3年連続同じローテで鬼門突破へ 銀メダル返上へレッツゴードンキ
2018/5/6(日)
-:勝利に手は届いていませんが、フェブラリーSでも上位に来て、高松宮記念でも上位に来る。牡馬でもそんな馬はなかなかいないですよね。
寺:そうですね。次がヴィクトリアマイルなのですが、毎年引っ掛かっているレースなんですよね。課題はそこですよ。「1400の京王杯スプリングCに行く」という話もあったのですが、やっぱり牝馬のG1で今まで戦ってきた男馬を思えばメンバーも落ちるじゃないですか。それで「もう1回G1に行こう」ということになったのですが、1200であの競馬をした後の1600ですから、そこがどうなりますかね……。
-:ある程度、短い距離も使っていますし、致し方ないところもありますかね。
寺:仕方ないですよ。あとは工夫して乗ってもらうしかないですね。
-:今更、追い切りでゆっくり下ろしたからレースがしやすくなるという次元ではないですか?
寺:そういうのはないでしょうね。ただ、前の高松宮記念時に(中間)49秒台という時計を出して臨んだのですが、今回はそこまでやらなくて良いと思うんですよ。2回使っているので、テンションだって上がるはずですから、ソフトに行けるように、という感じですね。あとは枠次第で色々考えるでしょうね。
▲5月2日(水)の追い切りでは52.2-37.6-25.0-12.8秒をマークしている
-:牝馬のレースなので周りにうるさい馬がいることもありえます。そういう影響はないですか。
寺:そういうのはないですね。G1に出てくるような馬のうるささというのはそんなに影響されないでしょう。
-:それより自分のリズムが、ということですね。
寺:そうそう。
-:去年のスプリンターズSの際にも立ち話をさせていただきましたが、デキは決してよくなかったですよね。
寺:体調が悪かったというか、それこそ夏場、ヴィクトリアマイルの疲れがなかなか抜けなかったですね。本当は北海道に放牧に出して、そこからキーンランドCで1回使ってスプリンターズSにいくつもりが、良くなかったんですよね。疲れが残って態勢が整っていなかったんですよね。追い切りも3本くらいで、無理やりやって、間に合うのかなと。
-:直前は時計が出ていましたよね。ああいうところを見ると、気で走ってしまう馬なのだなと。
寺:坂路で普通にやれば、それなりに時計は出るんですよね。獣医さんや装蹄師さんなど色々な人と相談をして「やっぱり体つきや筋肉の付き方も6~7割くらいやな」と。あの時はよく走ったなと。あの時は2番で枠も良くて。
「芯の強さといいますか、それは人の手によるものではなくて、持って生まれた親から譲り受けたものでしょうね」
-:スプリンターズSで引き上げてきた際、先生もボソッと「あと(追い切り)一本やったな」といっていたことを覚えています。先ほど香港のお話を伺いましたが、万が一、もう一度行っても、やっぱりそうなりそうですか?
寺:慣れは見込めるかもしれないですよね。今年も12月にあるでしょ?
-:ということは、そこまで現役を続ける可能性もあると。
寺:続けると思います。どこまで本気か分からないですけど、オーナーは「走らせたい」と言っていたので。
-:同じオーナーのストレイトガールも息の長い活躍でしたよね。
寺:厳しくなったら止めないといけないですけど、あくまで僕の予想ですが、年内はレースをすると思います。ひょっとしたら香港に行って。
-:6歳になっても一線級でやれているわけですからね。
寺:そうですね。同級生はみんな引退してしまったのでね。まだ走っている馬もいますが、ルージュバックやミッキークイーンは繁殖に上げないといけないというのもあったでしょうから。
-:ルージュバックは体質の弱さがあったり、ミッキークイーンだったら脚元をケガしたりとあると思うのですが、この馬に関してはこれといったケガはないんですよね。
寺:ないですね。
-:何か特別なケアをされているのでしょうか?
寺:それは持って生まれたものですから、特別なケアはないです。芯の強さといいますか、それは人の手によるものではなくて、持って生まれた親から譲り受けたものでしょうね。
-:フェブラリーSやJBCでも走るように条件を問わないですよね。道悪でも走りますし。ダートと芝で使う時のつくり方を変えたりはされるのですか?
