ホールドユアハンド 芝もOK!エスポワールシチー産駒 父譲りのダッシュ力で勝つ
2018/7/19(木)
ホールドユアハンドが、抜群のスピードを武器に芝の重賞タイトルを取りに行く。ダートG1馬エスポワールシチー産駒で、デビューは福島ダート1150m戦。父譲りのダッシュ力で逃げ切り、芝の函館2歳S参戦を決めた。今年開業した田中博康厩舎にとっては初の重賞出走で初制覇のチャンス。担当の大口晋平調教助手に、芝での手応えと意気込みを聞いた。
-:函館2歳ステークス(G3)のホールドユアハンド(牡2、美浦・田中博厩舎)について、よろしくお願いします。
大口晋平調教助手:よろしくお願いします。
-:今回こちら(函館)に持って来てということで、新馬前は跨がったりはされていましたか?
大:最初、5月頃に美浦に入厩した時に、僕がずっとやっていたんですよね。ゲート、追い切り1本目までやって、それで函館に来たので、あとは向こうのスタッフにやってもらった感じですね。
当初は粗削りな感じな印象でした。けっこう前向きな気性で、スピードがありそうな感じがしていたのですが、コントロールの面でちょっと難しさもありました。2歳なので、新馬は大体行った、行ったの競馬で決まってしまうものなのですが、先々を考えると、このまま…ではという感じがあったので、馬のハミ受けや口元のバランスを整えました。
▲函館に滞在し調教などをすべて任されている大口助手
最初は重点的にやって、ゲートもすんなり受かって、追い切りには津村(明秀騎手)が乗ったのですが、感触は良かったですね。元々、福島の(ダート)1150mを使いたかったのですが、早い時期から入れ過ぎちゃったので、中間ちょっと緩めて、やっぱりちょっとカリカリする馬なので、体も少し細くなったりもしていたので、ちょっとフックラさせる意味でも、1週間くらい楽をさせてあげましたね。
そこから、僕がこちらに来て、また向こう(美浦)のスタッフで強めの調教を課して。東京のダート1400mは除外も出ると思ったので、上手いこと権利が取れれば良いなと思ったら、権利が取れたので。それで、福島の権利が取れた時点で「この馬、持っているな」という感じがしたんですよね。そうしたら、上手いこと新馬も勝てたと。
-:先ほど話していただいた最中に「バランスが…」ということでした。詳しく教えていただけないでしょうか?
大:僕は、やっぱりバランスが一番重要だと思っているんですよ。だいたい、馬は前に崩れているか、後ろに崩れているかなのですが、あの馬の場合はけっこう気がカリカリして、前に前に行っちゃうんですよね。それを、バランスを起こしてあげて、もう少しリラックスして走れるように。そして、いざクッと仕掛ける時にグッと行けるような、そういうつくりを心掛けていますね。
-:そういった課題、意識されていたポイントは、新馬の前と今では変化もありますか?
大:こちらで乗って、環境も新しくなったので、最初は周りをきょろきょろ見て、けっこうカリカリしていていたのでまだまだな部分はあります。それは美浦に来た時もそうでしたし、周りの環境にも慣れさせて、上手く行けば良いかなと思っているんですけどね。最終追い切りは木曜日に追い切る予定です。
-:まだ環境に慣れる段階ではありますね。
大:そうですね。まだ2歳なので、周りの環境に慣れさせるというのが一番ですかね。馬自体は動ける馬なので、あとはバランスですよね。そこが一番だと思っているので。
-:父はエスポワールシチーということで、血統的な課題に挙げる方が増えるかなと思います。
大:僕も正直なところダートだと思っています。ですが、洋芝でけっこう馬場も特殊なので。それで、スピードもあるし、この間の勝ちっ振りもなかなか良かったので、もしかしたら面白いんじゃないかなと思っているんですけどね。
-:去年も他所の厩舎ですけど、ダートで勝って函館2歳Sに登録した馬はいましたね。この時期ならではともいえそうです。
