この秋、台風の目になるかもしれない馬がいる。ウインテンダネス。父カンパニー、そして母父マジックマイルズと地味な血統ながら、春の緑風Sで好時計勝ちすると、その勢いのまま目黒記念でもその後宝塚記念で3着になるノーブルマーズなどの実力馬を抑えて快勝した。春に急成長を見せた新星が、この秋、更に成長した姿を見せる。

今春、一気のG2制覇!レースにも幅が出たウインテンダネス

-:京都大賞典(G2)に挑むウインテンダネス(牡5、栗東・杉山厩舎)についてよろしくお願いします。前走の目黒記念で重賞ウイナーの仲間入りを果たして、休み明けの一戦を迎えることになります。今年は非常に暑い夏でしたが、夏の過ごし方はいかがでしたか?

杉山晴紀調教師:よろしくお願いします。毎年のことなのですが、夏は北海道のコスモビューファームさんで休養するのがルーティンになっていますので、今年も同様に放牧に出ていました。夏負けの状態で帰ってこないか心配でしたが。そんなこともなく、元気で帰ってきたのが何よりでしたね。

-:今の体重を教えていただけますか。

杉:馬体重は510キロですね。

杉山晴紀調教師

▲目黒記念を制し、JRA重賞初勝利を挙げた杉山晴紀調教師

-:ここから1週間くらい調教をして、どれくらい変化がありそうですか。

杉:間が空いている分、馬体重を絞るというよりも、走れる筋肉を付けていくことが課題になってきますので、馬体重というよりもしっかり筋肉を付けて、ということを念頭にやっています。

-:今週の追い切りの動きはいかがでしたか?

杉:先週は3頭併せで負荷を掛けて、今週はCWコースを単走で追い切りました。時計の掛かる中でも、この馬なりに時計的にもしっかり走れていたので、順調に来ているんじゃないかなと思います。

-:どちらかと言うと、この馬は使って成績が出ているタイプだと思いますが、その点はいかがでしょうか?

杉:条件馬時代は次に良くなれば、ということも考えつつ造っていたのですが、オープンになると、そういっていられませんからね。初戦からしっかり動けるように、いつもより早く帰厩させて、ジックリと乗り込んできたつもりです。

杉山晴紀調教師

▲9月26日、菱田騎手が騎乗して1週前追い切りを行った

-:脚質についても教えてください。これまでのレースを観ていると、けっこうバリエーションに富んでいて、最初の頃はあまりテンで行けなかったのが、段々と先行力が付いてきた感じありますね。京都だったらどれくらいのポジションでの競馬のイメージを持たれていますか?

杉:前走、前々走と内田博幸騎手がああやってしっかり前に出して、結果を出していますからね。スタートからある程度出していって、中団より前あたりでしっかり流れには乗りたいとは考えていますね。

-:馬場状態に関しては、ここ最近は台風が接近したり、急に大雨が降ったりすることもあるのですが、オープンクラスで重や稍重になった時はどうでしょうか?

杉:あくまでイメージですが、トビも大きいので、大きなプラスにはならないのかな、とは正直思っています。しかし、条件戦の時は新潟でもけっこうな重馬場でもしっかり勝ち切っていますし、大幅なマイナスではないにしても、前走、前々走のパフォーマンスを見れば、良馬場で走らせたい気持ちの方が強いですね。

-:「大トビ」ということで、乗っていてどんな感じのタイプですか。

杉:やはり芝馬というか、バネの効いたフットワークの軽い走りですよね。

「器用さはないと思っていたのですが、それも内田騎手のああいう乗り方で、あんな立ち回りができました。脚質に幅が出てきたのが強みですね」


-:血統的にはカンパニー産駒ということで、異色というか、はっきりしたデータも少ないですね。

杉:そうですね。カンパニー産駒らしい傾向は未知数ですが、晩成なところは影響しているかもしれません。トニービンの血統なので、左回りでより強いパフォーマンスを見せているというのも、もしかしたらあるのかもしれないですね。

-:祖母のブライトサンデーも活躍した馬でしたね。体型的に500キロを超える大型馬ですが、器用さという面ではどうですか。

杉:器用さはないと思っていたのですが、それも内田騎手のああいう乗り方で、あんな立ち回りができました。脚質に幅が出てきたのが強みですね。

-:他の馬に乗る乗り役さんからしたら、ウインテンダネスがどういう競馬をするかというのがちょっと読み辛いということは、強みかもしれないですね。

杉:今回は休み明けということで、実戦に行って行き脚がつくかどうか…。もしかしたら多少なりとも影響があるのかなという気がしますけど、それでもやっぱり後ろからの競馬はあまり望ましくはないですけどね。

9戦ぶりの右回り G1馬との対戦に手応えは?

