母ビリーヴの一族でも短距離馬の感触なし デビュー3連勝で2歳中距離王へ ジャンダルム
2017/12/24(日)
ジャンダルムが、無傷の3連勝でホープフルS初代王者の称号をつかむ。前走のデイリー杯2歳Sは向正面で故障した馬と接触寸前の場面もありながら、直線で力強く抜けだして重賞勝ち。母がスプリントG1を2勝したビリーヴ、兄姉も短距離で活躍した一族で距離の不安を指摘する声も多いが、武豊騎手も「タイプが違う」と話すように陣営は心配していない。兼武弘調教助手は「世代トップの力がある」と手応え十分の馬への手応えを語った。
-:ホープフルSに出走予定のジャンダルム(牡2、栗東・池江寿厩舎)についてお聞きします。まず、とてもきれいなフォームで走る馬だなと感じましたが、ご覧になっていかがですか?
兼武弘調教助手:走る馬は当然きれいなフォームになりますよね。ただ、まだ乗っていて緩さは感じますよ。まだまだ良くなる余地がいくつもある馬だと思います。
-:緩さというのは、どの部分にあるのでしょうか?
兼:全体的にですね。デビュー前に乗った時から腰がまだまだ緩いなと感じました。フラつく感じですよね。
-:新馬戦の4コーナーで外に逃げるような仕草を見せて、騎乗した武豊騎手もそれについて言及されていましたね。まだ気性面も若いということなのでしょうか?
兼:ひと言でいうと若さなのでしょう。調教ではそんなことはなかったのですが、実戦で少しフワっとなってしまいましたね。
-:普段の様子から若さを感じる場面は多いのでしょうか。
兼:若さは感じますね。ただ物覚えがいい子なので。こちらの要求にはしっかり応えてくれます。
-:兄姉は馬っ気が強かったり、難しい馬が多い印象があります。
兼:現段階ではそういう兆候はありませんね。ユタカさんも新馬で乗った後「兄姉とはタイプが違うね」とおっしゃっていました。
-:初めて乗った時の印象についてはいかがでしたか?
兼:本当に緩かったです。入厩当初から乗っていましたが、フラフラと不安定な感じでした。まだ若かったですね。それでも追い切り始めたら素軽く、時計も出ていて、これはひょっとするぞと思いながら新馬戦を迎えました。新馬戦はまだ1本調教が足りないかなと思ってもいたところで、あの勝ちっぷり。これは強いなと思いました。
-:乗っていて背中が柔らかいタイプなのでしょうか。
兼:いや、乗っていてそこまで柔らかいタイプではないですね。乗り味はもちろんいいです。乗った当初は緩くてフラフラしていましたが、今は、現段階で言えばだいぶ芯が入った感じです。
-:お母さんは短距離G1を勝ったビリーヴですが、普段の調教から距離を持たせるよう意識して乗られているのでしょうか。
兼:カーっとさせて行かせたくはないので、そういうところは意識していますが、物覚えがいいので、ハミの抜き方などはすぐ覚えてくれます。追い切りで併せた相手を追いかけても気負うことなくやることができます。頭がいいんですよね。
-:仕上げやすいということでしょう。
兼:飼い葉食いもいいですし、身体の減りをそんなに考えなくてもいいので、強い負荷も掛けられます。仕上げやすいですね。
-:2戦目のデイリー杯2歳Sでは、向正面で故障した馬の影響で危ないシーンもありましたが、見事な勝利でした。2歳馬のデビュー2戦目であのくらいの不利を受けたら、ひるみそうな気がします。
兼:ひるむところではありますね。ただ最後は直線でも内を突いて鋭く伸びましたし、馬混みを気にしないところはありますね。普段の調教ではまだ若いので急に来られるとビックリするところはありますが、ここが実戦とは違うところかもしれませんね。デイリー杯2歳Sにしても、完全に(2着だった)カツジの勝つレースでしたから。進路決めてからビュンと伸びてきて、抜け出してくる脚を持っているなと驚きました。
-:新馬戦もデイリー杯2歳Sも、レースを使った後の反動はありましたか?
兼:特にはなかったですね。身体もその後増えましたし、さらに身体が大きくなっています。
-:デイリー杯が終わってすぐ乗り出せたということでしょうか?
兼:いつもと一緒、普段通りに乗り出しました。元気も良かったですよ。
-:ホープフルSはこれまでの2戦と違って、2000mの一周コースとなります。お母さんがビリーヴということで、ファンが一番気にしているのは距離が大丈夫かという点だと思います。これに関してはいかがでしょうか?
兼:皆さんも距離を気にしていらっしゃると思いますが、競馬でもコントロールしやすい馬です。折り合いに関してもまだ2戦しかしていませんし、コーナーが4つになって変わってくるかもしれませんが、見る限りは大丈夫そうかな。
-:あと心配なのは輸送面かと思いますが?
兼:初めての関東への輸送になりますが、現段階では余裕を持ったつくりです。こればかりは初めてなので、馬がどういう状態になるか読めないところはありますけどね。
-:一週前追い切りはCWで素晴らしい動きを披露していましたね。前走のデイリー杯より、さらに良くなってきているのでしょうか?
兼:良くなってきていますね。この短期間で体つきがボリュームアップしたというか、全体的に大きく見せるようになりました。
-:まだまだ成長していきそうなのでしょうか?
兼:まだまだ成長していきそうです。パンとすればもっといいんだろうなと。
-:兄のファリダットは若いころ2000m以上を使っていましたが、後にマイル以下を使うようになりました。弟のジャンダルムも、普段乗っている感触から、将来的にはマイル以下が主戦場になってきそうですか?
兼:まだ何とも言えないところですね。今言えるのは目の前のホープフルSの2000mを克服していければと思います。競馬場でもおとなしく、優等生です。
-:内を器用に捌けますし中山は合いそうな雰囲気があります。
兼:そうですね。競馬センスがありますからね。中山コースでも対応はできるはずです。ただトリッキーなところもあるコースなので、一筋縄にはいかない可能性はありますけどね。初戦は変なところで手前を変えていましたが、慣れていけば変わるでしょう。
-:デイリー杯2歳Sは勝ち時計が少し遅いですが、時計に対応できるタイプなのでしょうか?
兼:まだ2戦しかしていませんし、そこまで気にはしていません。レースの流れもあると思います。
-:今のところ、乗っている感じからは母がビリーヴという感じはあまりしないのでしょうか?
兼:そうですね、ビリーヴ自体テレビで見ていただけなので分からないですが(笑)、この馬は短距離バリバリという感触はないですね。力を抜いた走りもできます。現段階でも相当能力があると思っています。今年の2歳世代でもトップクラスの力があるのではないかなと。どう成長していくのか楽しみな馬です。
-:ホープフルSへの意気込みとファンへのメッセージをお願いします。
兼:2歳馬ですし、まだ現段階で色々な課題はありますが、それを上回る期待感がこの馬にはあります。素質は一級品だと思います。この馬は父キトゥンズジョイや母ビリーヴの名前を更に高められると思いますので、頑張ってほしいです。
プロフィール
【兼武 弘】 Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗りを経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。