大:そうですね。2歳だったら、いい意味で正直わからないと思います。もう少し上手くハミが抜けて、気持ちも大人になってくれば、(距離を)延ばしても悪くないかなと思っているので。短距離馬というタイプでもないですしね。
-:新馬戦の勝ち時計としては、マズマズだと思いますし、スピードはあるのかなと。
大:ありますね。自分で逃げて、あのスピードですからね。
-:逃げて、上がりが最速でしたからね。それだったら、後続はどうしようもないですからね。
大:そうですね。芝なので、逃げられるかどうか分からないですけど、気性的にも逃げる必要もないと思うんですけどね。
-:行かないとどうしようもないという性格ではないということですか。
大:おそらくそうですね。ただ、やっぱりダートと芝じゃ、ダートで折り合えても、芝になっちゃうと噛み過ぎて引っ掛かっちゃう馬がけっこういるんですよね。なので、そのクチにならなければ良いなと思っているのですが、性格的に…。
-:そこは、今回を含めて徐々に経験を積んでということですね。
大:そうですよね。経験とやっぱり普段の積み重ねですかね。
-:今のカリカリした性格は馬のいらつきなのか、例えば、走りたい気持ちが強すぎるのか、どういう感じなのでしょうか。
大:両方あると思いますよね。コースに出ちゃうと、すごく燃えちゃう馬がいるんですよね。ここで追い切りをやっているから、追い切りだと思ってガッと行って、カリカリしちゃう馬もいますし、あの馬は基本からガッという感じですね。向こうでもけっこう良い具合に行きっ振りが良かったので。
-:馬の話題からはそれますが、(田中博康)厩舎は開業して間もないと思うので、ある程度、こういう調教スタイルだという点を教えていただきたいのですが。
大:ウチの先生は海外を目標にしているのですが、騎手時代にも関西にけっこう長いこといましたし、調教でも関西の厩舎のメニューを取り入れています。基本、先生はバランスを重視して、調教を長めに取って、とやっています。僕も元々、違う厩舎にいたのですが、バランスを重視していたので、けっこう意見が合うので。競馬は基本、馬の能力ありきでもありますけど、バランスが一番だと思うので。
-:と言うことは、あまり時計は求めないということですか。
大:追い切りでは求めないですね。あとは、こちらではこのウッドコースだと、1コーナーが急で狭いので一概に言えませんし、美浦でもそんなに時計は出していないです。もし、物足りないなと思ったら、ゴール板を過ぎてから、最後気合いを付けるので。ウチは基本がけっこう強めの調教なので、そんなに時計へのこだわりはないですね。
-:ベースとして負荷を掛けていると。
大:そうですね。普段からある程度負荷を掛けていって。
-:僕は美浦に行かないのですが、先生は今でも乗られたりしているのですか。
▲ホールドユアハンドの新馬戦口取り撮影 左から2人目が田中博康師
大:先生はバリバリ乗っていますよ。先生も自分で乗りたい方なので。
-:先生は海外経験も豊富だと耳にします。海外的な影響を受けている調教はありますか?
大:躾ですかね。やっぱり向こうは、本当に動じない馬が多いと思いますけど、そういう馬の集中をこちらに引き付けると言いますか、普段の厩から全て。そういうところはけっこう海外の要素を取り入れたりしていますよね。しかし、先生も色々な国に長くいて、やっぱり勉強になることが多いですよね。
-:馬の集まり方はどうですか。
大:先生は幅広いオーナーに預けていただいて、けっこうなラインナップだと思いますね。やっぱり関西にずっといたので、それこそ関西の先生や色々な大手のオーナーの馬も転厩していただいて、そこで結果を残して、次に繋げたら良いかなと思っているのですが、オーナーを見れば、走っている良いオーナーが多いと思いますね。
-:厩舎的に、けっこうエサにはこだわりはありますか?
