いま最も勢いのある若手ジョッキーといえば、デビュー2年目の川又賢治騎手だ。夏の小倉で人気薄を次々と勝利に導くと、2場開催となった9月の阪神開幕週でもいきなり土日で計4勝を挙げる活躍を見せた。トップレベルの騎手たちと戦う勝負の秋へ向け、20歳のホープを独占取材。騎手を志した意外なきっかけ、知られざる素顔や躍進の秘けつを聞いた。

人気薄でもバンバン持ってくる!2年目の川又賢治騎手が初登場!

-:今年の夏、大活躍だった川又賢治騎手に伺います。よろしくお願いします。人気薄での好走など夏の小倉は非常に目立った印象でしたが、ご自身ではどう評価されますか。

川又賢治騎手:よろしくお願いします。自分ではそんなに上手く行っている感じは決してありません。しっかり勝たせないといけないレースも負けちてしまっていますし、幾つかは勝たせてもらっていますけど、それだから良いという訳じゃないので。チャンスのある馬に沢山乗せてもらっていますし、もっと着順を上げられたと反省するレースも一杯あるので納得はいっていません。

-:それでも、(8月4日、3歳未勝利)のプリズマティコ(11番人気1着)など人気薄で勝たれていたので、ファンにもインパクトが大きい夏だったと思います。

川:プリズマティコは返し馬で元気なところがあって、力を出しきれないところはありましたが、もともと力がある馬だとはレース前から乗って思いましたね。スムーズな競馬ができましたし、小倉の1200も合っていたと思うので、タイミング良く乗せてもらったえたことに尽きますね。

川又賢治騎手

-:自分の腕ではないですか。

川:いえいえ、本当に馬なりで番手を取ってもらって、そのまま押し切る形だったので、馬が強かったと思いますね。

-:(7月29日、3歳未勝利)のローズベリルも長期休養明けを思えば、予想より人気はしていましたが、勝利に導きましたね。

川:あの馬は追い切りにも乗せてもらって、いい感触を確認していました。高野先生(調教師)もいい手応えを持っていたほどで、勝てる力はあったのでしょうね。勝てたのは良かったのですが、それも馬の力ですから。最後はけっこう追い比べになって、馬の力をふり絞らせて、ちゃんと力が出し切れたとは思いましたけど。

-:最後はかなり上がりがかかっていましたね。自分を分析してもらうと、ああいう追い比べは好きな方ですか?

川:負けたくないので、最後までしっかり追うことは当然ですし、今はガムシャラに追うことは心がけています。それに、自分自身、負けん気は強い方だと思います。この前(8月12日、西部日刊スポーツ杯)も落馬をしましたが、控えればよかったところ、控えたら競馬が終わっちゃうなと思い、そこであえて控えなかったから、前の馬に脚を引っ掛けてしまいました。後ろの馬にも迷惑を掛けますし、引っ掛けた馬、乗っていた馬にも、もしかしたらケガをさせてしまいますし、自分だけで競馬をするわけではないので、反省すべきことなのですが、それくらい負けたくないという気持ちはありますね。

-:でも、しゃべり方はオットリしていて、穏やかですね。

川:何としゃべって良いか、考えながらなので…。決して普段はこうではありません(笑)。

川又賢治騎手

川又賢治騎手

-:これから沢山の馬と出会うと思いますが、今のところ思い入れのある馬はいますか?

川:思い入れのある馬はマテラスカイですよね。500万で勝たせてもらって、ダートの短いところだと、トップレベルの馬になりましたしね。

-:この秋も大きな舞台を狙えそうなパフォーマンスをみせています。当時から、あれ程の活躍は想像出来ましたか。

川:実際のところ、当初はそこまで感じませんでした。それが今年の年始に調教で乗ったところ、急に成長し始めたといいますか、ドンドン成長していってくれましたね。

-:父はアメリカのスパイツタウンですし、あの血統で段々と後になって活躍するのも珍しいですよね。

川:森厩舎はけっこう後になって活躍する馬や成長していく馬が多いかもしれません。

-:森厩舎はネロヨシオも活躍していますね。

川:ネロも不調だった時はありましたけど、やっぱり調教を耐え抜いている馬なので、自分で調子を取り戻して、今でもちゃんと走ってくれていますしね。ヨシオも沢山のレースを使われてもこたえることなく、今じゃ北海道から小倉まで、どんなところでも競馬をしていますね。あの馬は本当にタフですね。どんな馬よりもタフですよ。

川又賢治騎手

▲川又騎手自身が納得のレースに挙げたミーティアトレイル

-:今年は騎手になって2年目。現時点で納得のいった騎乗を教えてもらえますか?

