「まだギアを隠し持っている」全力出さず圧巻の連勝で本番へ アエロリット
2017/10/9(月)
「この馬と調教でガチンコ勝負できる馬なんていないので、(先行した馬に)追い付くか、追い付かないかは(乗っている)私が判断すれば良い話だったんですよ。追い付くかなと思いながら直線に向いたら、もう勝手に追い付いていたという感じですよね」
-:昨日(10/4)、1週前追い切りということでしたが、そちらの内容と狙い、動きの評価を教えていただけますか?
菊:3週前(追い切り)に坂路2本の稽古でも本当に楽々動いていて、2週前(追い切り)が(ウッドコースで)単走でした。昨日が、この馬と調教でガチンコ勝負できる馬なんていないので、かなり離した状態で、あとはこっちのペースで追い付くか、追い付かないかは(乗っている)私が判断すれば良い話だったんですよね。このペースで行ったらマズイかなと思って、多少真ん中あたりを走ったので、時計はけっこう速いですけど、映像を観てもらえば分かると思うけど、あの馬的にはケロッとしてというか、全然。追い付くかなと思いながら直線に向いたら、もう勝手に追い付いていたという感じですよね、ハハハ(笑)。あれっ、みたいな感じでね。
秋華賞1週前、南Wコースで馬なりのまま好時計をマークした
-:それだけ、今は馬が。
菊:そうですね。ああいう調教というのは、僕は今までしたことがなかったのでね。体、脚元への負担とか、慎重にやっていたのでね。これなら大丈夫だな、ある程度やらなきゃな、やってどうなのかなというようなイチかバチかの調教でしたよ。
-:今まではセーブしていたけど、今度はそれを超えたところまで来たということですね。今の話だと、動き自体は申し分なく、あとは反動がどうなのかな、というところですが。
菊:それがこの馬の凄いところで、全然大丈夫ですね。その分、やっとシッカリと固まってきた感じですね。午後に脚元を見ても、全然大丈夫でしたね。逆にエサの食べ方なんかでも、速いところをやった時の方がガツガツ食べるというかね。
-:中には食べられない馬もいますか。
菊:特に牝馬なんかはね。逆に、調教が軽い時の方がモソモソ食べていて、速いところをやって1~2日した方が食べが良かったりね。ビックリするというか、ちょっと牝馬ではなかなかこういうタイプは、ね。ぼんやりした馬ならまだしも、こういう馬はね。体重の変動というか、急にドッと増えたり、その辺が僕らの想像とはちょっと違う感じはしますね。
-:まだ3歳牝馬ですが、だいぶ成長を感じますか?これからこういう点が良くなってきたら良いなという点はありますか?
菊:現状でもかなり変わってきたので。
-:以前、先生がちょっとここが物足りない、ここが成長すればと思っていた点というのはありますか?
菊:一生懸命すぎるところと、一生懸命な割に遊ぶところと、何て言うか、気ままで抜け出したらへぇ~みたいな。(逆に)それがあるから距離が持つのかな、という気がするんですけどね。最初は、この馬はスプリンターになっちゃうのかと思いながらいたのですが、その辺はならないように、ならないようにはやってきたんですけどね。
-:そういう教育がだいぶ形になって、レースにも活きてきたということですね。
菊:そうですね。分かってきてくれて、本当にすごい賢い馬だと思いますよ。
-:やっぱり横山ジョッキーともそういう話をされたりしますか。
菊:そうですね。だけど、やっぱり競馬に乗って「まだ何かギアを隠し持っている」というか、そういう言い回しで言うのですが、クイーンSでもそうだし、何かそういうことを言うんですよね。確かに昨日の調教なんかに乗ってみて、さっきも話したけど、ノリさんが言うようなことは分かるなというような、ちょっと何となく分かるなというような感じですね。速くて進んでいるのだけど、何か馬がフワン、フワンとしているような、全力で走っているような感じではないんですよね。この馬の全力の走りはどんな感じかと言ったら、ブリンカーでも着けてやったら出るんだろうけどと言っていたけど、それはまだする必要はないんでね。多分それくらい何か余裕をこいているというか……。
-:それがもう一段グッと本気になる入口があるのかなと。
菊:あるのではないかなと。何か新馬の時だけギアを感じたらしいですけどね。でも、すぐにギアが入った訳じゃないのですが、チョチョロチョチョロしてグッと下がったらしいですけど、下がらせちゃったから、次の2走、3走目はとんでもなく引っ掛かっちゃったのではないかなと、ヘヘヘ。分かんないけどね。若い馬は一発気合入れてギアを入れちゃうと、走るやつはそういうのが分かっているんだよね。
「桜花賞で初めて抑える競馬をした中で、4コーナーを回ってくる時に、もしかしたらこれは着外も良いところかもしれないと思ったのですが、あの差まで来たから、何だよコイツはと思いましたよね」
-:だいぶ経験を重ねて、ちょっとずつ覚えてきているという感触を得られている訳ですね。
菊:そうですね。桜花賞で初めてああいう抑える競馬をした中で、凡走かと思ったのです。4コーナーを回ってくる時に、もしかしたらこれは着外も良いところかもしれないと思ったのですが、あの差まで伸びてきたのでね。それでも何か上の空みたいな感じであの差まで来たから、何だよコイツはと思いましたよね。
-:ちょっと掴みどころのない馬ということですね。
菊:難しいですよね。その辺は馬も理解してきていますしね。
-:そんな中での今回の秋華賞ですけど、ここに向けての見通しをお願いできますか。
菊:特に馬の状態や何かをしなきゃいけないといった、そういう気持ちはないですね。取りあえず、このまま直前にもっとやらなきゃ、なんて心配は必要ないですね。(この1週前追い切りの)反動を見て、来週どうするのか考えようかなと思ったくらいだったのですが、週明けは輸送を含めた中での調教をしようかと思っていますけどね。
-:そこまでガツッとやることは。
菊:ないと思います。併せ馬もしないと思います。
-:あとは、京都の内回りの2000ということに向けての見通しはいかがでしょうか。
菊:そこですよね。この馬が1頭で走ってくる分には良い時計で走ってくると思うのですが、今度はちょっとマークもされるし、他の先行馬もいると思いますけど、そういった中で自分のリズムで走ってもらえればね。ジョッキーはそういうリズムを崩してと言ったって、リズムを守る人だから大丈夫だと思いますけど、ハハハ(笑)。そこら辺は心配していないですけどね。
-:アエロリットは厩舎にG1をもたらしてくれた馬ですからね。
菊:本当に僕が調教師を辞めるまで、忘れられない馬になると思いますよね。
-:その馬と今度は2つ目のタイトルを狙うということで、意気込みをお願いできますか。
菊:僕やスタッフを含め私たちがビックリするくらい、この子の成長を肌で感じているので、春のNHKマイルCから一段と成長したアエロリットを見せられれば良いなと思いますので、頑張ってもらいます。
プロフィール
【菊沢 隆徳】Takanori Kikuzawa
1988年に柄崎義信厩舎所属としてJRA騎手デビューを果たす。同期は内田浩一氏、岸滋彦氏などで、初年度は13勝をあげた。1993年に天皇賞(秋)でG1初騎乗を果たし、同12月の愛知杯にて重賞初制覇を成し遂げる。現役22年のうちフェアープレー賞を5度受賞するなど、その騎乗スタイルは若手騎手の手本として評された。
2011年に調教師として厩舎開業を果たすと、初年度にオープンガーデンで阪神スプリングジャンプを制し重賞初制覇。この春はアエロリットがNHKマイルCを勝ってG1初制覇。美浦の新進気鋭として充実のシーズンを送っている。