-:この先のレースのことを考えても、ある程度目途がつくポジションで、次に繋がる形が理想的ですね。京都大賞典の後のローテーションというのは、クラブ側もしくは先生の青写真というのはありますか。

杉:予定では京都大賞典からアルゼンチン共和国杯、最終的にはジャパンCというのが秋の大きな目標に、とはオーナーサイドと話はしていますけどね。

-:そういう意味では、大事な意味を持った京都大賞典になりそうですね。

杉:そうですね。当然、今まで戦ってきた馬のレベルから上がる訳ですし、休み明けということを考えても、決して今までと同じようにはいかないと思いますけど、その中でも次に繋がる競馬が出来れば良いかなと思います。

-:久し振りの右回りですね。

杉:ええ、左回りに固執してきた感は否めないのですけど…。

-:しかし、栗東では調教で左回り、右回りを日によって乗られていると思います。

杉:追い切りは主に右回りですからね。よって特段調教に関しては右回りが下手ということは全くないんですけどね。それに条件戦とは言え、右回りでも勝っていますし、対応はしてくれるんじゃないかとは思っています。

杉山晴紀調教師

-:手前の変換がどちらの回りでは多いなどということではないのですか。

杉:そうですね。見る限りはあまり大きく左右差はないとは思うんですけどね。

-:左が得意、右が得意などそういうことでもないのですね。

杉:結果論からしたら、左回りであのパフォーマンスなので、もしかしたら左回りの方が最後はしっかり脚を使えるとは言えなくもないですけど、そればっかりも言っていられないのでね。

-:この先のローテーションは左が続くので、右でどれだけ成長した走りが出来るのかを注目したいですね。

杉:この条件の中で、思っている以上に馬が走ってくれれば、もっと楽しみになってきますよね。

丈夫な身体づくりの信念を実らせるシーズンに向けて

-:ここまでこの馬の特徴を伺いましたが、パドックでファンの方が観た時に、こういう時が良いというポイントがあったら、教えていただけますか。

杉:良い時、悪い時で、パドックではあまり大きな変化はないんですよね。強いて言えば、やはりトモの張りですかね。良い時はあまりトモの寂しさを見せないのですが、本調子に一息かなという時はややスラッと見せるというか…。

-:それは馬体重ではなくて、シルエットということですね。

杉:ええ、馬体重はあまり大きな変動がある馬ではないので、シルエットですね。ちょっと馬っ振りを良く見せている時の方がコンディションとしては良いのではないでしょうか。先ほども言ったように、休み明けの分、走れる筋肉を身にまとっているかと言われると、欲を言えば、もう少し欲しいところです。あと1週間弱あるので、可能な限りそういう状態に持っていけるように、調整はしていきたいと思います。

杉山晴紀調教師

-:トレセンで見ている馬たちというのは、競馬場に行ったら気合いが乗っているからか、ちょっと違うというか、パンとする感じがありますからね。ウインテンダネスもやっぱり普段よりは気が入ってというか、筋肉の張りもその辺で違ってくるかもしれませんね。

杉:そうですね。それはありますね。

-:最後に、応援しているファンも多いと思いますが、メッセージをいただけますか?

杉:春先は、僕たちが思っている以上に馬が大きな成長を遂げてくれましたので、ひと夏しっかり休養した効果というか、大きく成長した姿を見せられるように頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。ここからまた一つ成長してくれれば、G1レベルの馬たちにも肉薄出来るようになるのではないかという期待は持っています。

-:5歳の秋と言ったら、昔の6歳で、晩成型と言われていても、本当に歳を取って調子を上げる馬というのは一握りだと思うので、頑張ってもらいたいですね。これまで29戦してきた積み重ねがここに繋がっているというのは、無事であったからこそ、ですよね。

杉:そうですね。そこは生産者の方々が「丈夫な身体づくり」という信念の元でやられているので、そこには感謝したいですよね。

-:もちろんそこに杉山厩舎も貢献しているのですよね。

杉:そうですね。当然、初期の日吉厩舎からの流れもあるので、そういった前に携わった人に感謝しつつ、自分が出来ること精一杯やるだけですね。

-:休み明けから楽しみに観させていただきます。

杉:何とか形になるように頑張ります。

-:ありがとうございます。

杉山晴紀調教師