キタサンブラック陣営インタビュー(前編)はコチラ⇒

格別だった菊花賞のG1初制覇

-:個人的に気になったのは、天皇賞(秋)は特殊な馬場で行われましたが、あのレースの疲れはいかがでしたか?

辻:普通の競馬と同じように、やっぱり疲れはありましたね。でも、脚元なんかも楽だったですし、多少は力のいる滑るような馬場だったので、筋肉疲労に気をつけて、あとは気持ちを落ち着けることでしたね。いつもレースの後は2~3日興奮して、落ち着かないこともありますしね。レース後はいつもの疲れかなというぐらいで、大して苦労しませんでした。

-:馬によって差がありますね。「特に、いつもと一緒だ」と言われることもけっこう多かったです。

辻:人の表現の仕方によっても違いますよね。これくらいは疲れじゃないわ、という人もいるだろうし。

-:すごく気になったので、色々な陣営に聞いたんですけど、逆に、あまり疲れたという声は聞かなかったですけどね。

辻:却ってそうかも分からないですね。ああいう状況で、集中力をいかに力を出せたか、ということも重要だったかもしれません。

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-:そういう意味では、天皇賞(春)の方が?

辻:(速い時計の方が)やっぱり脚元にきますね。衝撃がやっぱりあるのでしょうか。

-:天皇賞(春)をレコードで走って、秋を「裏レコード」で走るというのは、おそらく二度とないでしょうからね。

辻:なかなかね。ユタカさんも「あんな馬場で走ったのは初めてや」と言っていましたし、多分ないでしょうからね。そういう意味で話題も豊富な馬ですね。マスコミさんが上手く盛り上げてくれるからね。そうやって作ってくれるのか分からないですけどね。

-:今の時点で記憶に残るレース、個人的に思い入れのあるレースというのはありますか?

辻:嬉しかったのは菊花賞ですね。初G1でしたし、(母父サクラバクシンオーということで)距離の話も色々言われましたからね。陣営としては、みんな厩舎の人間も「(距離は)大丈夫だ、大丈夫だ」と言ってくれて、自信はそれなりに、勝てる馬の中の1頭だという形ではいたのですけど、最高の結果を出してくれたので、嬉しかったですね。

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-:しかも、最近の競馬とは違って、差す競馬でした。

辻:そうですね。本当に乗り手に従順で、今でもああいう競馬も出来ると思うんですけどね。今やっている前々の競馬が良いのだと感じますけど、(そういう競馬も)出来ると思うんですけどね。

-:ロスなくという意味では、そっちの方がロスはないでしょうからね。その分、ジャパンCでも目標にされるというか?

辻:宿命ですね。

-:今週は、天気的にもほぼ雨は降らないはずですけど、つくられている側からすると、結局、馬場はどんな状態がベストでしたか?

辻:当日の天気は、僕らも雨に濡れたくないですから、晴れてくれるに越したことはないです。フットワークの綺麗な馬ですけど、パワーもありますし、この前、ユタカさんからも「体幹の強い馬だから、多少、脚元が滑ろうが、力のいる馬場であろうが乗り切ってくれる」という話もありましたからね。

-:天皇賞(秋)が終わった後の共同会見を聞いていたんですけど「特異的な体の強さがあるから、返し馬の時点でこなせると思った」とおっしゃっていたので。

辻:それがあったので、(コース取りとして)内を選んだと思うんですよね。

-:普通に出て先行していたら、どうなっていたのかなと。

辻:フフフ、その辺は分からないですよね。

-:あの時はもちろんゲートまで?

辻:ゲートまで行っていました。

-:隣の馬がけっこう煩かったらしくて、ブラックもそれに釣られて、両方で遅れたと聞きました。

辻:トレセンで練習に行っても大人しいですけど、やっぱり競馬に行くと、タイミングもありますからね。ゲートの中では変なことはしないですが、ゲートが開くタイミングが今か、今かという感じで待っているので。

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▲辻田厩務員が思い出のレースに挙げる菊花賞 馬群を縫うように差し切りを決めた

-:何かステップを踏むような感じですか?

辻:僕はそんな感じには思わなかったですけどね。バタバタするような感じではないので。

-:ちなみに、馬運車での様子は普段どうですか?

辻:落ち着いたものですけどね。ただ、最初の新馬戦は2頭積む予定だったのですが、ウチの厩舎から高橋義忠厩舎さんのところに行くまでにちょっと寂しがっていましたね。パニックまではいっていないですけど、ワーワーと寂しがっていたので、そこからは必ず2頭で積むようにはしていますけどね。それは最初だけで、今だったら1頭でも大丈夫かもしれないですけど、今回も2頭で、ヨソの馬運車の配車が変わっても、ちょっと探すよう手配はしています。隣に馬がいれば、全然落ち着いたもんですね。

-:中山も慣れたものですか。けっこうな長距離輸送になりますので、厩務員さんも慣れていると感じますけど、なかなかあれだけ車で長時間移動していると、簡単なことではないと思うので。

辻:そうですね。行きはまだ馬も元気があるから良いものですが、帰りの競馬を使った後は、疲れている中でかわいそうだなと感じますよね。

-:しかも、負けた時に帰っていくのはちょっと寂しいですから、スタッフの方も疲れますよね。

辻:確かに気持ち的にもね。

最後は悔いなく「最高のブラックが見たい」

-:辻田さんとして、有馬記念に対する思いを教えていただけますか?

辻:ブラック自体が最後の競馬なので、馬が悔いなく走ってくれたら。まあ、馬が悔いを残すかどうか分からないですが、最後は最高のブラックが観たいですね。

-:負ける時のキタサンブラックの雰囲気は、ストレスが溜まっていたり、そんなことはありますか?

辻:変わらないですけどね。宝塚記念(9着)も負けてしまいましたが、その時は(北島)オーナーもおっしゃっていましたように「馬が走っていない。気持ちで負けちゃったのかな。気分的に乗らなかったのかな」と。あんまり疲れもなかったですしね。

-:その敗因は、馬のみぞ知ると。

辻:そうですね。(敗因は)分からないですね。

-:放牧から帰ってきてからの雰囲気も、いつもと変わりなかったと。

辻:そうですね。今回も、牧場からは気持ちも体もリセットされて、こっちの調教に馴染んでいけるような形で戻ってきてくれるので、それは毎回ですね。

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-:辻田さんの仕事はまだまだ続きますが、ブラックの現役生活はこれが最後です。まとめの一言をいただけますか?

辻:本当に強いブラックを最後に見せて欲しいですし、それ以上に無事に、ですね。色々な可能性を持った馬なので、良い状態で可能性に挑戦できるような形で帰ってくきてもらえれば、それが願いというか、気持ちですね。

-:次の可能性もある訳ですからね。どのような産駒になるとイメージされますか?

辻:そうですね。本当に次の仕事があるのでね。僕のイメージはやっぱり賢さですよね。(普段は)大人しくて、競馬に行ったら、レースに集中してくれて、闘争心のあるような仔が扱いやすいというか。やっている本人とか、厩務員さんしか分からないところかもしれないですけど、ブラックに関してはそういうイメージがあるので。

-:まずは、大一番ですね。

辻:そうですね。結果が付いてきてくれれば。

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