ニシケンモノノフ 前年度覇者の7歳馬 あえてのぶっつけで得意の淀へ
2018/10/31(水)
今年は京都で連覇へ挑む。地方競馬でデビューを果たし、2歳時にJRAの庄野靖志厩舎へ移籍。そこでキャリアを積んで、遂には2017年のJBCスプリントを制したニシケンモノノフ。今年に入ってからは適条件ではないレースにも使われていたとはいえ、4連敗と苦杯をなめているが、連覇の懸かる一戦へぶっつけで挑むことになった。例年以上に多彩なメンバーになった感はあるが、ディフェンディングチャンピオンとしての貫禄をみせられるか。
-:JBCスプリント(Jpn1)連覇が懸かるニシケンモノノフ(牡7、栗東・庄野厩舎)ですが、ファンの人は4カ月振りというブランクが気になると思うのですが、その経緯を教えていただけないでしょうか。
大野恭平調教助手:今回は、使ったら逆に良くならないんじゃないか、疲れが残ってしまうんじゃないか、ということで、ぶっつけにしようとなりました。
-:「敢えて」なのですね。
大:敢えて、なんですよ。北海道スプリントC(4着)が終わった後からそれは決まっていて、今週の水曜日(10月24日)にノリさん(横山典弘騎手)に乗ってもらって「やっぱりこれで良かったね。馬も我慢出来ているし、逆にフレッシュな感じだから良かった」とお墨付きをいただきました。
-:先週(18日、坂路4F50.9-37.6-24.9-12.5秒)は時計が出ていましたね。
大:ええ、無理に時計を出すつもりはなかったのですが、結果それが1番時計だったんですけどね。今週(53.9-39.7-25.3-12.6秒)は馬場が悪かったのもあったのかもしれないですけど、ノリさんが「もう出来ているから、これくらいで良いよ。来週も、もう軽めで良いよ」と。もう1カ月半くらい乗り込んでいるので態勢は整っています。
▲馬房で落ち着きはらった様子が印象的なニシケンモノノフ
-:これまでの過程をみると、下(コース)でやっている時とやっていない時があるじゃないですか。どういう意図があるのですか。
大:基本的に普段の調教はEコースなのですが、トモの具合で坂路やコースを使い分けています。今日(10月26日)乗った感じはすごく良かったですね。あとは、本当にノリさんが言うようにケアの方ですね。
-:やっぱりレースに行ってのレース勘といいますか、そこは実績があるので大丈夫そうですか。
大:普段の休み明けより本当に良いですね。普段なら休み明けはう~ん…と思うところ。去年も東京盃を叩いて、くらいの感じでやっていたのですが、今回はぶっつけでも大丈夫だなという感じですね。
-:東京盃の時は引き揚げてきて、ノリさんが「休み明けだな」と言っていましたからね。
大:前哨戦で勝って本番でも勝つのは難しいですからね。去年は本当に東京盃をステップに本番で勝負しました。
-:去年と変化した部分はありますか?
大:今日、乗った感じでは、去年に限りなく近いなと思いましたけどね。状態には自信がありますね。気持ちは変わっていないですけどね。一時は疲れが抜けない感じもあったのですが、キネシオテープという、このテープを貼ってから何か急に絡み始めた感じで、動きが良くなった感じがしますね。
-:それは初耳ですね。いつから貼り始めたのですか。
大:先週の火曜日(10月16日)ですね。これを貼ってから、治療の回数が逆に減ったので。
▲テープのおかげで状態が上向いたという
-:前は「電気治療を2度やるようになったら、疲れが取れた」ということでしたね。
大:今も電気治療をしていて、2回やっていたのですが、テープを貼るようになってから週1回になりましたよ。
-:これは初耳なのですが、医療用のテープなのですか?
大:医療用ですね。トレセン内で使ったのは第1号だと思います。自分もテーピングを貼ってもらって良くなったことがあるから、馬にはどうなんだろう、と気になったので、先生(調教師)に「試してみたい」と言ったら貼ってくれて、それが思いの外良かったですね。
-:具体的にどんな効果でしょうか?