川:納得いった騎乗というと、やっぱり勝てたレースは上手くいったケースが多いので、その感覚は忘れないようにしようと思っていますね。どんな形であっても、勝ちは勝ちというか、勝ったレースでも、進路を取りに行って他の馬を邪魔したりすることもあるので、それは反省しないといけないと思いますけど、スムーズなレースで勝てた時はやっぱり納得できましたね。最近で言ったら、(7月28日、3歳未勝利)のミーティアトレイルですね。人気薄(13番人気)でしたが、馬群の中で脚を溜めて、直線まで我慢してスムーズに抜け出すレースだったのですが、あれは上手くいった感触はありますね。

-:まだ人気薄の馬に乗ることも多いと思います。自分の中でのレース前の手応えは結果と一致しますか?

川:返し馬で馬の調子やどんなタイプなのかは測りますね。特にテン乗りだったりする時は特にそこは確かめますが、ミーティアトレイルの場合は返し馬の段階でチャンスがあるなと思ったので、自信を持って乗れましたけどね。やっぱり返し馬は大事だと思います。

-:ファンとしてはその時の感覚が知りたいところですね。

川:でも、見た目だけで難しいかもしれませんね。やっぱり騎手の感覚があると思いますので。

今は生活の中心が競馬 騎手として結果を出すことに集中

-:先程のローズベリルも「調教に乗っていた」という話があったのですが、普段はどういった厩舎をメインに乗られていますか。

川:競馬で乗る厩舎の馬に乗ることが多いですね。フリーになってからは、色々な厩舎に乗せてもらっています。それが、フリーになったメリットだと思っているので、限定していることはないですけど、寺島良先生には沢山乗せてもらっています。

川又賢治騎手

▲調教に騎乗する川又騎手 赤い飾りは森厩舎の厩舎カラーをイメージ

-:競馬の日以外の毎日の過ごし方はどうされているのですか?

川:朝、調教をして、昼は一旦昼寝をして、午後は厩舎回りですね。その後はトレーニングをしたり、体のケアをしてもらったり、夜はご飯に行って、だいたい1日が終わりますね。トレーニングは僕の場合、いくつかやる項目をトレーナーから指示してもらっているので、そんなに多種多様ではないです。今は足りない筋肉の箇所だけ重点的にやっているところです。

-:足りない部分というのは数値的なものをみて判断しているのですか?

川:いや、数値的なものというよりは、体を触ってもらって、ここが硬くなっているとか診てもらうこともあります。またはレースを観て、自分の理想の乗り方をしていくために、どこの筋肉をどうやって付けていくとかを、トレーナーと相談してやっていますね。デビューした頃からずっとやっています。

-:やっぱりそれだけ長いことやっていると、変化を感じる部分はありますか。

川:そうですね。そんなにすぐ変わるものではないですけど、段々変わってきているというのは実感していますね。

「結果が全て。やっぱり騎手なので、すべて競馬で回っているなんだなとは感じますよね」


-:いまのところ真面目な印象が伝わってきます(笑)。普段の息抜きはないですか?

川:いや、疲れはあるので、体のケアをしてもらったりすることはありますけどね。でも、やっぱり悩みは一杯ありますね。それはあまり良くないので、考え過ぎないようにしているのですが…。

-:悩みの解決法といったらどんなことでしょう。

川:結果を残すことですよね(笑)。勝てたら、次の週に向かう時も気持ちが違いますから、結局、結果が全て。やっぱり騎手なので、すべて競馬で回っているなんだなとは感じますよね。

-:やっぱり2着じゃ納得いかないですよね。

川:2着は納得いかないですね。

-:でも、今のところ具体的に趣味が特別にあるということはないですか。

川:はい。全くないです。騎手同士で食事にいくことはありますが、特にないですねえ。やっぱり競馬が中心で。

騎手を志したキッカケ、秋や将来の目標とは?
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