クラージュゲリエ・サトノルークス・ダノンチェイサー 3本の矢を放つ名門 池江泰寿厩舎
2019/5/22(水)
-:サトノルークス(牡3、栗東・池江寿厩舎)はいかがでしょうか。戦歴を見ると、重い芝や時計が掛かる方が合うのかなという感じがしたのですが。また、重い血統というか、お姉さん(タッチングスピーチ)は上がりが掛かったレースで好走したイメージがありました。
兼:そんなことはないですね。どちらかと言うと、綺麗な馬場状態の方が現状は合うかな、という感じですね。むしろパワーという意味で劣るかなと。
-:走りは綺麗な感じがしたのですが。
兼:やっぱり綺麗なところを走らないと、まだリズム良く運べないと、力を出しきれないところがありますね。
-:では、当初道悪で勝てたのは根本的に能力が抜けていたということですか。
兼:早めに勝てたのは能力ですね。完全に子供みたいな体つきで、まだまだこの馬は今後が楽しみになるような感じですね。
-:年末の阪神で勝った時も、その時たまたま競馬場に行ったのですが、他のジョッキーが「けっこう、馬場が緩い」みたいなことを言っていました。それを考えても、どちらかと言うと、そういうタイプなのかなと感じがしたのですが、そういう訳ではないのですね。
兼:どちらかと言うと、まだ現状は力が付き切っていない、遅咲きの面があるので。
-:姉のタッチングスピーチなんかも、ローズSでけっこう強い勝ち方をしたりしていましたけど、結局は遅めでしたからね。素質的に感じる部分はありますか。
兼:3連勝した時は、正直まだ子供っぽくて、この状態でこれだけ走れるんだっていうのは、素質を感じるところではありますね。競馬も上手いですもん。ただ、その競馬の上手さは、この前はさすがにG1となって、自分の思ったようなところにいけなかったので、経験の差もあったと思います。もうちょっと持ったような立ち回りが出来たら、もう少しやれても良かったかもしれないですけどね。
-:この馬なんかは、馬体重という意味では、まだまだ増えても、という感じですかね。
兼:そうですね。もっと欲しいところですよね。まだ肉付きもあってもいいです。
-:精神的な部分はどうですか。
兼:落ち着いてはいますけどね。一旦、短期で放牧を挟んで、前走の皐月賞前よりも、コンディション自体は良くなりつつあるんじゃないかと思っています。
-:先生のコメントを見ていると「ダービー向きだ」ということでしたね。
兼:そうですね。ルークスに関しては、ゆったりとした成長スピードなので。
-:最後に、ダノンチェイサー(牡3、栗東・池江寿厩舎)についてお願いできますか。
兼:前走(NHKマイルC4着)はあの不利が痛かったですね。4コーナーを回ってきて、直線に向いて、本当に完璧な感じだったんですけど…。しょうがないですけど、痛かったですね。
-:でも、ここの2戦は予定していた通りですね。
兼:そうですね。NHKマイルCからダービーというのは予定通りですね。
-:過去のレースを観ていても、福島(きんもくせい特別2着)など強い内容を見せていました。未知の部分が大きい馬だと思っています。
兼:負けはしましたけどね。もともと前進気勢が相当強いところがあって、担当者も工夫して調教して、考えてやってくれているので、だいぶ良くなってきていますよね。
-:2000で下ろして、1番人気で4着という結果だったと思いますけど、本質的にはいかがだったですか。
兼:マイルにあると見ていましたね。本当はマイルの方が良いでしょうけど、前半上手く体力をロスすることなく、直線を向けば…。
-:2400より長い馬というのはあまりいないでしょうし、今のままだったら、ちょっと足りなくても大丈夫かなと。
兼:そうですね。軽い、スピードを持っている馬に関して言えば、現状の馬場は向くのかもしれないですね。2400が、本質的なところで合わないところもあると思いますが、上手いこと体力をロスすることなく、直線に向ければいいですね。
-:ダノンチェイサーの瞬発力という面ではいかがですか。
兼:割とあると思いますけどね。長く脚を使えるタイプといえど、マイルを走るスピードがある訳ですからね。とにかく前半シッカリ体力を残して、ロスなく運べて直線に向ければ、というところですね。
-:この馬が大きく崩れたのは新馬戦ですが、その敗因はどうみられていますか。
兼:2000mということもありましたし、まだ馬が出来ていなかったということもありました。それと背中や腰に頼りない部分があったのですが、徐々に良くなってきている感じはありますからね。その背腰が悪い中で、道悪な形で力も必要でしたでしょうし、それで徐々に力が付いてきましたから、今の馬場条件では一発あるかもしれないですけどね。きさらぎ賞の頃からだいぶ走るフォームも良くなってきましたし、良い感じで成長してこられたんですけどね。
-:最後にまとめの言葉をいただけますか。
兼:今年は3頭ということで、どの馬もそれぞれの個性があって、魅力があって、どういうような競馬をしてくれるのか、楽しみですし、頑張って欲しいですね。この舞台に立てるというだけでも大変なことなので。本当に生まれた時から色々苦労があった訳ですから、頑張って欲しいですね。
プロフィール
【兼武 弘】Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗りを経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。