新天地で新生ケイティを見せつける。2017年の帝王賞を制すなど早くからダート界を賑わせてきたケイティブレイブ。今年2月には目野徹也厩舎の解散に伴い、新進気鋭の3年目・杉山晴紀厩舎へ移籍。新たな担当者と共に研鑽の日々を過ごしてきた。前走の日本テレビ盃では進化の軌跡が窺える走りをみせつけたが、荒削りだったケイティブレイブが果たして中央タイトルを手にすることができるのか。今回は理論派の担当者を直撃した。

ケイティブレイブの「弱さ」と見つめ合い 日々精進を

-:JBCクラシック(Jpn1)へ挑むケイティブレイブ(牡5、栗東・杉山厩舎)ですが、房野助手には、以前も記事にしていないところでお話をさせていただきました。もともとケイティブレイブは以前の厩舎時代、放牧に出ていなかったことで知られ、転厩されてからは帝王賞の前後で放牧を挟んでいますよね。

房野陽介調教助手:正直、この馬はそれが良かったのかもしれないですよ。放牧に出てこんなに緩むかというくらい緩みましたから。「フレッシュ」というより、「バカンス」に行って帰ってきた感じですね。

-:ただ、昔よりは精神的にリラックスできているのではないでしょうか。また、3月からの過程で取り組んできたことを改めて語っていただけますか。

ケイティブレイブ

▲ケイティブレイブと担当の房野助手
過去には福島信晴厩舎でナムラクレセントを担当していた

房:ケイティブレイブの場合、圧倒的に前掛かりなんですよね。トモが弱い。前に踏ん張っていないから、何かあった時に、重心が急に後ろに行った時に立ったり…。僕は、馬が立つのは決して元気とか、暴れているとかではなくて、全て苦しさの表れだと思っています。後ろ脚が太くて安定していたら、馬は何もしないはずだと思います。この馬は体が垂れるように、やっぱりそこの緩さや弱さがあって。

でも、弱さがある中でなぜ走れるのと言ったら、人間もそうですけど、重心さえ前に持っていけば走れるんですよ。そういう走りをずっとしていたから。何が出来ないかと言ったら、ずっと引っ張られたり、前に突っ込んでいるのを戻された時に、一気に苦しくなっちゃうから。福永(祐一)さんが「ハナに行かないといけない」というのは、コントロールの上での通過順じゃないと思うんです。こっちのコントロールに対して馬が体を起こしたり、突っ込んだり出来るのか、なんですよ。

だから、出来るだけ身体をフラットに、左右バランスを良くしたいんですよね。そうやって考えた時に、馬の身体は前と後ろでその前に頭が付くじゃないですか。その時点で、この差的に全体のバランスはまず前に来ますから、そこに人間が乗っかって、人間がどこに乗るかと言ったら、ボディの半分よりも前に乗りますから。ということは、どこに体重が行くかと言うと、全部前に来るんですよね。だから、それを上手くグッと引っ張り返さないといけないんですよね。

「馬の本能の中には、人間を乗せて走るということはないでしょうから。最後の最後まで、理性的に一生懸命走る馬をつくりたいんですよ」


-:意図的に後ろにもっていくと。

房:要は、人間が乗らなかったら、崩れたバランスで駈歩をして、それをグッと抱えてやることで、トモに体重が乗るじゃないですか。そういう考えで調教に乗っているんですけどね。「馬がガムシャラに、本能で」とはよく言われますけど、馬の本能の中には、人間を乗せて走るということはないでしょうから。最後の最後まで、理性的に、一生懸命走る馬をつくりたいんですよ。最後の最後まで上に人間が乗っているよ、という中で、それは人間ももちろん抱えて乗るでしょ、と。引っ張るイコール馬がしんどいみたいな感じで、フワッと乗って不安がないようにやると、人間のバランスが全部前に行っちゃっているので。人間が乗っている負債をまずそこでゼロにしないと、そこで走ることを覚えさせないと…。そういう意味では、今取り組んでいる調教スタイルと福永さんの考えは合っているのかなと思いますけどね。

-:以前、他の馬でお話をされた時はそんなことをおっしゃっていた記憶はありませんでしたが、そういった考えに行き着いた経緯というのはどんなところでしょうか?

房:全て自分のトレーニングからですよ(※ヨガやバレエ、ボルダリングなど)。例えば、手綱をプラッとして走るというのであれば、みんな一緒だから、それはトレーニングにはなっていないんですよね。トレーニングになるかどうかはその先です。坂路を70(秒)で乗りますよね。僕はこの走りを70で走れるものか、その先にどっちが速く走れるか?と思います。でも、僕が引っ張っても、それでも歩くということは自主性なんですよ。その違いですね。完全に70で乗っているだけなのか、こっちで引っ張ってエネルギーを作って、効率的なのか。

ケイティブレイブ

-:日々の運動をより重視されているのですね。

房:僕は6歳が一番完成するんじゃないかなと。どの馬でもそうですけど、3歳が一番強いなんてあり得ないでしょうから。

-:先程歩いているところを見させてもらうと、他の方が乗っていらっしゃるより、ゆっくり歩いているのはそういう訳なのですね。

房:だから、馬にとってもしんどいでしょうからね。僕は、周りくらい速く歩けたら良いと思うんですけど、僕がゆっくり歩かせているというよりは、それをやっているとゆっくりとしか歩けないよ、という話ですね。結局、引っ張り過ぎたら、後ろにこける訳じゃないですか。と言うことは、僕が持っている中で馬が前を歩いているのなら、それは確実に馬の自主性ありきで、前に進んでいる訳ですから。例えば、坂路をゆっくり80(秒)で上がっている馬と、60で上がっている馬とでは、どっちがしんどいか。乗り方一つで60の方がメッチャ楽な場合もありますし、80でまったり乗っていたら、それは80の方が楽ですけど、60で上がるよりもしんどい80というのがもちろんありますからね。そこを見極めないと。

-:ファンはグリーンチャンネルやレーシングビュアーで調教の映像を観る訳ですけど、基本的に数字が書かれた状態で観る訳じゃないですか。

房:そうですよね。速い時計イコール良いみたいに捉えるのではなくて、何でもフォームが大事だと思うので。この間の追い切りなんかでも、観ていてユッタリ走っているなと。やっぱり忙しくなると、バタバタ走るじゃないですか。バタバタ走って時計が出ても、スタミナ的には先がないんですよ。ユッタリ走れて、それなりの時計が出ているというのが一番理想ですよね。時計的には目立ったところはないですよ。(10月24日、CWを7Fで)87の終い12秒なんぼですから。その額面だけじゃなくて、福永さんは走り方を感じているから、ああいうコメントをしているんですよね。

新境地が拓けた日本テレビ盃 中央タイトル奪取へ弾み
ケイティブレイブ陣営インタビュー(2P)はコチラ⇒

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▲1週前追い切りに福永祐一騎手が騎乗