大:筋肉がほぐれますね。人間のテーピングと思ったら分かりやすいんじゃないかと思います。それに実際は貼るだけなので、効くか効かないかだけ。デメリットといったら貼り過ぎて皮膚が荒れるくらいしかないので、それに気をつけるだけですからね。
-:今年は4戦して未勝利。敗戦を解説してもらうと、どうなりますか?
大:芝を試したかったシルクロードSは仕方ないところはあったと思いますが、その後の結果においては、フェブラリーS(16着)が悪影響したかもしれませんね。ずっと厩舎で調整していたので、ドンドン悪い方向にいってしまい、もっと強くならないかと調整もビシバシやっていたら、やっぱり耐えきれなかったのかなと思います。ただ、北海道スプリントカップもその状態の中、59kgを背負って頑張ってくれましたからね。
-:確かに追い切りメニューを見ていると、今回より前の方が数字的にはけっこうハードにやっていたなと。
大:その経験を踏まえ、秋からは今まで通りで時計だけはコンスタントにこなしています。
-:理想はテンであまりガチャガチャしたくないタイプですよね。
大:そうですね。
-:そこは枠の並び、行く馬の並びもかなり影響する感じがするのですが。
大:その辺はどんな競馬でも出来るので、どこでも良いんですけどね。ただ、ゴチャつかない位置ならなおいいですね。
-:去年は最内枠で勝ったものの、今年は速い馬も多いですし、内に入るとまた難しくなるかもしれませんね。
大:去年はコパノリッキーに捲られた時は負けたと思いましたけどね(笑)。
-:去年はかなり良い手応えで差し切っての勝利だったと思うのですが、今年は京都に替わります。ニシケンモノノフにとっては、むしろ京都の方が良いのかなと。
大:京都の方が絶対に良いですね。どうしても短距離だと、地方交流しか回るところがないですからね。もともとはスピード系なので、本当は中央の馬場でも走りたいのですが、そうしたら斤量を背負いますから。
-:ダート馬だけど、スピードのあるダート馬という認識で良いですね。
大:今の京都は特に時計が速いので、良いんじゃないですかね。
-:天気的に馬場は速くなった方が良いですね。
大:速くなった方が良いです。それはマテラスカイも同じでしょうし、芝で走っているような馬もいますからね。
▲2年半ぶりの挑戦となるが、京都ダートは2連勝中
-:それにしても、1200m以上も走れるタイプだと思いますけど、1200の馬でこうやって落ち着いているというのはすごいですね。
大:落ち着いていますね。馬場に行っても、走り出すまではメッチャ落ち着いていますしね。スピードを上がっていったら、やっぱりドンドン走りたくなってきますけど。追い切りの時も走り出すまでは本当に静かですよ。競馬場でも、よく馬場に入る前にチャカチャカしている馬がいるじゃないですか。追い切りで目の前を通っていても、何てことはないですよ。
-:今年は京都で行われるということでチャンスはよりあるんじゃないかと思います。レースに向けて意気込みをお願いできますか。
大:去年のチャンピオンですし、恥じないようにしたいですね。今年は全然人気もないでしょうから、気楽な形で行けますけど、みんなが忘れた頃にエッ?というような競馬をみせたいですね。
-:ありがとうございました。連覇がかかるものの、伏兵になりそうな雰囲気。一発を期待しています。
プロフィール
【大野 恭平】 Kyohei Ohno
1985年生まれ。グリーンファーム、宇治田原優駿ステーブルを経て、トレセン入り。大久保龍志厩舎を経て庄野靖志厩舎に移籍し、調教助手歴は9年目。所属厩舎の庄野靖志調教師については「調教師なのに、まずはいつも人の意見も聞いてくれる、良い先生です。最後に決めるのは先生ですが、普通は意見を言わせてもらえないので」と語る。趣味はバス釣りで、近郊の琵琶湖だけではなく、遠征をしにいくほどの玄人。10月30日に33歳の誕生日を迎えたばかり。5日後に行われるJBCスプリントでパートナーとBIGプレゼントを狙いにいく。