7月13日(水)に行われる3歳ダート王決定戦・ジャパンダートダービー(Jpn1)にカツゲキキトキトとのコンビで同レース初騎乗となる木之前葵騎手。女性ジョッキーが脚光を浴びる中、当地のダービー馬とのコンビで最高峰の舞台に挑めば、当人にとっても大きな経験となることだろう。レースを目前に控えたいま、人馬のキャリアと意気込みを語ってもらった。

カツゲキキトキトとの出会い

-:競馬ラボで木之前騎手にインタビューをさせていただくのは初めてとなりますが、まずは次週7月13日(水)に迫ったジャパンダートダービー(Jpn1)で騎乗するカツゲキキトキト(牡3、愛知・錦見勇厩舎)のお話をお伺いしたいと思います。笠松から名古屋に転厩して、しばらくしてからメキメキと強くなった印象がありますね。

木之前葵騎手:そうですね。初戦で私が乗って勝って、何走かパッとしない着順が続いて、その後7連勝しました。うちの先生(所属厩舎でもある錦見勇夫調教師)が「この馬は化ける」とずっと言っていたくらいで、その通りでした。でも、もともと左右の前の鉄が均等ではなかったんです。当初は歩様も悪かったのですが、最近はその様子もないんですよ。東海ダービーは兄弟子の大畑さんで挑むことになって攻め馬も大畑さんに替わりましたが、今回、また私がコンビを組むことになって、久々に一本目の追い切りに乗ってみたら、凄い力になっていました。私で重賞を2勝した頃よりも馬力があって、若干持っていかれ気味になって。

カツゲキキトキト

-:木之前騎手とのコンビで制した一つ目の重賞、新春ペガサスCについて振り返っていただけますか?

木:本当はレースが1月7日に予定されていたのが雪で延期になりました。その時はホウライマリーンが最有力じゃないか、と言われていましたが、2ヶ月延期になってからのレースだったので、その間に(カツゲキキトキトが)勝ち出したんですよ。

-:その前走の(3/3)スプリングCではそのホウライマリーンが1番人気の中、大畑騎手が騎乗して勝利していましたよね。その時の心境はいかがでしたか。

木:自分が攻め馬をしていたということもあり、戻ってきたキトキトに駆け寄りましたね(笑)。その後、「次はお前を乗せるかな」と先生に言われて、「私なんかが乗って良いんですか!?」ってなりました。それまで重賞で1番人気になるような馬に乗ることがなかったので、凄くビックリしましたね。

-:それは先生の采配に感謝って感じですかね。

木:そうですね!馬主さんも快諾してくれたので。

-:結果的に(3/17の)新春ペガサスCで無事勝てましたね。

木:一番は重賞初制覇で嬉しくて、1番人気で勝てたこともホッとしましたね。


「その時は勢いよくゲートも出て、2番手に付けて、『あ、これは余裕だな』と思って最後のガッツポーズを綺麗に決めようと考えていました(笑)」


-:引き続き手綱をとった新緑賞ではどうでしたか?

木:その時は勢いよくゲートも出て、2番手に付けて、「あ、これは余裕だな」と思って最後のガッツポーズを綺麗に決めようと考えていました(笑)。

-:その後、先生の采配で、大畑騎手にダービーを勝たせるために乗り替わりになりましたが、レースはどのようにご覧になっていましたか?

木:まず、先輩がどのように乗っているか、そこを注意して観ていました。確実なレースをするように乗っていたので、安心して観ていられましたよね。勝ててよかったな、と。

-:ダービーは大畑騎手にとって悲願だったと思います。

木:ダービーの前日はみんなから「ダービージョッキーおめでとう」とか声をかけられていてちょっと可哀想でしたね。「絶対大変だろうなぁ」と思いましたね(笑)。

-:木之前騎手がJDDに乗ると決まったのは東海ダービーの前とお聞きしたのですが、その経緯はどのような感じだったのでしょうか。

木:先生から「ダービーを勝ったらお前を乗せるから、東京行けよ」と言われました。最初は冗談かと思いましたね。

カツゲキキトキト

▲大畑騎手がカツゲキキトキトの手綱をとった東海ダービー

▼木之前葵騎手の師匠であり、カツゲキキトキトを管理する錦見調教師

カツゲキキトキト


初の大井での騎乗!少しでも上の結果を

-:JDDは目前に控えておりますが、どのような競馬を考えていますか。

木:具体的な乗り方などはまだわかりませんが、とりあえず気の小さいところもある馬なので、落ち着いてレースに臨ませたいですよね。あとは一つでも上の着順を取れるようにしたいです。脚質は後ろからジワジワと行くほうが合っているタイプかと思いますが。

