春の快進撃支えたルーキー助手と秋の逆襲へ モズカッチャン
2017/10/8(日)
「カッチャン、かわいく撮ってもらいな！」。午前の作業が終わり、静まり返った栗東・鮫島一歩厩舎内での取材中、そんな声が響く。古川秀太調教助手。今年の2月にトレセンの住人となったばかり。ルーキーイヤーの今年、担当馬モズカッチャンがフローラSを勝ち、オークス２着と大活躍をしてみせた。今回はそんな『シンデレラボーイ』に、逆襲の秋に向けての手応え、そして素顔を聞いた。
－：秋華賞(G1)を予定しているモズカッチャン(牝3、栗東・鮫島厩舎)ですが、オークスは惜しかったですね。
古川秀太調教助手：僕はスタンドで観ていたので、もう勝ったと思いましたよ。オークスは今までで一番いい状態だったんです。実は中山の500万を使った時は熱発明けで、状態はあまり良くなかったので。今回はちょっと厳しいかなと思ったらそこで勝ってくれて、そこから調子が上向いて、フローラSは一発あるんじゃないかなと思っていたら、そこでも良い結果が出て。
オークスでは一旦は先頭に立つシーンもあった
－：フローラSは内を上手く立ち回って、嬉しい重賞初制覇でしたね。
古：あのフローラＳは、スタートを切った後、外側から被せられて、前をカットされたのですが、そこでも難なく折り合っていました。普通はそこでガッと行ったりするのですが、この馬は日頃角馬場とかで乗っていても、他の馬を全然気にしないんですよね。普通は抜かされたりしたら反応するのですが、そういう所はマイペースで。この馬の良さが出たと思います。
－：最後、１頭だけ伸びが違いましたね。
古：切れましたね。僕も、あのフローラSの時は本当に権利だけ取れたら良いなと考えていて。3着には来たなと思ったら、最後の50mで１頭だけ違う脚で伸びてきて勝ったのには驚きました。騎乗した和田さんが「追えば追うほど伸びる」と言っていたので、これは距離が延びるオークスでも楽しみだなと。
－：小倉で未勝利を勝った時も、追えば追うほど伸びていた感じでしたね。なかなかここまで追ってシッカリしている牝馬はいないと思います。そして迎えたオークスですが、一瞬勝ったと思いました。
古：オークスは更に状態も上がって、一番良い、ピークの状態でした。相手(ソウルスターリング)が強すぎましたね。あれで負けたのならしょうがないです。
－：そこから夏休みを挟んで迎えた前走(ローズS 7着)の状態面はいかがでしたか？
古：1カ月ちょっと前に北海道から戻して、乗り込み量もシッカリ乗って、追い切りもシッカリと坂路で8～9本やっていたので、仕上がり自体は悪くなかったんです。今まで一番状態が良かったオークスを100とすれば、今回は80ちょっとだったと思います。ただ、休み明けで、ハイペースをスタートからちょっと出していった分、最後は止まってしまいましたね。
－：これまでの戦績を見ると、テンの3ハロンが34秒台のレースは初めてでしたよね？
古：今までけっこうスローのレースばっかりだったので、ちょっと脚が溜まらなかったです。(馬場状態は)良発表だったのですが、発表以上に悪かったので、ああいう馬場も向いていなかったのかもしれないですね。稍重でも走っていますし、中山で勝った時は小雨が降っていましたが、やっぱり良馬場の方が良さそうです。
「小倉を１回使って、中山→東京→東京ですからね。そんな中、春はレースを使うごとにドンドン良くなっていきました」
－：今回、ローズＳでプラス14キロでしたが、デビュー時の体重が476キロ、これは体が戻ったということでしょうか？
古：僕は2月からの担当ですが、デビュー前はゆとりある状態で来ているので、オークスの時は絞れての468キロ、そこからのプラス14キロなので、これは成長分だと思います。
－：オークスは決して体が細いとかではなく、だいぶ絞り込まれていたんですね。デビュー3戦はあまり体重が変わっていないですが、使い減りしないタイプなのですか？
