アスターペガサス 飼い葉食いもレースセンスも抜群! 小崎騎手と初タイトルを
2018/7/18(水)
仕上がりの早さと抜群のセンスを兼ね備えるアスターペガサスが、世代初のタイトルに名乗りを上げた。6月24日の新馬戦では2番手から抜け出して快勝。栗東での坂路追い1本で素質の高さを感じた陣営が急きょ函館でのデビューを決めたほど動きが良く、期待通りの勝ちっぷりを見せた。担当の木野隆志調教助手は、鞍上の小崎綾也とともに初重賞制覇のチャンス。アスターペガサスの長所と手応えを聞いた。
-:函館2歳ステークス(G3)へ挑むアスターペガサス(牡2、栗東・中竹厩舎)についてよろしくお願いします!まず、厩舎に入ってきた過程から教えていただけますか?
木野隆志調教助手:(厩舎に)入ってきたのが5月の頭くらいです。2~3週間でゲートに受かって、正味1本しかやらなくてこちら(函館)に来たのですが、その1本目が坂路でけっこう動いたんですよね。それで急遽こちらで使おうかということになって、連れて来たんですけどね。
こちらに連れて来てからも順調で、追い切りを2本やって、それで競馬でも良い線まで行くんじゃないかと思っていたのですが、勝つか負けるかはその時の運もありますからね。ちゃんと勝ってくれたし、何よりでした。競馬が終わってからもちょっと疲れが出たけど、1週間くらい楽をさせたら、疲れも解消されて、そこからは順調な調教過程を踏んでいます。
▲自身にとっても担当馬での重賞初制覇が懸かる木野隆志調教助手
今日も(7/12)も追い切りでしっかり動いてくれたので、あと1週無事に行ってくれたら良いなと。牧場(大山ヒルズ)では「ゲートの出がもう一つ」と言われていたのですが、案外すんなり行けたので。輸送も何の問題もなかったですし、ここまでは至極順調ですね。
-:牧場は厩舎と縁の深いところかと思いますが、アメリカのセリでの購入というところも厩舎らしいといいますか。
木:そうですね。良い馬ですよ。素材で言えば、期待が高まるところです。
-:2歳のこの時季ということを考えると体の大きな馬ですね。
木:入ってきた時は小さく見えて、440~50キロくらいかなと思っていたのですが、牧場からの報告書には490キロと書いてあり、そんなにないやろうと思っていたら、体重を量ったら、あるんですよね。だから、身が詰まっているんですよね。乗った感じでも490キロある感じではないのですが、詰まっているから、それだけあるのでしょうね。でも、今の段階でそこまで攻めていないから、パドック中継の解説者の方からしたら、ちょっとフックラしているようには見えるかもしれないですね。
-:比較的、首は高めの走り方ですね。
木:首は高いですね。あんまりグッとハミを下に噛むタイプではなく、それはハッキングしていてもそうですし、速いところをやっても、ちょっと高めですもんね。
-:現時点で大きくカテゴライズすると、一定のスピードを長く使うような感じですか?
木:まだちょっとわからないですけど、末脚勝負の馬という感じではないですね。前に行って粘るような。
-:馬体が詰まっている点以外に、乗っていてセールスポイントで感じられるとしたら、どういったところでしょうか?
木:1回走った感じでは、とりあえずレースセンスが良かったですね。正直、スタートは決して良い方ではないと思うんですよ。
-:そこはやっぱり危うさもあるということですね。
木:そうですね。でも、二の脚が速く、ある程度の位置には付けられるので、そこは強みだと思うんですよね。函館の小回りの1200mに合うような、前に付けて最後しっかり前を捕らえるという競馬が前回は出来たので、本当に優等生な競馬センスでしたね。あとはどれだけキレ味があるかは分からないですけど、洋芝には合っているんじゃないでしょうか。
-:(祖父が)ストームキャットで、(母系には)フォーティナイナーも入っていて、スピードがありそうな血統ですよね。
木:そうですね。お母さん(R Heat Lightning)も向こうで活躍した馬らしいので。まだ後ろが全然緩いんですよ。それで頑張って走ってくれているので、ここからもっともっとパワーアップしてきてくれたら良いなと思いますね。
-:1回使っての精神面はどうですか。悪い方に向いたりしていないですか?
