ステファノスG1戴冠へ 今が旬!一皮むけて善戦続きにピリオド!
2016/10/3(月)
-:天皇賞の後の予定はまだ決まっていませんか?
荻:ないですね。取りあえず天皇賞(秋)が目標です。だけど、毎日王冠も勝負すると思いますよ。そういう考えで先生も(藤原)和男助手もやっていると思うので。
-:得意のレースパフォーマンスが出来る東京になるということもあって。
荻:あとは、天侯とか馬場状態というのは、負けても読めるじゃないですか。だから、あとはケアが大事ですね。
-:ケアをされる時に一番注意するというか、一番最初に診られる所というのは?
藤:いつも初めに診る所と言ったら、やっぱり脚元ですね。
-:実際に触ってみたり?
藤:普段歩いている姿をよく覚えておいて、追い切り後にどう歩いているかとか、脚の運びを診て、あとは体を触診して、痛い所があれば電気治療なり、あとはよくマッサージとかして。
荻:あとは開業獣医さんに素晴らしい人がいるのでね。
-:一般的にファンの人たちは、もちろんケアがあったりということも知っていると思うんですが、実際の内容ってあまり馴染みはないですよね。どのくらい時間がかかって、どんな事をやっているのかとか。
荻:いや~その時の状況や状態によりますね。
藤:どんなレースをしたかにもよりますしね。
荻:そのゴール板を切った瞬間から、次のレースが始まっていますね。目標がある時は帰ってきて手元に戻ってきて次に向けてどうするかというのはそこからからですね。そこから調教師の指示が始まります。
胸前、トモの筋肉量は宝塚記念の時以上に映る素晴らしい馬体
-:厩舎に戻ってきてからどうですか?
藤:競馬を使って、(週が)明けて水曜日から乗り始めという感じですね。
荻:厩舎に戻ってきてから、馬をしっかり診るというのが大事です。念には念をというところですね。
-:その辺りはすごく慎重にやられるということですね?
荻:慎重ですね。だから、ちょっとしたことでも注意して見ています。
-:今年で5歳になりますが、まだまだ息の長い活躍が出来そうですか?
荻:これからというか、5歳というのは一番脂が乗っている時だと思いますね。
藤:今までそんなに数を使っていないし、無理もさせていないので。
「ドンドン使って良くなったり、ドンドン使って悪くなったりがあって、ドンドン使える馬だったら使うでしょうけど、ステファノスの場合はジックリですね」-:先生が慎重だとお話されましたが、数を使うというよりは少しリフレッシュさせながらレースを迎えた方が良いタイプですか?
藤:初めの成長が遅かったので、それをずっと待った結果、今ここに来て、やっぱりこの先も見えるというのがあると思うので。
荻:パターンじゃないのね。1頭1頭の馬を診ながらやっているので、そこはパターンに嵌まった訳じゃないんです。
-:ステファノスの場合はこういう成長曲線だったという事ですね。
荻:そうですね。(先を)見据えているので。
-:レース毎に成長しているという事ですね。
荻:色々言葉の使い方というのがあるので、簡単に言ったらそうですが、ドンドン使って良くなったり、ドンドン使って悪くなったりがあって、ドンドン使える馬だったら使うでしょうけど、ステファノスの場合はジックリですね。
藤:その都度状態を診て決めているので、香港に行って帰ってきてからも「札幌記念に行こうか」との話もありましたが、戻って来ても全然体も萎んだままだし、毛も長いし、精神的にもガクッと来ていて、結局ずっと延ばし延ばしで秋まで休ませたりもしましたし、やっぱりその時、その時の馬の状況を診て、判断をされているという感じですね。もちろんローテーションの流れの計画はあるんですが、実際に、その時に馬がその状態で向かえるのかというのはまた別の問題ですよね。
-:輸送はどうですか?
藤:おとなしいと言えばおとなしいですね。
荻:香港に2回も行っているからね。その辺は馬も分かっているから。飛行機も乗っている馬なので、その辺は全然大丈夫です。
藤:それでも(馬体重が)10キロぐらいは落ちたりしますね。
-:でも、特別イレ込んで減ったという訳ではないですね?