寺:全然そういうのはないです。こっちで使うのと(関東への)輸送があるかで、そこが問題ですよ。去年の11月に大井のJBC(スプリント)に使いに行くつもりが、急遽1週前に京都(スワンS)になったんですよ。あの時は大幅プラス体重で出てしまいましたね。やっぱり輸送で10キロ以上減るので、そこを考えてやっているのですが。
-:栗東で何度も話を伺っていると、関東に持っていくと、平均して10キロくらいは少なくとも減っているのかなと。
寺:やっぱり減りますね。関東だったら、今は6~7時間立ちっぱなしで揺れますから。馬運車の中でずっと揺れているんですよ。人間で例えれば、お腹に巻くようなダイエットの機械があるじゃないですか?それをずっとやっているような。その間は食事もあまり出来ないですし、水も飲まないだろうし、そのダイエット効果ですね。
-:そういう時というのは、事前に食べさせたり、歩かせたりするわけですね。
寺:そうですね。今はお腹もフックラしているのですが、これも府中に持って行ったらキュッと巻き上がりますよ。それに5月の半ばだったら暑いでしょ?向こうに着いてからもそんなにご飯を食べないんですよね。人間で言ったら、丸1日断食をする状態になるので。
-:計量前のボクサーみたいな。
寺:そうですね。
-:しかし、普段は大人しいですね。
寺:ええ、大人しいですよ。
-:レース当日の朝も基本的には変わらないですか。
寺:変わらないですね。ただ、ちょっとソワソワしたり、ここにいる時とはちょっと違いますよ。それが、そのまま滞在になったら、北海道みたいに滞在して2~3日経ったら、レースじゃないんだなと思って、また落ち着いてくるので。
-:この馬のこういった落ち着きは昔からあったものですか?
寺:そうですね。それこそまた持って生まれた性格というのがあるので。
-:他の馬と比べて秀でているところは先ほど言っていた芯の強さでしょうか?
寺:一番秀でているところは、回復力や、芯の強さみたいなものがあるところですね。ちょっとした傷でも他の馬だったら1週間掛かるようなところが、傷がかさぶたになって皮膚がくっ付いてという過程が早いんですよね。
-:外野はレースを使うのが当たり前みたいに思いますけど、なかなか順調に行かないことがありますからね。
寺:順調に行かないですね。使えずに引退する馬もいっぱいいますしね。僕もそういうのが何回もありましたよ。レースの直前におかしくなって、競馬が出来なくなったり、すごく具合が良かったのに、その週に何か調子が悪くなって惨敗するなんてことはしょっちゅうありましたから、なかなか順調にはいかないですね。だから、ドンキはやりやすいですよ。長年付き合っているから、何をするか、どういう風にするかを分かっているので。ただ、ケガがないように気を付けていますけどね。それはドンキに限らず、どの馬でもそうですが。
-:ヴィクトリアマイルでは枠については大きな差はありませんか?
寺:外過ぎるのもよくないし、真ん中の偶数あたりが良いんじゃないですか。
-:それと心強い点でいえば、戦歴からも馬場は問わないですよね。去年のヴィクトリアマイルは、ちょっと内を空けて走るような変な馬場でしたけど、逆に雨が降った方がいいかもしれませんね。
寺:問わないです。雨が降っても大丈夫です。
-:ちょっと重複する部分はあるかもしれませんが、レースに向けて意気込みをお願いします。
寺:僕らは、レースまで無事に行くようにするだけです。しっかり馬をつくること。レースに耐えられる、ちゃんと走れる体をつくって、ケガなくレース当日を迎えるだけです。色々な試練はありますが、平常心でいること。あまりピリピリすると良くないので。
-:寺田さんにとっても、やっぱり思い入れは深いですよね?
寺:そうですね。厩務員の仕事をしていて、G1を勝たせてもらうことはまずないのでね。トレセンに入る前はダービー勝って、桜花賞勝って、と思うのですが、入ったら思い知るんですよ(笑)。絶対にそんなことはない、勝てるのは本当に一握りの人ですからね。別世界のものだと思い知るんですけど。それを叶えてくれた馬ですから。
プロフィール
【寺田 義明】Yoshiaki Terada
1972年2月3日生まれ。元プロレスラーである天龍源一郎さんの誕生日(2月2日)とは一日違い。京都府出身。現在はなくなってしまった動物の専門学校を卒業してから、牧場勤務を経て、競馬学校の厩務員課程に。当初は競馬に興味がなかったものの、専門学校在学中に興味を持ちだして、この道に入ることを決意した。トレセンでの厩舎歴は2件のみ。当初勤務した厩舎はかの名門・伊藤雄二厩舎。エアセレソン(新潟大賞典勝ち)などを担当したが、名伯楽から幾多のノウハウを教わった。仕事上で心がけていることは「馬がリラックスしていられるように務めること。常に馬の気持ちを考えながら」と語る。
栗東トレーニングセンターきってのプロレス通として知られ、日々の業務だけでなく、昨年の香港遠征でもプロレスグッズをまとっていったほど。もし、レッツゴードンキを新日本プロレスの選手に例えるなら、という質問には「オカダカズチカじゃないですかね。爽やかで、早いうちからスターじゃないですか」と評してくれた。