木:それは全然ないですね。むしろ良くなっていると思います。見た目で言ったら、毛艶が全然違いますし、筋肉の張りも全然変わってきているので、良くなっています。精神面で言っても、新馬の時からこちらに来てずっと落ち着いているので、特に変わりはないですけど、良い意味で平行線。元々、落ち着いていたので、それ以上落ち着かれても困るので。やっぱりある程度はピリッとしておいてもらわないと困るので。
-:1200mですしね。
木:はい。行く時はグッと行ってもらわないと困るので、ちょうど良い感じの精神状態だと思います。カイバもバクバク食べるので、仕上げる分にはやりやすいですし、ウチの厩舎(の2歳)では一番食いしん坊ですね。「くれ、くれ!」と催促がすごくて。あの馬は全然食べている方なので、もっとあげても良いとは思いますけど、函館なので、そこまで調教は強くですから、ほどほどにしていますね。本当だったらもっとあげたい気持ちもあるのですが、そこは体を見つつですね。
-:調教量というのは、函館の環境では足りている感じですか。
木:そうですね。こちらが思った通りのメニューを順調にこなせているので、量としては大丈夫ですね。坂路がないので、もう下でやるしかないですからね。ウチは坂路が多いから、トレセンにいる時との比較というところでは理想どおりとは言い切れませんが、こちらが思っている通りのことは出来ているので、大丈夫だと思います。
▲調教でも小崎騎手が騎乗
-:前回乗った(小崎綾也)ジョッキーの評価はいかがでしたか。
木:ハミの受け方が追い切りの時から課題はあったので、競馬に行ってどうかなと思ったけど、そこはクリア出来ていたみたいです。今週追い切った時も「改善されている」と言っていたので、良い方向には向かってきているのかなとは思います。
「トモも少しずつですけど筋肉が付いて、力を付けてきているんじゃないですか」ということは言っていましたね。初めて乗った時から「後ろがまだまだですね」みたいな感じだったので「それでもこれだけ走れているのだから、すごいですね」とは言っていましたね。彼も重賞を獲ったことがないので、頑張ってもらいたいですね。気合が入っていると思いますよ。
-:先生から調教に関して具体的な指示はあるのですか。
木:いや、細かくはないです。今週の時計を見て、けっこう出ているので、馬場にもよりますけど、来週も同じくらいの時計で良いのかなとは思いますけどね。併せるか、併せないかはその時次第ですけどね。
-:函館の環境は、こじんまりした中でやるじゃないですか。周りの馬がいての反応はどうですか。
木:他馬がいるからどうこうはないですね。ウチは元々、縦列で歩いていて、前と後ろに馬がいる状態で常にずっと歩いているので、特に問題はないですね。だから、角馬場も混んでいる時間よりもちょっとずらしているので、函館だからということはないですね。
落ち着いた表情をのぞかせるアスターペガサス
-:前回のレースも内枠で、外からも他馬も来ていましたけど、特に問題なさそうでしたもんね。
木:大丈夫だと思います。
-:今回はチャンスのある一戦と思います。レースに向けての意気込みをお願いします。
木:馬さんは頑張ってくれると思いますし、僕は平常心で頑張ります。人間が浮かれ過ぎてもしょうがないのでね。浮かれたら、ロクなことがないので、いつも通りに、いつもの仕事を普通にやるだけですね。
-:距離適性など、今後はどういう馬になっていきそうですか。
木:マイルくらいまでは行けると思います。1200mだけの馬じゃないと思うので、個人的には今後はマイルに行ってほしいです。マイル戦線で頑張ってくれたら良いなと思いますね。
-:馬場が悪くなっても大丈夫そうですか。
木:そこら辺はわからないです。トビは決して大きくないですし、爪もしっかりしていますけど。
-:今回はチャンスですね。
木:そうですね。頑張ってもらいます。
-:今回は変にイレ込んでいるとかじゃなく、自然体ですか。
木:そうですね。元々、そういう性格なんで(笑)。
-:ありがとうございました!
プロフィール
【木野 隆志】Ryuji Kino
1982年2月生まれ、滋賀県出身。学生時代は早くから馬の職業に就きたいという思いはあったものの、栗東トレセン近郊に住んでいながら、トレセンの場所を知らなかったほど。トレセンの前を通るたび「ここは何なんやろうと、ずっと不思議に思っていたんですよ」と振り返る。
高校卒業後、栗東の乗馬苑、八日市のアカデミーを経て競馬学校の厩務員課程に。トレセン歴は中竹厩舎ひと筋で、もう13~14年になるほど。過去の担当馬の代表例は、ダート重賞で活躍したネイキッド。思い出の馬は最初の担当馬ブラッドバローズ。当時は現役の競走馬の能力比較がつかなかったが、あとになって素質の高さを感じたそう。「もったいなかったし、もうちょっと経験があったらなと今でも思う」と懐かしむ。学生時代から野球好きで今でも草野球で外野手を務める。高校野球の春の滋賀県大会ベスト4の実績を持つイケメン調教助手。