藤:そうではないですね。
荻:10キロ減ったといっても、人間の10倍体重ありますからね。私たちは1キロ痩せたりするが、馬は10キロ痩せますからね。ほとんど水分ですから。1リットル人間が飲んだら、1キロ太りますしね。あと腹の中に入っているものが、緊張したらバァーと出ちゃって、それだけで2キロ減りますからね。腸が長いから空きっ腹になるでしょ。その中に入っているものが30リットルあるんです。 10回したら20キロですからね。だから、緊張感のない馬とかだったら、それでも食べるし、水も飲む。輸送して喉が乾いたら水も飲む。普通の馬はそうですね。競走馬は1回走ってしまうと次に同じパターンで輸送された時は、追い切りがあって自分の中で準備をするんですよね。スポーツ選手は試合の前とかに緊張して飲めなかったり食べれなかったりする事があるのと一緒ですね。でも、すごい馬が中にはいて、食べるわ、走るわ、体が減らない、それは神様みたいな馬で、そんな精神力の馬はそうはいないですね。
藤:緊張しているということは、裏を返せば集中しているということですからね。
荻:だから、それをケアして、そういう部分でも側にいる人間が落ちつかせたり、体をつくってやったり、何とか食べさせてあげたりするというのは、やっぱり食べるのはエネルギーですからね。エネルギーがなかったら走らないし、それをどういう風にやるか。それはそれぞれの厩舎のやり方もあるから。これで良いというのは、やっぱり生き物だからないですね。みんな答えが欲しいと思うけど、これというのはないです。こっちもやっていて手探りだし、毎日違いますね。 だから、ダービーのような晴れ舞台は取りあえず無事にゲートに入れるというのが大事。それもその時点でピークの状態でね。馬主さんをはじめ、ファンの方やこの馬に携わる多くの方が楽しみにしてくれていますから、あのゲートが開いた瞬間が一番ホッとしますよね。
藤:春のクラシックは大半の馬が一杯一杯でやっていますからね。ギリギリの所で。
荻:胃に穴が開くぐらい、みんな気を使ってやっていると思いますよ。
「すごく良いファンに恵まれているなという思いがあります。今までずっと悔しい結果が続いてきているので、今度は強くなったステファノスを観て、みんなと一緒に喜べたらなという気持ちですね」-:やっぱり馬は周りの空気とかも感じるのですかね?
荻:感じますね。やっぱり馬は繊細ですから。何か人の動きが違うなと思ったら、馬は察しますね。毎日扱っている人が、いつもと違ってこんな時間に来ないのになとか。
-:特に状態面というか、当日に輸送があるからとか、そういう状態面の不安は一切なく?
荻:全てにおいて、一切ないことはないですが、今まで通りの感じで行けば、そこは大丈夫でしょうね。
藤:無駄なことはしないですが、何があるか分からないので、それだけは頭に置いて。
-:予期せぬ事がなければという事ですね。
荻:生き物だから何があるか分からないから。極力気をつけて。それが管理。それは藤原先生の指示通り、キチッとみんな動けているから良いのでしょうね。
-:今、すごく脂が乗ってきたステファノスについて、最後に一言ファンの皆さんにメッセージをいただけますか。
藤:本当に今までずっと惜しい競馬が続いてきたので、いつもステファノスの勝ち馬写真とかを取りに行く時に、他の馬と違って結構ファンの人の声援が暖かかったり、人一倍すごい声で「おめでとうございます」とか叫んでくれる方がいたりだとか、すごく良いファンに恵まれているなという思いがあります。今までずっと悔しい結果が続いてきているので、今度は強くなったステファノスを観て、みんなと一緒に喜べたらなという気持ちですね。僕自身歯痒い思いを一杯してきているので、ずっと観てくれているファンも同じ気持ちだと思うし、共に喜べたらと思います。
-:ありがとうございます。
プロフィール
【荻野 仁】 Hitoshi Ogino
卓越した調教技術は、専修大学時代の馬術チャンピオン(障害)という裏付け。藤原英昭厩舎の開業当初から調教助手として屋台骨を支えており、フードマンとして各担当からの意見を取り入れ全頭の飼い葉を調合している。2つ上の先輩である藤原英昭調教師とは小学生時代から面識があり、両人の絆と信頼関係は絶大。名門厩舎の躍進を語る上でこの人の名前は欠かせない。
【藤野 陽平】Yohei Fujino
大阪府泉州出身の33歳。中学2年生より乗馬を始め、現在は師匠となる藤原英昭師に紹介された北海道新冠の小国ステーブル(サクセスブロッケンを育成したことで有名)で競馬人生をスタート。2年間勤務した後、年齢的に最後のチャンスとなるJRA試験に合格。藤原英厩舎に所属して3年目を迎える。馬と接する上で気をつけていることは「馬の気持ちを一番に考えること。時には導いてあげないといけない時もありますが、人間本位にならず、基本はちょっと待って馬に考えさせてから何かすることを心掛けています」。腕利き集う名門厩舎で切磋琢磨し、充実したトレセン生活を送っている。