オジュウチョウサン 偉業へ向けて 最強ハードラーが目指す新たな飛躍
2019/3/6(水)
-:最優秀障害馬を受賞し、年末には有馬記念に挑戦と、競馬界の中心にいた1年、どのような1年でしたでしょう?
和田正一郎調教師:そうですね、一昨年のは中山大障害を勝った後に体調が思わしくない時期があり、中山グランドジャンプはギリギリ間に合ったという日程でしたが、その中で強い競馬をしてくれて、改めて凄い馬だと思いました。その後は平地の頂点を目指すということで福島の開成山特別、そしてその次に予定していた九十九里特別は走れませんでしたが、立て直して南武特別と、うまく勝ってくれて、有馬記念にも行くことができました。有馬記念まで駒を進めるとは、当初まったく想像していませんでしたね。そこまでこぎつけられたことが良かったです。
-:有馬記念は敗れたとはいえ、素晴らしい挑戦だったと思います。
和:ペースだとか、条件の悪いところもありましたからね。(武)ユタカさんも渾身の騎乗をしてくれましたが結果は伴わず、残念ではありました。ただその分、今年勝てるように頑張りたいです。
-:再び平地に向かうにあたり、不安と期待、どちらのほうが大きかったのでしょうか。
和:不安はまったくなかったです。どれだけ走れるのか、どれだけ通用するのか、もちろん色々想像はしました。ただ結果はついてくるものですし、有馬記念までどのレースをステップにするのか、体調の見極めに気を使いました。
再び石神騎手とのコンビ結成で頂点を目指す
-:平地と障害で、調整過程で気をつけるところに違いはあるのでしょうか。
和:それはないと思いますね。目標のレースに100の状態に持っていく、そしてまずは無事に出走させることが重要ですし、無事レースを終えて次のレースを迎えられるよう考えながら調整することは、どのレースにおいても同じだと思います。
-:平地に戻って緒戦だった開成山特別は見事1着でした。先生にとって想像以上の内容でしたか?
和:いや、想像の範囲内でしたね。作戦は特に決めておらず、ジョッキーにその時に応じて判断してもらえればと思っていましたがいい内容でした。
-:南武特別はものすごい報道陣でした。反響の大きさを感じた瞬間などはありますか?
和:オジュウチョウサンという馬に関しては、平地障害関係なく一戦一戦応援してくださる方が本当に多いなと感じています。レースを見て楽しんでいただいたり、喜んでいただいたり、感動していただいたりしていることも感じていますよ。
-:どの馬にも細心の注意を払っていると思いますが、プレッシャーや緊張は大きかったのでしょうか。
和:私は馬に触るわけでもないので、プレッシャー自体は少なかったです。実際担当している厩務員、調教助手、そして調教に乗ってくれた石神騎手、中間調整している牧場含めて、実際触っている人間のプレッシャーは相当大きかったと思いますし、彼らを気にかけていました。
-:無事プレッシャーを乗り切って有馬記念を迎えられたことは、和田厩舎にとっても今後に向けて財産になったのではないでしょうか。
和:取材も多くの方がいらして大変でしたし、その中で平常心を保ちながら取材を受け、仕事をやりきったのは厩舎としても今後のために良かったと思います。大きな財産になるでしょうね。注目馬を担当すると取材は受けないといけませんし、その中で平常と変わらない、むしろそれ以上の仕事ができないといけないわけですから。今回は結果こそ出ませんでしたが、担当者も、周りの従業員にとってもそういう面では良かったと思います。
果敢に有馬記念へ挑戦 9着も大きな足跡を残す
-:有馬記念の反動はあったのでしょうか?
和:そうですね、やはり1走1走全力で走る馬ですので、それなりと言いますか、多少なりとも反動は出ます。今回はどこがというわけではないですが、肉体的にも精神的にも、反動は大きかったですね。できればダイヤモンドSを使いたかったのですが、いい状態では出せないと思い見送りました。
-:さて、いよいよ今年緒戦の阪神スプリングジャンプを迎えます。先生としてはまた芝を走らせてみたいでしょうか?
和:そうですね……。芝でも、障害でも、どちらにいっても大変な偉業を目指してやっていくわけですから、その点ではどちらでもいいとは思います。どちらにしても大変意義のある挑戦になると思いますね。
-:阪神スプリングジャンプの後は馬の状態次第でしょうが、その後は……。
和:まずはレースが終わってからですね。中山グランドジャンプとは決めずに、まずは阪神スプリングジャンプに全力投球。だいぶ反動もおさまり、調教量を増やしているところです。
-:8歳となりましたが、年々強くなっているように思えます。
和:普段の様子からは特に衰えた感じは伺えませんし、あとはいい状態をできるだけキープしていきたいです。
-:今年の目標を教えていただけますか?
和:今年に限らず、1走1走いい状態で競馬に向かうことが目標です。
-:ファンへメッセージをお願いします。
和:今後も皆さんのご期待に応えられるよう、しっかり調教していきたいと思います。どうかオジュウの競馬を見て、楽しんでいただくなり、感動していただくなりしていただければ嬉しいです。これからも注目していただきたいと思います。
プロフィール
【石神 深一】 Shinichi Ishigami
01年3月に騎手デビュー。初年度から4年連続で二桁勝利を挙げるなど順調なスタートを切るも、落馬による怪我の影響もあり、騎乗数が減って11年には勝ち星が0となってしまう。07年より障害騎乗を始め、13年新潟ジャンプSをアサティスボーイで勝ち、重賞初制覇。その後も障害で安定した成績を収め、16年の中山グランドジャンプをオジュウチョウサンで制し、悲願のJG1初制覇。初の障害リーディングにも輝いた。オジュウチョウサンとのコンビでは以後も中山グランドジャンプ3連覇、中山大障害2連覇など重賞9連勝を達成。昨年暮れにはニホンピロバロンとのコンビで自身、中山大障害3連覇を達成し、障害のトップジョッキーとして地位を築き上げている。
プロフィール
【和田 正一郎】 Shoichiro Wada
1974年10月3日、千葉県で生まれる。数多くの活躍馬を管理した和田正道調教師を父に持ち、実家は有限会社和田牧場という代々続くホースマンの家系出身。2002年よりトレセンに入ると、2009年、34歳の若さで調教師免許を取得。当初未勝利馬であった転厩馬オジュウチョウサンを障害王者に育て上げた。