古：そうですね。こっちでも飼葉は食べますし、輸送も大丈夫なタイプです。輸送でそんなに体重が減ることもないんです。
－：あまり牝馬という感じはしないですね……。
古：そうなんですよ。春はあのローテで、よく我慢してくれたと思います。
－：3月末に中山遠征して勝って、次に4月末の東京・フローラSに遠征して、続いて5月末のオークスにも遠征して…
古：その前も小倉に行っていますからね。小倉を１回使って、中山→東京→東京ですからね。そんな中、春はレースを使うごとにドンドン良くなっていきました。
－：よく牝馬は使い込むと、体重だけでなく、精神的にも難しくなると言いますが？
古：普段燃えやすいタイプなので、パドックでジョッキーが跨ったら、けっこうイレ込んだりしますね。でもレースではまるでそういう面がないんです。
－：休み明けのローズS、テンション面はいかがでしたか？
古：今回のローズSは１週前にミルコ（デムーロ騎手)が追い切りに乗ってくれた後から、ちょっと馬もピリッとしてきたので、ちょうど良いかと思ったのですが、休み明けの分、イレ込みがキツかったです。ミルコもレース後、「次は変わってくる」と言っていたので、あとはテンションですね。どれだけ馬がレース前までに我慢してくれるかが、次、鍵になってくると思います。
－：秋何戦使うとかは、もう決まっているのですか？
古：まだ全然決まっていないですね。まずは秋華賞に全力投球です。
－：先ほど、前走のプラス14キロは成長分というお話でしたが、夏休みを経てどの部分が成長したのでしょうか？
古：まだ背中に肉が付き切っていないですが、北海道への放牧を経て、肩周りにスゴく筋肉が付いて、一回り大きくなって良い体になってきました。トモも大きくなりましたね。以前はトモが緩くスタートが遅いところがありましたが、もう心配ないと思います。夏休みから帰ってきてから、坂路の動きとかもちょっと違います。
－：そんなに違いますか？
古：前だったら、追い切りでも坂路4F54秒で最後までしっかり、一杯に追ってもラスト1Fは13秒台とかだったのですが、ローズS最終追い切りでは4F53.4－39.4－25.8－12.7秒という時計を馬なりで、スゴい手応えで上がってくるようになりました。
－：肩の筋肉などが付いて、ビルドアップしたということですね？
古：全体的に強くなっていますね。
秋華賞1週前(10/4)は坂路で4F56.3－41.0－26.0－12.7秒をマーク
－：いかにも成長力がありそうな血統ですが、今もまだ成長の余地があるという感じでしょうか？
古：まだ全然ありますよ。
－：未完成の状態でオークス２着、かなりのポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。夏を越えて大きく成長しているとのことですが、これは一叩きした本番の秋華賞が楽しみになってきますね。
古：ローズＳは叩き台としても、収穫のあるレースだったかなと。ああいうハイペースの競馬は初めてですし、自分からポジションを取りに行ったのも初めてです。ローズSもジックリ後ろで溜めていたら、後ろの馬たちと一緒に伸びてきたと思います。でも、京都内回りの本番を見据えると、やっぱりポジションを取りに行かないとダメだと思います。いい経験になったのではないでしょうか。京都の内回りも、この馬なら器用にこなしてくれると思うので、シッカリと自分の競馬ができるといいですね。休み明けのローズSを使ってガスも抜けてくるでしょうから、あとは良い感じでレースに臨めるよう調整していきたいですし、いい天気の良馬場でやれればベストです。
－：やはり内枠が希望でしょうか？
古：そうですね。内で揉まれても大丈夫なのが強みでもあるので。この馬は3回連続で白帽を被っているので、今回も内枠が引ければ……と思います。