大:ウチの先生は最初から色々とやっていますけど、食べる馬だったら良いのですが、それでも食べない馬が中にはいるんですよ。これを混ぜると食べないなど、そういう馬はちょっと工夫してとりあえず食べさせることを第一に考えて、やっていますけどね。何を入れても食べるのが理想ですけど、良いものはあげているので、あげることに越したことはないと思うので。ホールドユアハンドに関しては、特に好き嫌いがなく普通ですけどね。
-:もちろんまだたくさん成長しなくちゃいけない部分はあると思いますけど、この馬の、現段階で課題とするところはありますか。
大:そうですね。気性かなぁ…。ちょっとカリカリするようなところもありますから、一番重視したいのは気性ですね。
-:馬具などは今のところ、普通のものですか。
大:この馬はノーマルです。特にこれと言って、特別なものは着けていないですね。
-:まだ新馬勝ったばっかりですからね。
大:やっぱり最初から馬具は着けたくないというのはあるんですよね。よほど酷くない限りは…。
-:最終追い切りはどなたが乗られるのですか。
大:追い切り自体はクリストフ(ルメール騎手)に乗ってもらう予定です。一応、僕は違う馬の誘導で併せ馬をするのですが、ホールドは、先生が角馬場で乗って、クリストフに乗り替わって、ウッドで併せ馬の予定だと思います。多分、時計自体はそんなに出さないと思います。ジョッキーの感触を掴んでもらう程度の追い切りだと思います。
-:前回は460キロ台でしたけど、若干減りそうですか。
大:昨日着いた時点で460キロだったので、そこまで減っていなかったですね。それで、カイバ食いも、着いた時点ではバリバリ食っていたので、そんなに大きく減ったということはないですね。
-:元々の食欲はいかがでしょうか。
大:悪くないです、しっかり食べてくれるので。ただ、ああいう性格の馬は身にならない部分もあるので、そこなんですよね。
-:そういう場合は食べてどこにいっちゃうんでしょうかね。
大:普通にボロで出ちゃうんじゃないですか。栄養が吸収されずに、というのがあると思いますね。ボロの状態によっても、やっぱり緩い馬や下痢の馬は、どうしても身にならないんですよ。だから、やっぱり良いボロをしている馬は、それなりに栄養も吸収して身になりますよね。
-:大体はトレセンにいると、ストレスというか、精神的な負荷が大きいと聞きますよね。
大:やっぱり馬にしたら溜まりますよね。
-:けっこうな割合だということを聞きますよね。この馬に関しては、今のところ、心配はないということですね。
大:そうですね。今は大丈夫かなと思います。それ用の薬もあるんですけどね。出来ればどの馬も薬を使わずに、良い状態に持っていきたいですけどね。
-:ちょっと重複しちゃいますが、「ダートかな」という話でしたけど、将来的にはどういった距離や条件の馬になりそうですか?
大:距離も使っていってカリカリしなければ、出来れば延ばしたいなと。そうしたら、やっぱりレースの幅が広がるので。短距離に絞られちゃうと、やっぱり幅が狭くなってしまうので、出来ればもうちょっと延ばせれば。
-:しかし、今回は人気になっちゃうジョッキーですからね。
大:そこはちょっと…(苦笑)。もし仮に逃げるとしたら、目標にされやすいので。あんまり人気はいらないので、1着だけが欲しいなぁ、ハハハ。競馬はやっぱり人気しちゃうと、どうしても人間も硬くなっちゃいますからね。
-:枠的には外目の方が良さそうですか。
大:どうですかねぇ。この間はスタートが速かったので。ゲートの時はスタートはそんなに。まだ来たばっかりですぐゲートを受かったので、トモの感じもまだ全然ユルユルで、ゲートの出自体はそこまで速い馬じゃなかったんですよ。ただ、二の脚が速くて、スムーズに受かったんですけどね。競馬を使う時に関しては、けっこうそれなりに仕上がっていたせいか、ポンと最初の出も良かったので、プラス二の脚も速くて。だから、ああいう形で勝ったんですけどね。
-:そんなに出遅れることはなさそうですかね。
大:ないと思いますけどね。ウチは常にゲートの練習に行くようなスタイルでやっているので、よほど何かない限りはないかなと思うのですが、タイミングさえ合えば、普通に出てくれるかなと思います。
-:レースに向けて、意気込みをお願いできますか。
大:馬のベストコンディションで出させてあげたいなというのが一番ですかね。
-:厩舎にとっても、初めて(重賞に)出す訳ですからね。
大:そうですね。何とか良いところまで行けたら良いなと思っています。
-:今回はお忙しいところありがとうございました。
プロフィール
【大口 晋平】Shinpei Ooguchi
1984年3月7日生まれ、北海道江別市出身。中学校時代から札幌競馬場の乗馬苑に通っており、高校を卒業してから、栃木の那須トレーニングファームに勤務。障害の調教を主に取り組む。21歳で競馬学校の厩務員課程に合格し、22歳でトレセンへ。
今年2月をもって引退した尾形充弘厩舎の解散と共に、田中博康厩舎へ移籍。活躍が期待される田中博師のもと、厩舎の躍進を誓う。「先生も良い馬を集めてきてくれているので、僕たちもそれに応えて、結果を残せたらなと思います」と意気込む。