いま一番買いたい若手・荻野極騎手 "週7"で馬乗り勝ち星量産
2017/6/28(水)
「僕は馬に乗っている時に自然と身に付く筋肉こそが、本当に無駄のない筋肉と思います。体の使い方や柔軟性も身に付くものだと思っているので、特段トレーニングはしていないですね」
-:この間、東京で初めて乗られた時の準備はどんなことをされましたか?
極:2勝した時(4月16日)は事前に馬場を歩きました。それこそ実際に乗ったことがない競馬場なので、コースの形やコーナーの入りであるとか、そういう角度も馬場状態も全く分からず、知識はゼロなので。だから、実際に自分で歩いて、コンディションの確認は事前にしました。あとは関東のジョッキーでも歳の近い先輩もいましたし、年代が上のトップジョッキーの方もいたので、アドバイスを求めたりもしました。皆がライバルなので、一から十まで、全部教えてくれる訳じゃないですが、聞けば教えてくれるので。
-:日頃、関西では特にこの人にアドバイスを求めるといったことはありますか?
極:教わるのは藤岡佑介さんや、川田将雅さん、福永祐一さん等です。こと乗り方については、その3人が非常に多いのかなと思いますね。
-:アドバイスの面ではその御三方であり、普段、厩舎に来てご自身での仕事以外に、トレーニングはされていますか?耳にするところによれば、最近は若手でも筋トレやトレーナーを付けたり、そういう傾向が強くなってきている気がします。
極:僕は特段これをしている、というトレーニングはしていないですね。
-:これはあくまで僕の意見ですし、競走馬に乗ったことがないので分からないですが、競馬に乗るのだったらまずは馬に乗る方が絶対に練習というか、トレーニングになるのかなと。そういう意味では、月曜に乗りにいっていると聞いて良いことなのかなと思いましたし、大ベテランならトレーニングは更なる成長を促進出来ると思いますが、ましてやまだ若手なのでね。
極:そうですね。僕もその考えは一緒ですね。人それぞれだし、やっていることを否定するわけではありません。でも、突き詰めると、それこそ馬に乗る以外の場所を使う必要がないですから。馬に乗る上で、補う筋力を付けるという意味で沢山の方がやっていると思いますが、僕は馬に乗っている時に自然と身に付く筋肉こそが、本当に無駄のない筋肉と思います。体の使い方や柔軟性も身に付くものだと思っているので、特段トレーニングはしていないですね。
▲4月23日には初めて東京競馬場でも騎乗 2勝を挙げた
-:僕は、野球なら野球でもまずは素振りをたくさんやった方が良いと思います。
極:その通りだと思いますね。その一連の動きだったり、実際にそれ以外の動きなんて必要ないですよね。なので、それこそ僕は馬に乗っている以外は、木馬によく乗りますね。
-:寮にあるものですか?
極:寮やルームにあったりしますね。とにかく木馬に乗って、姿勢を確認して、ということは必ずやっていますね。自分が思っている姿勢と人から見られた姿勢がどれだけ違うのかという差を埋めたいので。そこは意識してやっています。強いて言えば、「木馬トレーニング」くらいということです。
-:ライアン・ムーアさんみたいに、あれくらい世界のトップで筋トレをしているという人もいますが、そういう段階になればちょっと変わってくるのかもしれないですね。
極:そうですね。もしかしたら僕も自分の考え以外で、そういった考えも必要だと思うので、取り入れていく可能性も十分にあるのですが、現状ではあまりいらないかなと思っているので。
-:ご自身の性格を表すとどんなタイプですか?
極:けっこう明るい性格ですかね。どこでも末っ子とバレますし、厩舎の中でもこんな感じで、よくイジられる対象です。でも、僕もイジられるのが嫌いではないので(笑)、みんなと楽しく話している時もあるし、良い意味であんまり考え過ぎない方だと思います。ジョッキーという職業も気持ちを切り替えることが大事だと思います。ひとレースで失敗して、次のレースに持ち込まないというのはプロとして大切なことだと思いますし、そういったことは心掛けていますね。
-:若くしてどこか勝負師向きの感じがするのかなと。
極:だと良いんですけどね(笑)。あんまり、そこはどうですかね……。
-:ジョッキーになって、メンタル面が変わってしまう人もいなくはないかなと。
極:僕はまだ落馬を経験していないですから、競馬に対しての恐怖心というのがゼロです。でも、いつか大きなケガをするリスクがある職業なので、危機感を持って乗らなきゃいけないですからね。細心の注意を払って、いつも乗るようにはしていますね。
-:木馬でもフォームのチェックはされるとのこと。ご自身の騎乗スタイル、騎乗フォームはどう見ていますか?
極:今で言うと、クリストフ・ルメール、ミルコ・デムーロという外国のジョッキーが日本の免許を取って、実際に日本で競馬に乗っている状況で、ある意味、勝ち星は取られやすい時代だと思います。一方で、そうやって海外でトップだったジョッキーが国内にいてくれるというのは、本来は海外に行かないと味わえないことも、こちらで勉強になる良いお手本がいてくれるので、海外のジョッキーの乗り方というのはよく見るようにはしていますね。もちろん国内でトップの武豊さん、そういった方々の騎乗フォームはもちろん参考にもしているのですが、海外から来るジョッキーの乗り方が日本人とどう違うのか、そこは注意深く見るようにはしています。それこそ東京に来たジョアン・モレイラもすごいフォームが美しくて。
-:ベタッとしていますね。
極:そうですね。見ている印象では、馬に負担がないのかなと客観的に見ても思うので、自分もそういった評価が得られるように……。だから、ジョアン・モレイラ騎手の乗り方は意識しています。
プロフィール
【荻野 極】Kiwamu Ogino
1997年9月23日生まれ、東京都目黒区出身。清水久詞厩舎所属。中学生の頃、テレビで競馬を観戦したことをキッカケにジョッキーを志す。千葉県にある東関東ジュニアホースクラブで経験を積み、競馬学校へ。
昨年、晴れて競馬学校を卒業し、騎手デビューを果たした。2年目の今年は昨年(20勝)を既に上回る27勝(6月25日時点)をマーク。いま、最も注目の若手と言っていい成績を残している。学生時代は空手で世界大会にも出場した実力の持ち主。