チェスナットコート 策士が適性見出し 狙いすました海外挑戦へ
2018/10/15(月)
チェスナットコート・矢作芳人調教師インタビュー(1P)はコチラ⇒
-:“フォーワイドになるくらいだったら、1列下げてでも内にいてくれ”というのがオーストラリア流なんですね(笑)。現地に到着してからのチェスナットコートの状況ですが、昨日(10月10日)の追い切りも含め、直近の状況を教えていただけますか?
矢:10月1日に香港経由でオーストラリアのウェリビー競馬場に入りました。輸送に関しては台風の心配がありましたが、むしろそれが良い方向につながりました。当初香港で積み替える予定でしたが、台風の影響でそれがなくなった。同じ飛行機でメルボルンまで行けたというのは非常にラッキーでした。チェスナットコート、ソールインパクトともに輸送で熱があがることもなく元気に到着できたので、10月2日は運動だけ、3日から乗り出し、6日にはオールウェザートラックで15-15を単走で行ないました。
10日は芝で、実質半マイル併せ~最後の2ハロンをビシッと追っています。今回は休み明けなので、反応はいま一つかなというところですね。馬体重は470キロ(前走の目黒記念出走時が460キロ)で、何も問題ありません。「馬の状態は、明らかに上を向いている」という報告が来ています。
-:調教をされているのはどなたですか?
矢:乗り手は大井の元騎手で騎手会長でもあった吉井(竜一)調教師です。調教師になったばかりで、勉強のためにいきたい、というのでお願いしました。彼に任せて、毎日乗ってもらっています。
-:チェスナットコートと言えば、血統表を見るとダッシャーゴーゴーなど短距離色の強い母系ですね。
矢:たしかに母系は短いところで走る馬が多いですよね。でも、チェスナットコートの場合は2000m以上だなと思いましたよ。
-:それはどの辺りで感じられましたか?
矢:レースぶりを見てですね。瑠星が乗って勝った甲武特別が2400mでした。この時にやはりこれくらい距離があった方が良い馬だなと感じました。それは、前述の操縦性の良さ、折り合えるということですよね。もちろん体型もありますが、結局、長い距離に対応できるか否かは、気性と操縦性が重要だと思っています。
その後、勝っているのも2200m、2400mです。重賞初挑戦となった日経賞(G2)の2500mでは2着。天皇賞・春の3200mに関しては、決して距離が長いという負け方ではなかった。力は出し切っているし、それほど着差もなかったので、メルボルンCの3200mは不安視していません。しかし、ベストは2400mかと思います。
▲チェスナットコート(今年4月撮影)
-:ただ、先ほど言われていたコース形態や相手関係、日本馬のレベルの高さを考えると、3200mでも面白いと思います。
矢:もちろん。これは実現しなかった話ですけど、最初はコーフィールドCだけザカリー・パートン騎手にオファーを出していました。日本のトップジョッキーは菊花賞で乗るだろうから、平日に開催されるメルボルンCには乗れても菊花賞前日のコーフィールドCには乗れないだろうと判断したからです。以前、パートン騎手は“3200mのメルボルンCはチャンスだ”と話していました。でも、「メルボルンCがチャンスだと言っただろう」と断られました。
そんな時、オーナーが川田騎手を希望されました。川田騎手も「菊花賞を断ってでもコーフィールドCに乗りたい」と言ってくれたので、その心意気を買って、ともに川田騎手が騎乗することになりました。チェスナットコートは一回使った方が良くなるタイプなので、同じ騎手が連続で乗ってくれるのもプラスだと思います。
-:遠征初戦のコーフィールドCでどれくらい走れるかに注目ですね。
矢:コーフィールドCの結果によって、メルボルンCにもチャンスが……。
-:ゲートについてもお伺いしたいのですが、ゲートボーイを付けるかどうかは各陣営が決められるのですか?
矢:決められます。
-:ゲートボーイは使われるご予定ですか?
矢:使わないつもりではいますが、オーストラリアに行ってから決めます。
「正直、日本ではまだG2・2着のレベルじゃないですか。その馬の適性を見込んでの挑戦なので、僕の見る眼がどれだけ正しいか…そこに注目してほしいと思っています」
-:ファンが注目するとしたら、どこを観てもらいたいですか?
矢:正直、日本ではまだG2・2着のレベルじゃないですか。その馬の適性を見込んでの挑戦なので、僕の見る眼がどれだけ正しいか…そこに注目してほしいと思っています。
-:あとは運というか、枠も重要ですね。
矢:それは非常に大きいと思います。ただ、そういう意味も込めての川田騎手起用なので。オーストラリアの競馬は良い位置に付けないと勝負にならない。川田騎手らしいクレバーな競馬に期待しています。
-:聞いた話ですと、ジョッキーも日本の装備が使えないそうですね。オーストラリア流の道具でなければ許可が下りないとか。
矢:そうです。ヘルメットとかプロテクターなどですね。
-:蹄鉄に関しては、日本と同じものが使えるのですか?
