重賞連勝ヤングマンパワー 勢いに乗り次代のマイル王へ
2016/11/13(日)
3戦目でアーリントンCを制した後、今年6月の3勝目まで時間を要したものの、そこからは貫禄の重賞2連勝を見せたヤングマンパワー。これまでも常に人気を上回る走りを見せており、G1で主役級の位置まで辿り着いた今ならば、一気の天下取りまであって驚けない。しっかりと計算されたローテで大一番に挑む手塚貴久調教師に、4連勝で戴冠というシナリオへの意気込みを伺った。
重賞連勝のポイントとこの中間
-:マイルCS(G1)に出走するヤングマンパワー(牡4、美浦・手塚厩舎)についてお伺いします。前走の富士Sを振り返って、レース当日の仕上がりについてはいかがでしたか?
手塚貴久調教師:その前の関屋記念も良かったのですが、シッカリとした良い感じでした。間隔は開いていましたが、休み明けでも体はできていましたね。
-:この馬の好調度合いを見極めるポイントはあるのですか?
手:やっぱり馬体の体幹というか、男の子の割には結構細身なので、肉付きであるとか、そういったところは見ますね。体重の増減がずっと大きかった馬なので、その辺は注意しながらやっていたのですが、最近といいますか、この春~夏からは変動もなくなってきたし、今回もそういう感じだったので体調は良い状態と思っていました。
富士Sをヤングマンパワーで制し、重賞通算18勝目を挙げた手塚師
-:レース内容自体は、ご覧になられていかがでしたか。
手:富士Sは関屋記念とは全然ペースが違いましたし、メンバーも違いましたが、どちらにも対応ができましたね。スローペースの東京でそれなりの上がりを使えたということで、瞬発力勝負も大丈夫だとわかりましたし、レース内容は良かったですね。
-:レース後の調整過程ですが、この中間はどのような調整をしてきたのですか?
手:富士Sのダメージが本当になかったので、そのまま美浦に置いておいて、すぐに乗り出してレース翌週から時計を出し始めました。心身共に気合が乗って良い感じです。
-: 1週前追い切りは、バルザローナ騎手が乗って坂路で騎乗しましたね。
手:初めてのジョッキーなので、せっかくのG1ですし、1回乗ってもらった方が良いだろうなということで、乗ってもらいました。当週は輸送もあるし、1週前ほどは強めにできないだろうという判断でしたので、1週前に来てもらって追い切りに乗ってもらいました。こっちが思っている以上に良い動きだったし、併せていた2頭もオープン馬でしたからね。今まで調教的には、その3頭の中では1番地味だったのですが、ジョッキーが乗っているのを差し引いても、シッカリ動けていました。今まで、競馬は走るけど調教は今イチ、という場合が多かったですけど、最近は調教も楽に動けるようになってきているので、馬が楽しそうに走っていますし、レベルアップを感じますよ。
-:ここまで3連勝していますけども、去年の秋は着順だけを言えば、結果が出ていなかった時期がありました。その時期というのは、先生がご覧になって、どの辺りに課題があると感じていらっしゃったのですか。
手:春のNHKマイルC(6着)はそれなりに良い競馬でした。その後に、休み明けで関屋記念(3着)を使わせてもらって、それが思ったよりも競馬になったので、古馬相手でもマイルならやれる手応えを感じました。その後の中間、夏も厩舎に置いておいて、京成杯AH(3着)を狙ったのですが、そこで激走し過ぎてしまい、その後の富士S(12着)を惨敗してしまったのです。
去年は夏場に2回も使うとキツイところがあったので、その辺の反省も踏まえて、今年はローテーションをゆっくり取ろうという方針で考えました。京成杯AHを挟まないで富士Sへ、ということでしたが、それが良い方向に向いた感じですね。今回は中3週ですが、休み明け叩き2戦目で、ちょうど良い間隔だと思います。
1週前追い切りはバルザローナ騎手が跨って4F51.2秒の好時計をマーク(右)
初の京都コースは不安よりも期待
-:京都のマイルに向けての見通しというのはいかがですか?
手:京都のマイルが初めてというか、京都競馬場が初めてなので、走った経験がないよりはあった方が良いのかなと思いますけど、関西圏への輸送は経験がありますし、アーリントンCで結果も残しているので、そんなに心配はしていないです。元々、輸送すると体重が減る馬なので、直前に行っても、前の日に行っても減ることには変わりないですから、あまり気にしてもしょうがないですね。
京都は右回りになりますが、アーリントンCで勝っていますし、中山でもある程度の結果を残しているので、それも気にしていないですよ。時計の速い芝というのも、新潟で経験しているし、大丈夫。京都の直線は平坦なので、この子の持ち味が出せますし、初めてのコースでも合うはずです。
-:最後に、この馬の強みや意気込みを一言、お願いします。
手:富士Sも良い状態で使って勝つことができましたし、その時よりすごく良いという感じではないけど、同等か、若干でも上積みはあると思います。負かしたメンバーの中にもマイルCSで人気になりそうな馬もいますし、その馬たちを完封しているということは、この子自体も、G1に手の届く位置に来ているのではないでしょうか。あとは当日の運や、枠順など色々なところが噛み合ってくれれば、チャンスをモノにできるレベルに来ていると思いますので、頑張りたいですね。
プロフィール
【手塚 貴久】 Takahisa Teduka
89年に美浦・相川勝敏師の元で厩務員として働き始め、翌年より佐藤全弘厩舎所属の調教助手となる。98年、調教師免許を取得、翌99年に美浦で開業。当年のフェアリーSをベルグチケットで制し、1年目で重賞初制覇を挙げた。05年には全日本2歳優駿をグレイスティアラで制し、G1初制覇。11年の朝日杯FSをアルフレードが勝利すると、13年にはアユサンが関東馬として7年ぶりに桜花賞を制覇。開業14年目で悲願の初クラシックを手中に収めた。11年以降、6年連続で重賞勝利を収めつつ、毎年20勝以上の勝ち星を重ね、今年は28勝をマークしている。