リオンリオン デビュー前からダービーを意識してきた逸材 急上昇で名乗り
2019/5/21(火)
乗り味が違う馬がいるんです。厩舎スタッフもデビュー前から高く評価していたのがリオンリオン。その言葉を裏付けるかのように、青葉賞を制してダービーに駒を進めてきたが、決してトントン拍子の出世ではなかった。デビューまで、回り道せざるを得なかった理由とは。遅れてきた素質馬に勝機はあるのか。担当する額田洋介調教助手に、その可能性を語ってもらった。
※5月15日に取材 その後、横山典弘騎手から横山武史騎手に乗り替わることが発表されています。-:日本ダービー(G1)に挑むリオンリオン(牡3、栗東・松永幹厩舎)で青葉賞を勝利、おめでとうございます。まず、青葉賞の現場で見ていると、額田さんは、あまり喜びを表に出していないような感じがしました。どんな心境でしたか?
額田洋介調教助手:ありがとうございます。重賞を勝てたことでフワフワした感じがありましたけど、目的はやっぱり(ダービーの)権利を獲ることじゃないですか。権利を獲れたということで、ちょっとホッとしていた部分もあったのかなと思います。もっと「やったぜ!」といった意識になるかと思ったんですけど、やっぱりトライアルで次があるので、喜ぶのは一瞬でしたよね。また1カ月後に今度は本番が控えているので。
▲リオンリオンとデビューから担当する額田助手(15日撮影)
レースは、ゲートの外ラチを通って帰ってきながら、ビジョン観ていたら、残り200mくらいで2着は確保出来るだろうなと思ったのですけど、あそこまでいったら勝って欲しいと思いながら観ていました。やっぱり1着と2着じゃ違いますし、トライアルを勝ってダービーに行くのは違いますよね。
-:青葉賞を使う訳ですから、普通勝ち負けをしたら、余程のことがない限り、次は出ることになるでしょうからね。
額:ええ。青葉賞の勝ち馬は勝てないというジンクスがあるじゃないですか。それってやっぱり、関西馬は2回輸送しないといけないですし、この時期に2400を走るのは過酷だと思います。例年、皐月賞組が強かったり、それは事実なのですが、ここに来て力を付けてきているので。でも、やっぱりもう一つ良くならないと…とは思いますからね。
-:その点に関しては、前回からの上積みはいかがですか。
額:やっぱり今回で年明け5回目になりますし、大きな上積みはありませんが、500万を勝った時も、青葉賞を勝った時も馬がすごく良くなってくれました。当時ほどではないですが、良くはなっていますね。
▲松永幹夫厩舎にとっても牡馬クラシックは初出走となる
-:強気な競馬で攻めきってくれたジョッキーとは、レース後に話はされましたか。
額:「ダービーに行くんだったら、もうちょっと良くなって欲しいな」とは言っていたので、それは実際にそうだろうなと思います。あと、冗談も含めて、リップサービス的な感じで「また松永先生に良くしてもらいます(笑)」と言っていましたからね。
-:去年、北海道で「乗り味が違う」とおっしゃっていたので、それが現実になりつつありますね。
額:そうですね。だから、クラシックに乗せないといけないという思いがありましたし、先生もそういう意識でした。ここに来て力を付けてきたということもあるので、間に合った、間に合ってくれたかな、とは思っています。
-:将来性という意味では、今後も活躍し続けていける馬だと思いますが、この3戦は内容的にも変化してきた感じを受けますが、そこはいかがでしょうか。
額:距離が延びるのは良いと思っていました。スタミナはけっこうありますし、ちょうどここへ来て色々噛み合ってきたのでしょうね。前々で少々飛ばしていっても、タフな競馬をすることは大丈夫ですから。
-:長距離の持続力タイプの印象ですね。
額:もともと2歳の時から切れる脚はないけど、長く良い脚は使えそうだな、ということはずっと言っていたので。
-:跳びはユッタリしていますね。
額:大きいですね。背は高いですけど、脚が長くて、胴が短いですね。それと繋が長いので、だからフットワークが綺麗だと思うんですよね。それで、長距離向きというか。
-:そこはルーラーシップ産駒らしくもありますよね。今思えば、札幌のような小回りは、この馬にとっては走りやすさという点では難しいところがあったでしょうね。能力でカバーできたのでしょうが。
額:そうですね。(2着が2回続いた)札幌では「またモレイラか」みたいな感じで、勝ち馬のジョッキーがモレイラ騎手で(笑)。2戦目はジョッキーもかなり自信を持って乗ってくれたのですが、またしても、という結果でしたからね。
-:ルーラーシップ産駒というと、気性的な部分はどうでしょうか。
額:この馬自体はノンビリしているので、そこまで難しいという感じはありません。ゲートも当初は悪かったけど、先生が「じっくりやっていこう」と言っていたので、その甲斐もあってか、馬自身がゲートでも納得したと思うんですよ。だから、ゲートが悪いところも見せないので。
-:馬房では落ち着いた様子ですよね。
額:ただ、ゲートが悪かったのも含めて、順致は苦労したとは聞きました。