-:大井は直線も長いですしね。大井競馬場では乗ったことはありますか。

木:いや、初めてなんですよ。でも、他のレースで一つ乗ることも決まりましたので、コースを経験できるだけでも有難いです。乗りに行くことが決まってから、やっぱり大井のレースを観るじゃないですか。直線長いなぁ、と思ったり、ここで乗るんだな、と感慨深いです。それから、同じ日に藤田菜七子騎手も大井で乗ると聞いて、とても楽しみにしています。会うのも初めてなんですよ。同じレースに乗れるのかはわかりませんが、女性騎手同士、交流を深めたいです。

-:JDDはJRAのジョッキーも武豊騎手、デムーロ騎手、戸崎騎手など、錚々たるメンバーとなりますよ。

木:そんなレースに騎乗できるだけでも感激しますね。でも、同期の笹川翼騎手と一緒にグレードに乗れるという楽しみの方が大きいかな?


「同じ日に藤田菜七子騎手も大井で乗ると聞いて、とても楽しみにしています。会うのも初めてなんですよ。同じレースに乗れるのかはわかりませんが、女性騎手同士、交流を深めたいです。同期の笹川翼騎手と一緒にグレードに乗れるという楽しみも…」


-:9日朝、追い切りに乗られた感想についてお聞かせいただけますか。

木:あいにくの土砂降りで馬場は良くなかったのですが、反応は良かったです。

-:やり残したことは無い、といった感じでしょうか。

木:そうですね。癖の確認などもできたので、そういったところは気をつけて行きたいですね。あとは本番でバッチリ乗れるように頑張ります。

-:まだまだ雨もある時季です。馬場適性はどうでしょうか?

木:不良馬場でも大丈夫だとは思います。


馬名

9日、悪天候の中、最終追い切りを行った。


-:ちょうど通り掛かった先輩の大畑騎手から、何かアドバイスはありますか?

大畑雅章騎手:ハハハ。「落ちるな」だけですね(笑)。

木:もぉー!これがネットに書かれるんですからね(笑)!

-:無事に騎乗を全うしたいところですね。レースを目前にして緊張感はありますか?

木:今のところはないですね。海外のほう()がよっぽど緊張しました。当日は大畑さんもJDDにキタノアドラーブルで大井に行くので、心強いです。

(昨年、イギリス、アブダビで行われたレディースワールドチャンピオンシップに騎乗!見事、イギリスでは勝ち星を挙げている)

-:東海ダービーの時と騎乗馬が逆になるんですね。

木:そうなんです。ファンからしたら不思議な感じでしたよね。「なんで?」て。

-:因みに木之前騎手にとってカツゲキキトキトはどのような馬ですか。

木:重賞を勝たせてくれた馬なので、感謝していますし、可愛い馬ですが、噛みに来るところは可愛くないですね(笑)。ナデナデしようとしたりすると噛み付いてくるんですよ。可愛い顔をしているのに、正直、性格は可愛くないんです……。

-:最後に木之前騎手自身のお話を伺えますか。今年の上半期を終えての回顧と、39勝と勝ち星を上げられている今年の成績はどう思いますか?

木:今でもまだ人気馬での取りこぼしもありますし、ミスをもっと減らしたら勝ち星も増えてくると思うので。あとはまだ構えて乗ってしまうところがあります……慎重になりすぎちゃうところがあるんですよね。

-:では、今年の後半戦に向けて意気込みもお願いします!

木:まずは去年の勝ち星を上回りたいですね。8日の最終レースでも3番人気のダイコウキという馬に乗ったのですが、いつも後方から行く馬が好位3番手に付けられたんです。「これは勝ったかも!」と思ったのですが、3コーナー手前くらいで急に馬が走るのをやめてしまったんです。なんでだろう……と。そういった悔しい思いを減らしていけたら、と思います。


馬名

カツゲキキトキトと大畑騎手と健闘を誓って記念撮影!