セレクトセールの新鋭KTレーシング 億の馬に懸ける野望と戦略
2016/8/10(水)
セレクトセールの新星KTレーシングを直撃!
-:セレクトセール、セレクションセールと終えられたばかりですが、昨年まではセリで目立つほどの購入をされていなかったと思いますので、2日間にわたってのご活躍は非常に驚かされました。セリの前後でもレースで所有馬が勝ち星を挙げられていたこともあり、より注目を浴びる形になったと思いますが、まず、あの高額落札にいたった経緯から教えていただけないでしょうか?
KTレーシング取締役:ええ、よろしくお願いします。どうせ馬主をやるのであれば頂点を狙える馬も欲しいと。ただ、そういう馬を何頭も買えないので、「少なくとも1頭は買おう」ということで選んだ馬がオーサムフェザーの2015(父ディープインパクト)だったということです。
-:あれだけのお金を投じられた訳ですから、相当な下準備もされたと思います。あの馬を選ぶにあたってのリサーチはどういったことをされていましたか?
KT:ダービーを勝たれたから、というわけではなく、もともと友道先生とやろうということを決めていました。その中でノーザンファームの方に見に行ったりして、一番良い背中をしている馬と思ったのがあの馬でした。血統的にも馬体的にも素晴らしいということで決まりましたね。
▲今年のセリでも2番目の高額となる2億6000万円でオーサムフェザーの2016を落札!
-:狙い通りといった結果ではありますが、予算としてもあの価格を想定していましたか?
KT:そうですね。あれくらいで落ちれば良いな、という想定ではあったのですが、こればっかりはセリなので……。思っていたようにはいかないことは多いですね。
-:例年のように言われてはいますが、「今年のセレクトセールは高い」という声を各所から耳にしましたから、なおさらですよね。セレクトセール自体、2014年から参加されていましたが、あの額で競る心境はこれまでとはまた違ったのではないでしょうか。
KT:セリで手を挙げたのは、当然ウチの代表なのですが、私も横にいました。1億5000万円を超えてからは1ビットが1000万単位ですよね。2億は行くだろうなと思って観ていて、確かウチが2億で挙げているのですよ。続いて、相手の方が2億1000万、ウチが2億2000万を挙げて……。そこでちょっと間が空いて、ここで落ちるかな、という間があるじゃないですか?ただ、主催者側もあれだけの高額馬ですから、恐らく長めに見守りますよね(笑)。「早く落ちろ、落ちろ!」と思っていたのですが、そうこうしている内に2億3000万の声が返ってきてしまって、「どうするのかな?」と思ったら、返したと。
すると、また返ってきて、それが2億5000万。僕の中ではもう行かないだろうな、と思っていたんですよ。やっぱり5000万単位は一つの節目じゃないですか。そこを超えてしまうと、3億もありうるので。2億6000万で挙げて、「オッ、行ったのか!?」と僕もビックリしましたよ。あとで代表に聞いたら「2億6000万を最後にしようと思った」とは言っていました。それで何とか。ギリギリでしたね。
「セリというのは凄く色々な駆け引きであったり、人間模様が見え隠れするというか……。言うなれば、ただ、2日座って手を挙げていただけですが、一行はみな体調が悪くなりましたね(笑)」
-:これだけの超高額落札をされる方々のお話を伺うのは滅多にないことなのですが、実際に競られている時というのは、周りのどなたが挙げているかというのは気になるものですか?
KT:いやあ、気になります。セリの会場の中で私たちが座る席の周りには、大物の方々がいらっしゃって、流石に競られたら厳しいのではないかとみていましたからね。事前にある大物の方はここには競りに来ないかもしれない、とは噂で耳にしていましたが、流石に気になりましたよね。だから、セリというのは凄く色々な駆け引きであったり、人間模様が見え隠れするというか……。言うなれば、ただ、2日座って手を挙げていただけですが、一行はみな体調が悪くなりましたね(笑)。ドッと疲れが出ちゃって。
-:普通ならば自然もあって、食事も美味しい北海道に行ったら、楽しんで帰れるような気はしますよね。毎年思いますが、異様な空間ですよね。
KT:ええ、お金の感覚が狂いそうな……非日常的な空間だと思いますね。
着々と拡大中のKTレーシング軍団
-:KTレーシング様の馬主名を耳にするのも、ここ最近のことのように感じます。馬選びにあたって、どなたが戦略を考えていらっしゃるのですか?
KT:もともと競馬業界の人間だったレーシングディレクターが別にいまして、牧場に行ったり、トレセンに行ったり、調教師の方とコンタクトを取ったりしています。例えば、先ほどのオーサムフェザーならば他の仕事のタイミングも含めれば、相当な回数はチェックしていると思いますよ。当然、馬専門にやっている方なので、現場サイドの取り仕切りは任せています。やはり競馬業界は全く接点のない人が入ろうとしても、難しいじゃないですか。その中で、ちょうど接点を持てる存在だったので、お願いをして、というのがキッカケですね。
-:レーシングディレクターさんの存在が大きいとのことですが、それ以前に馬主を始めようと思われたキッカケは何だったのでしょうか?
KT:もともとウチの代表の父が大の競馬好きで、競馬歴は50年くらいほどにもなるのです。縁があって1度、東京競馬場の来賓席に代表と父親が行ったのですが、その時に大変感動されて、馬主になれば、当然馬主席にいつでも入れる訳で、その感動を味わってもらうことが出来るということで、馬主登録をしたというのがキッカケですね。そこから代表も競馬に興味を持ち、今に至るわけです。
-:その出来事自体は最近の話ですか?
KT:ええ、そうですね。まだ馬主登録する1年前くらいでしょうから、3~4年前の話ですね。
「(馬主を)やるのであれば、ある程度は頭数を持たないと、ランニングコストも出ませんから。それに、何よりもJRAの賞金体系が非常に手厚くて、数がいた方が上手く回っていくだろう、ということで考えております」
-:そこから、一気に頭数は増えましたね。現時点のデータベース上に登録のある現役馬は12頭です。
KT:そうですね。初めは数頭買ったところから始めましたが、色々なデータを調べると、当然1頭が生涯に走る回数は決まっているじゃないですか。年間に10走も走れば順調で、骨折などしてしまえば、本当に1回も走れないケースもあります。やるのであれば、ある程度は頭数を持たないと、ランニングコストも出ませんから。それに、何よりもJRAの賞金体系が非常に手厚くて、出走手当や入着手当も8着以内に入れば奨励金が出ますから、数がいた方が上手く回っていくだろう、ということで考えております。
-:だから、事前に伺った際に「今、頭数を集めている」とおっしゃっていたわけですね。
KT:はい。そういう方向でやろうという方針を打ち出して、それをやったのが今年ということですね。
-:今年のセレクトセールの目玉はオーサムフェザーの2015だったと思いますが、それ以外の落札も平均的に高値だったので、どれも楽しみですね。その辺りは狙い通りでしたか?
KT:そうですね。それらも事前に狙っていた馬ではあるのですが、当然、全て第一希望が落とせた訳ではありません。何故なら、今年は全体的に高かったじゃないですか。予算の限度を超えてしまった馬もいるので、そこで降りている馬もいますが、半分以上は第一希望の馬を落とせたとは思います。ただ、オーサムフェザーもそうですが、他の馬も押し並べて高かったので、それは誤算ですね。
KTレーシング独占インタビュー(後半)
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▲1億円で落札したプリティカリーナの2016(父オルフェーヴル)