モズカッチャン陣営インタビュー(前編)はコチラ⇒

トレセンに入っていきなり出会った『おてんば娘』

-:古川助手はどのような経緯でトレセンに入られたのでしょうか?

古:僕は大学で馬術部に入っていたのですが、その時から競走馬に乗りたいと思っていました。それで競馬学校合格者が多く、かつ知り合いの方もいた宇治田原優駿ステーブルに入りました。1年半ぐらいいましたね。そこから競馬学校に入って、今年の2月に鮫島厩舎に入りました。

-:宇治田原優駿ステーブルに所属していた時の思い出の馬はいますか?

古:インカンテーションに乗せてもらって、それが思い出ですね。

-:やはり背中など、違うものですか?

古:フェブラリーSで2着になった頃でしたが、感動しましたね。やっぱり重賞を勝つ馬は全然違うなと思いました。フラフラなところがなかったんです。自分を持っているタイプで、乗りやすかったです。あれは良い経験をさせてもらいました。

-:そしてトレセンに入って最初の担当馬になったのがモズカッチャンだったと。モズカッチャンの第一印象はいかがでしたか?

古:第一印象はもう(笑)。頑固ですし、跨った時に暴れたり、運動の時にも変な動きをしてみせたり……最初はちょっと怖いなと思っていたのですが、キャンターで乗るととても柔らかい動きをしてくれるんです。

古川秀太調教助手とモズカッチャン

-:当時モズカッチャンはまだ未勝利ですが、素質は感じていたのですね。

古:良いなとは思っていました。そしたら、小倉の未勝利で良い勝ち方をしてくれたので、これは走るのかなと思って。

-:外を回って完勝でしたね。この未勝利勝ちがモズカッチャンにとっても、古川助手にとっても初勝利。一生の思い出に残るレースですね。

古:それはもう!嬉しかったですね。

-:今、シンデレラメイク(牝2、栗東・鮫島厩舎)も担当されているということですが、モズカッチャンで重賞を勝って、シンデレラメイクでいきなり新馬戦を勝ってと、大活躍ですね。トレセンに入ってから半年で4勝する人は、なかなかいないと思うのですが?

古:もうビックリしましたね(笑)。シンデレラメイクは、新馬戦の前にジョッキーに乗ってもらった時、「全然まだまだやな」と言われていたので。獣医さんに心臓を診てもらったら「心肺は強い」と言われていたのですが、まだ体に筋肉も付いていないし、使いつつやなと思っていました。そしたら、あんなに強い勝ち方をして。

『ツンデレ』『マイペース』…ちょっと気の強い女の子

-:ちなみに、普段はモズカッチャンのことを何と呼ばれているのですか?

古:カッチャンと呼んでいます。

-:あんまり女の子らしくない呼び方ですね(笑)。普段のカッチャンはどんな性格の女の子なのでしょう?

古:性格はツンデレです(笑)。甘えてくる時もあるのですが、何かツンツンしているというか……。頑固なところもあって、マイペースというか、自分の世界を持っているというか……。

-:難しそうな女の子ですね……。

ローズSでは結果は出なかったが、課題も見つかったモズカッチャン

古:僕が来たら顔を寄せてきたりして、普段の時には甘えてくるのでかわいいですよ。ただ本当に頑固で、自分が止まりたい時に急にバッと止まってみたり、ちょっと自分が嫌になったら尻っぱねをしてみたり…

-:落とされたりしたこともありますか?

古:落とされたことはまだないですが、トレセンに入ってカッチャンを担当した当初は本当にウルサくて、先輩達からも「危ないから気を付けろよ」と言われていて。尻っぱねはするわ、立ち上がるわで、正直早く大人になって欲しいなと思っていました(苦笑)。これは大丈夫かな……と思っていたのですが、カッチャンをやっていく内に、そういう悪いことをしてもかわいく見えてきましたね。

-:噛んだりはしてこないですか?

古:全然そういうことはないです。ただ、手入れをしている時が洗い場でえらいウルサくて。

-:ブラッシングが嫌いなのでしょうか?

古:何か気に食わないことがあるのでしょうね。洗い場では本当にウルサいです。厩舎で一番ウルサい(笑)。ずっとバンバンと前掻きをしていて。みんなに「脚を痛めるぞ」と言われています。

-:将来は成長して、こういう面が解消してくるのでしょうか?

古:どうでしょう。牝馬だと大人しくなったら、急に走らなくなるパターンもあるみたいですからね。カッチャンの負けん気の強さはいいところだと思います。でないと、フローラSのラスト50mからあんなに伸びないですよ。

「よく違う厩舎の人にも『男馬みたいな体をしているな』と言われるんです。トモが大きくて、本当に牡馬のような、いい身体だと思います。でも性格は気の強い女の子。かわいいです」


-:そういえば、お話を聞く限り、随分と飼葉食いも良いみたいですね。

古:飼葉食いは良いですね。その分、調教が出来ますから。セーブしなくて良いです。

-:残すこともあるのですか?

古:残すこともありますけど、だいたい完食しますね。ただ食べるのは遅いです(笑)。最初にガツガツいかないので、大丈夫かなと心配になるのですが、次の日の朝に来たら、食べてるわと。

-:そういうところもマイペースなんですね。

古:本当にマイペースです。自分の世界があるというか……。

-:ちなみに、カッチャンの好物は何でしょうか?

古:リンゴです!最初に食べます。色々飼葉があって、リンゴとかバナナとかニンジンとかをあげている中でも、やっぱりリンゴを最初に食べます。一番好きですね。

-:逆に嫌いなものは?

古:だいたい全部食べるのでなさそうですね。もともと前掻きして早くくれとか、そんなに飼い葉に執着心があるタイプじゃないんですよ。飼い葉を食べてる時もマイペース。馬房の中ではリラックスできていると思います。

-:このスイッチのオン、オフが武器になっているのかもしれませんね。

古:輸送中は大人しいんです。パドックに出るとスイッチが入りますね。馬ももう分かっているので。

-:賢いですね。改めて見ると、牡馬だと思うくらいガッチリした体型ですね。

古:よく違う厩舎の人にも「男馬みたいな体をしているな」と言われるんです。トモが大きくて、本当に牡馬のような、いい身体だと思います。でも性格は気の強い女の子。かわいいです。

-:変な質問になりますが、もしモズカッチャンが人間だとしたら、付き合いたいと思いますか?

古:思わないです(笑)。気が強い子はちょっと苦手なので……。

-:モズカッチャンの性格まで聞いていたら、だいぶ時間が経ってしまいました。最後にファンへのメッセージをお願いできますか?

古:乗り替わりの一件は話題になりましたが、誰が乗っても、いつも全力を出してくれる馬なので、この馬の頑張っている姿を応援して欲しいですね。

取材中、カメラを向けられると顔を逸らすモズカッチャン。その都度、何とか正面を向かせようとする古川助手。「ホント、頑固なんですよ(笑)」その笑顔からはモズカッチャンへの愛情がヒシヒシと伝わってきた。シンデレラボーイとシンデレラガールが、この秋、頂点獲りに挑む。

モズカッチャン陣営インタビュー(前編)はコチラ⇒