マスターフェンサー 最高峰の舞台でも泰然自若で健闘 快挙目指す
2019/6/2(日)
マスターフェンサー・角田晃一調教師インタビュー(1P)はコチラ⇒
-:戦前から「距離は延びた方が良い」と語っていただいていましたが、今回は1周グルッと回る大きなコースになります。相手関係はまだ分からないと思いますが、前回を踏まえていかがですか。
角:前回よりも仕上げの時間に余裕がありますし、距離も問題はないと思います。ただ、唯一挙げるとすれば、大きい競馬場だけど、ゴール板が真ん中くらいにあるんですよ。だから、チャーチルダウンズよりも最後の直線が短いので、そこも踏まえて、4角では良い位置に追い上げてくれたらなと思いますけどね。
-:あまりコーナーでサッと加速出来るタイプではないですか。
角:でも、東京でも加速してくれていたんですけどね。なにぶん距離が短かったですので、そこは大丈夫ですね。手前変換も、どちらかと言うと不器用な馬なのですが、普通キャンターの時や追い切りの時もちゃんとシッカリ加速してくれていたので。
今度はベルモントでジョッキーに追い切ってもらう予定なので、そこも踏まえ、確認をしてもらおうかと思いますし、良い結果を期待したいですね。輸送から全部クリアして、無事に出走させることが調教師の務めですから、人事を尽くしていきたいですね。
-:前回は日本でも馬券が発売されましたが、まだ伏兵のムード。今回はアメリカの環境を経験して臨むレース。上積みが期待されます。
角:興奮する競馬でしたし、あの雰囲気の中で、堂々と自分の精神状態を冷静に保って走ってくれた馬は立派だなと思いますね。騒然とするといいますか、すごかったですから、あの中でイレ込まずに、普通に行ける馬がいるのかなと思ったほど。本当に平気な感じだったので、イレ込んでもなかったし、本当に大したものだなと。
-:観衆や歓声に対する反応はどうでしたか。
角:こちらだったら少なからずあったかもしれないですけど、向こうに行ったら、前日のケンタッキーオークスの時も、お客さんが馬房の目の前まで入ってきているので、ざわついて影響して不思議ではないんですよね。それでも、寝ているくらいだったので、その辺も含め、一言で言えば「逞しいな」と思って。イレ込んで暴れたり、そういうことも一つもなく。
-:競馬場の雰囲気はいかがでしたか。
角:良かったですね。おそらく日本で観ていると伝わらないんじゃないですかね。行った人しか分からないと思いますね。1週前くらいからずっとケンタッキーダービーに向けて、ドンドン雰囲気が高まってきていました。調教に関しても、ケンタッキーオークスとケンタッキーダービーに出る馬専用の時間帯があって、限られているので。
-:ジョッキーは厩舎のジャージを着て、調教に乗られていましたね。レース前の調教の段階から着ていらっしゃったので、溶け込んでいらっしゃるのかなという感じがしたのですが。
角:そうみたいですね。僕はそんなのは気付いていなかったんですけど、スタッフが持っていて、着させたみたいですね。フランス人なんですけど、騎乗の当たりも柔らかいから、やっぱりすごいなと思いました。(クリストフ)ルメールも仲が良いみたいで「レース前に話をした」と言っていましたよ。ルメールも「僕と一緒で、柔らかい」と言っていましたね。
▲鞍上のジュリアン・ルパルー騎手
ルメールも「ケンタッキーダービーは乗ったことがない」と言っていましたね。だから、みんな憧れのレースですよね。みな世界中から来るので、なかなか乗る機会には…。それこそアメリカの生産だけで40000頭くらいいて、その中の20頭の中になるわけですからね。日本でも7000くらいしかいないですからね。確率から考えたら、向こうの方が厳しいですよね。日本ダービーにジョッキーが乗りたいというのと一緒で、あの環境を経験したら、毎年行きたくなりますからね。
-:角田先生もジョッキーとして活躍されて、調教師にも転身されて、幾多の経験されている方が、それくらい言われるということは、やっぱりすごいのですね。
角:生産者や関係者がみんな目標にしているレースなのでね。だから、三冠のその後のレースはフルゲートにならないですし、ケンタッキーダービーだけですからね。ケンタッキーダービーだけがポイント制で出走馬が選ばれるわけですから。
-:「スポーツの中でも最も偉大な2分間」と称されるそうですね。
