王者キタサンブラックが、最後の秋に輝きを取り戻す。大阪杯、天皇賞(春)とG1を連勝して臨んだ宝塚記念はまさかの9着。海外遠征を断念し、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念の国内3戦をもって今年いっぱいでの引退が決まった。宝塚記念の結果をどう受け止め、仕切り直しの秋初戦に臨むのか。キタサンブラックを歴史に残る名馬に育てた清水久詞調教師に聞いた。

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－：天皇賞・秋(G1)から始動するキタサンブラック(牡5、栗東・清水久厩舎)ですが、前走(宝塚記念9着)を振り返っていかがでしたか？

清水久詞調教師：ああいう結果なので残念ですが、競馬は色々とありますね。改めて感じさせられました。

－：装鞍、パドック、返し馬と経てレースへ向かうわけですが、今日は危ないな、というムードはどこら辺から感じましたか？

清：直線に向いて、アレっという感じでしたね……。悔しいですが。

－：馬場も、前年度の宝塚記念は十分に重かったと思いますし、ひとえに重い馬場が敗因とは考えづらいところです。条件としてあそこまで崩れるとは、僕らもファンも想定外だった競馬でした。いま振り返られると、どのようなところに敗因がありましたか？

清：色々と考えられますが、確定は出来ないですよね。デキが良かったつもりで送り出したので、明確には判別し難いですね。

－：状態面という点で言うと、天皇賞(春)を使った馬が、その後にけっこう崩れたり、休養が長引いている印象です。

清：そうですね。3200をあの時計なので。見えない疲れというか、疲れが残っていたのか……。

－：もしかしたら自分でブレーキを掛ける部分もあったのかもしれませんね。

清：賢い馬なので、おかしくなる前に自分で止めちゃっていることも考えられますしね。

－：レース直後の様子、戻ってきてからの上がりの様子はいかがですか？

清：いや、そんなに心配することはなくて、いつもの上がりで、おかげ様で体も脚元も痛めずに戻ってきました。そこから夏休みを入れて、精神的にもリフレッシュして立ち上げて、思い通りの夏休みを過ごせたと思います。

「“競馬は生きている”という表現をする方もいるように、何が起こるか分からないのが競馬ですよね。改めて感じさせられました」

－：それだけに余計に敗因というか、感じ取るのを求め辛いものがありますね。

清：結果は結果として受け止めて、もう考えないようにしています。何が原因なのか、考えても分からないので、仕切り直しですね。

－：どうしても我々は、一つ一つのレースの敗因を求めたがってしまうのですが、それだけ難しいものでもある訳ですよね。

清：“競馬は生きている”という表現をする方もいるように、何が起こるか分からないのが競馬ですよね。改めて感じさせられました。

－：夏の様子は逐一チェックされていたのですか？

清：そうですね。無事に馬もノンビリ過ごせていたと思います。

－：僕が春に伺った際は「まだまだ成長する余地があるんじゃないか」とおっしゃっていたと記憶をしているのですが、この中間の調教のテーマとしていかがですか？

清：まず、やることは同じことをやるだけなのでね。あまり違うことをやると、お利口さんな馬なので、変に力んだり、気持ちが乗り過ぎてもダメですから。同じようにやってあげた方が馬も競馬が近づいてきたことが分かるでしょう。とにかくこのままでは終われませんし、宝塚記念でガッカリさせたファンも多いと思うので、やっぱりもう1回強いな、という姿を見せないと。僕も気が済まないですからね。そこは気持ちを入れ替えています。

－：春は追い切りや調教の内容というのは、例えば、春は追い切りが3本であるというのが話題になったと思いますが、それよりはもう今の状態で完成という感じですか？

清：そうですね。ほぼほぼ完成度は最終的な域には入っていると思うので、そんなに鍛え上げるというよりは、緩んだ体を戻してあげるというかね。

－：今朝(10/25)の最終追い切りはいかがでしたか？

清：申し分なく、今日はそんなにやることもないので、先週の時点でほぼほぼ競馬の状態には。

－：今週は台風が接近して、雨予報という話もありますが、馬場の心配はないですか？

清：馬場に関してはないですけどね。競馬開催だけは心配ですよね。中止になると、僕だけじゃなくてどの陣営もその日に合わせて仕上げている訳なので。ズレ込むとまた調整を考えないといけないので。天皇賞(秋)というビッグレースですし、良い天気の下でやりたいですけどね。

－：やっぱり余計に1泊するということは大変なことですか？

清：それぞれ性格もありますし、タイプもありますので。輸送の良し悪しもあるので、滞在期間が短い方が良い馬もいるでしょうし、余計に運動だけで1日延びちゃうと、体重がガラッと変わってくる馬もいるでしょう。やっぱりその辺は、日曜日に開催できるのが一番理想ですよね。

▲26日の最終追い切りはCWコースで6F83.7－68.1－53.6－39.5－12.7秒をマーク

－：古い話ですが、2013年も土曜日に台風が来て、やれるかやれないかと、やきもきさせられた記憶があります……。

清：……やりましたね。良馬場まで回復しましたね。(道悪が得意な2番人気のトウケイヘイローで)ヨシヨシと思っていたのですが、良馬場まで回復しちゃったのでね(苦笑)。今回も、台風は気になりますけど。

－：この中間の、厩務員さん、普段乗っている黒岩ジョッキーの評価はいかがですか？

清：黒岩ジョッキーの評価は「問題なしで、O.Kです。大丈夫です。良い状態です」ということですね。

－：馬房での雰囲気も変わりないですか？

清：何ら心配のない、いつも通りの雰囲気です。

－：馬房の位置というのは、あえて大仲の隣、真ん中に置いている、そういう意図はあるのですか？

清：ないですよ。デビューからですから、たまたまです(笑)。

－：この後3戦あると思いますが、意気込みを聞かせていただけますか？

清：繰り返しになりますが、春は残念な結果に終わって、ファンの方にも迷惑を掛けてしまいました。そこは巻き返して、やっぱり強いな、という姿を見せないといけないと思っています。まずは天皇賞(秋)ですよね。良い結果を出したいと思っています。

－：先生も残りのシーズン、あと3カ月の付き合いになると思いますが？

清：そうですね。もう3カ月もないですね。もちろん寂しくなりますね。やっぱり同じ送り出すなら、惜しまれながら最高の成績で送り出してあげたいので。

－：種牡馬になったら、どういう姿を思い浮かべますか？

清：もちろん子供で親子G1制覇は将来の夢ですし、まずは無事に送り返さないとね。

－：脚元の不安は全然ないですか？

清：全然ないですね。決められた競馬を欠席したことがないほどですからね。

－：休まないというのはすごいですね。

清：すごいですね。成績だけじゃなくて、丈夫な馬です。

－：無事是名馬という言葉がありますが、それを最後まで貫ければということですね。

清：そうですね。あと3つ使うだけじゃなくて、良い状態で送り出して、成績にもこだわっていきたいと思います。

－：また、ジャパンカップ前によろしくお願いいたします。ありがとうございました。