?
小:結構、カッとした時のパワーがすごいから。一時助手を乗せたら引っ掛かるようになったので、それ以来僕が乗っています。ホープフルSの前なんかはカッとして抑えきれないようなところがありましたが、今はどういうバランスだったら抑えられるというのを分かってきているので、そういう意味ではそこまで苦労しなかったですね。その後も落ち着いてというか、ちゃんと指示を待てるような感じになっているので、上手くいっていると思いますよ。
-:馬と人とのコミュニケーションが取れるようになったと。
小:そうですね。
攻めの調整で逆転を誓う皐月賞
-:今週は先生が跨って1週前追い切りをウッドでやられていましたが、その狙いと動きの評価をお願いできますか?
小:実は池添騎手が「当該週に来る」という話をしていて、その前に1週前も来ないか、という話をしていたら「当該週で良いです」と言っていたのが「やっぱり行きます」と言ってくれたんだけど、2週連続で乗せたら、もしかしたらまたスイッチが入っちゃうかもな、と思ったので、ウチの方から「やっぱり当該週だけにしよう」という結論にしました。
その前の週末ぐらいには完全に落ち着いたけど、それを本物にしたかったというか、それが今週の追い切りなんですよね。そこで、全然折り合って、上手くいって。ただ、隣で併せていた馬をずっと面倒みてあげるというか、ずっと併入するつもりだったのが、意外とその馬が動かなかったものだから、1回こっちが前に出ちゃって、最後は待って併入という形になったんだけど、そこで我慢できたということとシッカリ動けていたので、それで良かったと思います。ゴールした後は、後は置いていくぞ、とスッと行ったんでね。
-:先生は2歳時の頃からこの馬に跨っていると思いますが、変わってきたところとか、何か感じる部分はありますか?
小:前はもっと緩かったんだけど、走りはしっかりとしてきているなというのは感じますよね。その分、今週の追い切りもそうだったけど、シュッと抜けようとしちゃうというか、もうちょっとゆとりを持って抜けていたのが、一気に抜こうとしてしまうところがあるので、そこら辺は、脚の使い所として工夫しなきゃいけないかなと思いますね。
-:今後は馬の状態を診ながらになると思いますが、現時点で、来週の調整についてはどのように考えてらっしゃいますか?
小:来週は、逆に池添騎手が「ちょっとやって反応を見たい」というなら、やっても良いと思っているんです。そのために、今週はちょっと控えたところがあったので。後は、多分明日(4/9)やると思うんだけど、その感じ次第で最終的には決めるようになると思いますね。その土曜日にやった感じと、日曜日の感じと火曜日の感じで池添騎手に好きなように乗ってもらうのか、ある程度オーダーを出していくのかというのはね。
「走る馬というか、出世していく馬の過程の中で、やっぱり激しいままではなく、ちゃんと自分でオンとオフが切り替えられる馬が出世していく傾向がありまして、それがメジャーエンブレムにも当てはまるのかなという気はしますね」
-:現状で、先生が考えるこの馬の良さというのは、どのようなところにあるのでしょうか?
小:もう単純に初戦と2戦目の強さですよね。あの後ちょっとケチが付いちゃったからアレだけど……。やっぱり池添騎手が、ああやってこの間負けたのに「今まで僕が乗った馬と遜色ない」と言ってくれたところが、僕らにとっては救いなのでね。息が悪かった面というのは気になっていたところなので、そこはしっかりと。あとは馬が健康であれば攻められるから、攻めてやっていくしかないなと思っています。
-:暮れのホープフルSでも走っていますけど、皐月賞の中山2000mという舞台に関しては、どのようにお感じになられていますか?
小:3回目なのでね。そろそろ中山を克服というか、勝ってもらいたいなと思いますね。
-:最後に、レースに向けての抱負をお願いします。
小:例年になく相手が強くて、下手すると世代によってはどの馬も皐月賞を勝てたかもしれないようなライバルが集まっている気がします。その中で、「3強」の中には入れてもらえなかったけど、その候補としては残っているんだろうから、しっかりと仕上げて、やっぱり強かったなというところを出せれば良いなと思います。
-:応援しています。ありがとうございました。
プロフィール
【小島 茂之】Shigeyuki Kojima
1993年に競馬学校・厩務員課程を修了後、嶋田功厩舎の厩務員として競馬界でのスタートを切る。翌年には浅野洋一郎厩舎への移籍と同時に調教助手へと転向し、調教師としての下積み時代を過ごした。
晴れて調教師の仲間入りを果たすと、開業から5年、2008年の秋華賞をブラックエンブレムで制しG1初制覇。翌年にもクィーンスプマンテでエリザベス女王杯を制した。美浦所属でありながらも、管理馬が関西圏でレースをする際は事前に栗東入りさせ、調整を進めるスタイルを取り入れていることでも知られている。また、実直な人柄にはサークル内外からの人望も厚い。
自身の管理馬の情報を発信することに力を入れており、06年から小島茂之厩舎公式ブログ『小島茂之厩舎の本音』を継続している。