角:オーナーやジョッキーのインタビューもずっと流し放しでした。レースが終わった後、2日経って、ダラスから帰ったのですけど、空港の中のバーでも、騎乗停止の件がずっと流されていたんですよ。馬が蹴るんじゃないかと思うくらい、至近距離の人のアーチの中、ツインタワーの真ん中を通って、パドックに行くのですが、厩舎からずっと外ラチ沿いを、お客さんの中を歩いていって…すごい声援でしたね。その中をずっと通って、ツインタワーの中でも、建物の2階からもみんなすごい声援で、その中でも馬が冷静になっていたというのは素晴らしいことだなと思いますね。どちらかと言うと、人間の方がドキドキするくらいですからね。アメリカに行ったら、分かると思いますよ。是非いってみてください。
-:経験してみたいですね。
角:なかなか経験出来ないで環境ですからね。まだ、私も日本ダービーに管理馬が出たことがないので、なかなか比較はできませんが…。
-:角田先生は騎手として日本ダービーを勝たれていることは周知の事実。「調教師」としての「ダービー」は向こうの方が先だったのですね。
角:そうですね。吉澤オーナーも初めてのダービーだったようですからね。でも、あれだけ末脚が伸びますし、ジャスタウェイも海外で活躍している馬なので、そういう血を引き継いでいるのかと思いました。動じない、精神面での強さは大事です。馬の能力以前に、やっぱり能力を出し切れる精神、身体の強さは必要だとも感じました。いくら日本で能力があっても、海外で能力を出せない馬がけっこういると思うんですよ。冷静にあの中で走れる馬はなかなかいないですよ。
-:人間でも緊張して、力を出し切れない人もいますからね。
角:馬も人間も硬くなったりしますからね。普通に歩いていましたかからね。
-:レース運びという点では、まだまだ良くなるところはありますか。
角:まだまだ競馬が大雑把なので。後ろの方から行って、終いビュッと外を回ってくるばっかりでした。そこは調教で工夫したりして、一歩目からキャンターで真っ直ぐ出るように、ゲートからもするようにしていました。少しずつ良くなってきているんですけどね。向こうのスタッフも頑張っていますしね。
-:スタッフは元ジョッキーの高野容輔さんともう一人の方で。
角:吉澤ステーブルから来た、若いスタッフですね。ケンタッキーダービーも無事に走ってこられて、次を期待させるような内容だったので、長期滞在になったんですけどね。
-:希望の見える、次に繋がるという内容でしたからね。
角:そうですね。無事にケガなく、ゲートまで行ってくれれば、何があるか分からないのでね。気を引き締めて、ウチの高野にはやってもらいたいと思いますしね。
-:なおかつ結果が前回よりも良ければ。
角:やっぱり勝たないと。この世界は結果第一ですからね。ケンタッキーダービーの2着と1着じゃ、相当な違いですし、1着になって降着になったら…本当にあれはジョッキーもやるせなかったと思うんですけどね。あの時はなぜか確定しないなと思っていました。着順を知りたかったのに、5着までしか掲示されていなくて、“6か7か8着か分からないな…”と思っていました。リプレイ映像は流れていましたけどね。5着までだったら、優先的にベルモントSに出られるはずでしたから、着順も気になっていました。
-:今回、先生はいつから行かれるのですか。
角:レースの週の平日からから向かいます。
-:しかし、これだけの走りをみせても、次で勝ち負けできない場合、日本に戻ってきたら、あまり賞金がない状態に戻ってしまうのですね。
角:そうですね。勝ったら分からないですけどね。まずは目の前のレースに集中して、出走させることなので、後のことは後のことですね。
-:ありがとうございます。帰国後の話も伺えればと思いますし、その時は晴れやかな話題になっていることを祈ります。
角:ありがとうございます。頑張ってきます。
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プロフィール
【角田 晃一】 Koichi Tsunoda
栗東の渡辺栄厩舎所属として騎手デビュー。89年のデビューイヤーに43勝を挙げ、同年のJRA賞で最多勝利新人騎手として表彰されると、翌年のエプソムC(サマンサトウショウ)で重賞初勝利。3年目には桜花賞(シスタートウショウ)で初G1制覇。その後もジャングルポケットでダービーを制覇など、ヒシミラクル、フジキセキ、ノースフライトら、幾多の名馬と共にG1通算10勝をマーク。JRA通算8322戦713勝を挙げ、一時代を築いた。
2010年をもって騎手を引退すると、2011年3月から厩舎を開業。13年のファンタジーSをベルカントで制して重賞初制覇。その後もアレスバローズ、イベリスといった重賞ウイナーを送り出している。