-:今の東京は馬場が速い、硬いといわれますね。その適性も重要になってくるのではないでしょうか。
額:すごく時計が出ていますからね。どちらかと言えば、ちょっと緩い方がいいのかなと思いますけどね。そこまでの高速馬場になったら…。青葉賞の馬場はちょっと緩さがありましたからね。
-:その加減というのは、馬場に入られた方じゃないと、なかなか分からないかなと思いますからね。そう考えると、時計的にも良い内容だったと思います。
額:ペースを落とさないで、行きましたからね。
-:ああいう競馬というのは、ある程度、想定されていましたか。その前(大寒桜賞)はそんなに速くなかったですからね。
額:でも、乗り役に全部お任せしているから、ハナは切るだろうなと思いましたけど、実況を聞いていて、1000mの通過が59秒台と聞いた時は「速っ!」と思いましたけどね。
-:今朝(5月15日)の追い切りはどうでしたか。
額:もともと調教はそんなに動く方じゃないですけど、1週前ということで併せ馬をしました。坂路はそんなに動かない馬ですからね。それでも、この馬なりに動けたので、問題はないと思います。もともと1週前は毎回坂路で追い切るパターンにしていて、来週はCWコースでやる予定です。
-:乗っていらっしゃる感じで、良くなって欲しい部分は、具体的にどういったところですか。
額:トモですね。走っているのを見ている感じでも、まだ緩いなと。それがシッカリしてきたら、もっと良いだろうなと。それでも、2歳の頃に比べたら、シッカリしていますけどね。
-:脚長の馬は脚の収縮といいますか、やっぱり道中はあまり身体が伸び過ぎないように、と意識するものですか。
額:そうですね。ちょっと頭を下げて、伸びて走りそうになる時があるので、そこはちょっと馬の上体を起こしてというか。
-:ルーラーシップは横山典弘騎手も乗られていましたね。
額:おそらく同じ感覚なのでしょうね。
-:よく懸念されるのは、ダービーのスタンド前発走なのですが。
額:それは、実際分からないですね。おそらくすごい歓声だと思いますから。ウチの厩舎もダービーは初めてですから。先生と相談して、ゲート裏までメンコをしようかなというくらいは考えています。普段、メンコはしていないので。ただ、競馬はしやすい馬だと思いますね。ジョッキーが乗っていて、気性的にもそんなに乗り難しい感じではないと思うので。
-:東京の2400は前回に続いての挑戦となります。おそらく前回のような競馬になるかとみています。
額:今のところ競馬が確立しているという程じゃないですけど、ハナを切って、というスタイルがあるじゃないですか。その上、スタミナと持続力を活かして、という競馬に持ち込めたら良いなと思いますけどね。ハナにこだわりはないと思いますけど、ただ、メンバーを観る限り、行く馬がいなさそうですね。
-:春の当面の目標はダービーだったと思います。そこに向けての意気込みは何かありますか。
額:当日の雰囲気は、初めてだからどんなものか分からないですけど、極力、良い緊張感を持って臨めたらと思いますし、もちろん楽しみも持っていますね。
-:既に緊張はされていますか。
額:今のところは大丈夫です。でも、当日は分からないですね。こうやって取材をやってもらっていますけど、やっぱりダービーは違うんだなと思いますよね。1週間前から取材があったりしていますし、先週も1つ取材を受けたんですよ。だから、やっぱりダービーは全然違うなと。みんな目標にしていますからね。
-:額田さんにとってもこだわりがあるレースですか。
額:そうですよね。2歳馬を担当させてもらって、やっぱり目指すところですよね。それは毎年のことですからね。何年か前に、ロイカバードという馬をやらせてもらって、重賞3着が2度あったり、あとちょっとで出られなかったです。あの時はやっぱりダービーに出走させないといけない馬と思っていましたから…。でも、あとちょっとで出られなかった結果、色々考えさせられましたからね。
-:ロイカバードのオーナーとリオンリオンのオーナーはご夫婦ですね。
額:そうです。そういった意味でも、恩返しができればと思いました。
-:先生はどう評価されていますか。
額:勝った時は、多分ホッとした方が大きいんじゃないかと思うんですよね。嬉しいというよりは、そういう感じがしました。
-:2400は合っている舞台ですね。
額:そうですね。それに、ちゃんと夏に成長したら秋の菊花賞も楽しみですよね。ジョッキーによれば、京都の下りは上手に走っていたらしいですよ。
-:ありがとうございました。また、夏の北海道や菊花賞の前なのか、お話を聞かせてください。
プロフィール
【額田 洋介】Yosuke Nukada
高校時代から乗馬を始める。卒業後、福岡の実家近所の乗馬クラブで手伝いをしていた関係で、ノーザンファームを紹介してもらうことに。牧場勤務当時はゴールドティアラやブロードアピールなど松田国英厩舎関連の馬達と触れ合う。
競馬学校卒業後は鹿戸幸治厩舎に所属し、解散の流れで松永幹夫厩舎に異動。開業時からのスタッフとして厩舎の屋台骨を支えている。最近では、シャルール、ロイカバード、ナンヨーイザヨイなどを担当してきた。