矢:使えます。脚元への影響もありますので、基本的には日本と同じでいきます。使っても2ミリとか4ミリまででしょうね。オーストラリアの蹄鉄は、どちらかと言えば日本に似ているので、やりやすいとは思っています。
-:まだ正確な情報がない状況ですが、相手関係はいかがですか?
矢:まだ分からないです。以前より相手が強くなっていることは確かですね。ただ、僕としても期待しています。窪田オーナーにはここまで楽しみにしていただき、当然、莫大な経費がかかっています。何とか結果を出さなければと思っています。
-:最近では日本とオーストラリアとの関係が以前よりも濃くなっています。オーストラリアでは日本のセールだけではなく現役競走馬が望まれていて、何頭も移籍していますからね。
矢:ウチにも何頭もオファーが来ていますよ。話はまとまっていませんが。
-:それくらい日本の競馬に対する注目度が高まっているんですね。
矢:間違いないと思います。
-:となると、日本馬ということで以前よりも警戒されそうですね。
矢:楽しみじゃないですか。俺はアウェイが大好きなので(ニヤリ)。
-:もしソールインパクトの出走が決まれば、坂井瑠星騎手も乗れるということですね。
矢:そうですね。何とか出走が叶うことを願っています。出走をとりやめる馬も出ていますので、チャンスは広がってきています。
-:最初の出馬登録表を見た時は、頭数の多さに驚きました。
矢:50番目くらいでしたね。
-:我々馬券ファンは日本のレースよりも数段、難易度の高い馬券に挑戦することになると思います。
矢:しかも、ギリギリまで何が出てくるか分からないですからね。
「これは面白い挑戦だと思うんです。オーストラリア競馬の条件に、非常に合う馬で挑めるのだから。僕としても本当にワクワクしています。日本でG1を勝ちまくっている馬が行く訳ではない、負けられない戦いという訳でもない、とはいえノーチャンスではない。チャンスは十分にあると思っています。幸運を祈って見守ってください」
-:先生から、オーストラリア競馬についてアドバイスがあれば教えてください。
矢:繰り返しになりますが、内枠が有利です(笑)!
-:チェスナットコートを応援するファンに向けて、メッセージをいただけますか?
矢:これは面白い挑戦だと思うんです。オーストラリア競馬の条件に、非常に合う馬で挑めるのだから。僕としても本当にワクワクしています。日本でG1を勝ちまくっている馬が行く訳ではない、負けられない戦いという訳でもない。とはいえ、ノーチャンスではない。チャンスは十分にあると思っています。幸運を祈って見守ってください。
-:今回の挑戦が出来たのも、矢作先生が質の高い競走馬を集めているからこそだと思います。
矢:僕の力というより窪田オーナーのご理解ですね。それなしでは、この海外遠征はなしえませんでした。ソールインパクトに瑠星を乗せていただけることも含めて、窪田オーナーのご厚意があってこそなんです。
-:チェスナットコートはまだ4歳の秋。本格化していく途上かと思います。この挑戦をキッカケに日本での活躍も楽しみです。
矢:メルボルンCを勝って、天皇賞(春)を勝ったら格好良いですね。
-:夢のある挑戦を楽しみにしています。ありがとうございました。
矢:チェスナットコートは僕にとって思い入れの強い一頭です。なにせ誕生から24時間以内に見て良い馬だ!と感じて、窪田オーナーに購入していただいた経緯があります。窪田オーナーとのお付き合いが始まったのもここから。チェスナットコートで、僕の原点であるオーストラリア競馬に挑戦できるなんて、本当にありがたいことです。頑張ります。
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プロフィール
【矢作 芳人】Yoshito Yahagi
1961年3月20日生まれ。東京都出身。父の矢作和人氏は大井競馬の元調教師。自身は名門・開成高校を卒業するも、父の影響を受けて競馬界へ足を踏み入れる。厩務員・調教助手時代は5つの厩舎を渡り歩き、2005年に厩舎を開業。実に14回目の受験で、晴れて調教師免許を手にした。
厩舎開業後はコンスタントに勝ち星を重ね、スーパーホーネット、グロリアスノア、グランプリボス、ディープブリランテら活躍馬を多数輩出。2014年と2016年には調教師リーディングを獲得。今年も安田記念を連闘で挑んだモズアスコットで制している。
また、メディア・ファン対応も精力的にこなしており、2008年には初の著書「開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント」を発刊。『よく稼ぎ、よく遊べ』をモットーに、他とは一線を画した厩舎運営を続けている。