今村聖奈騎手インタビュー【第1弾】更に上へ 1年目で得た課題と収穫
2023/4/30(日)
デビュー初年度JRA51勝。新人として歴代4位の勝ち星を挙げ、各メディアにも大きく取り上げられた今村聖奈騎手。7月にはCBC賞で重賞初騎乗初勝利を挙げるなど、旋風を巻き起こした。注目度が日に日に高まる中、期待の若手ジョッキーが得たのは多くの課題、そして多くの収穫だった。2年目を迎え更なる飛躍を目指すアスリートの本音に迫る。(取材日:4月24日月曜)
-:まずは最初に、ゲヴィナーで京都競馬場初勝利おめでとうございます!
今村聖奈騎手:ありがとうございます!
-:京都競馬場は幼少期から行かれていたと思いますが、実際乗ってみていかがだったでしょうか。
今:初めて下り坂を体験しましたし、阪神競馬場とは4コーナーも違う分、新人の気持ちでレースに臨めました。あとダートの直線が長く感じましたね。もう少し短いと感じていたのですが、直線向かい風の影響もあったかもしれません。
-:逆にイメージ通りだったところはありますか?
今:3コーナーの下り坂のスピードが上がるところですね。ただ下り坂はスピードに乗りやすいので、脚の使いどころが難しいと思います。
-:ゲヴィナーの逃げはプラン通りだったのでしょうか。
今:レース前のプランとして逃げることも1つの選択肢にありました。ハナに行けなかったら馬群の中で我慢させることも考えていましたが、行ける追い切りの時から凄く感触が良かったんです。
あとは2年のブランクがどうかだけでした。このクラスにいる馬ではないと感じていましたし、4コーナーで後ろからつつかれた時の反応も良かったので、これならいけると思いました。
-:京都の外回りコースはこれが初騎乗でしたが、実際乗ってみて3、4コーナーは他の競馬場とはどう違いましたか?
今:坂を下った時にスピードに乗る分、遠心力で外に振られがちになります。外に振られないように工夫しないといけないと感じました。ただ、今回ゲヴィナーで勝たせていただいたことで、私自身弾みになりますし、今後いいイメージを持って京都競馬に臨めると思います。
-:話は少し変わりますが、京都競馬場は幼少期から行かれていたのでしょうか。
今:小さい頃からスタンドに通っていましたね。武豊さんも好きで、父(今村康成元騎手、現飯田祐史厩舎調教助手)が当時飯田明弘厩舎に在籍していたのですが、応援も兼ねて小学生の頃から一人で通っていました。
-:末恐ろしい小学生です……
今:当時飯田明弘厩舎にはキョウワジャンヌ、メイショウマンボ、メイショウウズシオとオープン馬がいた頃ですね。馬も好きで、マニアックな血統も好きな小学生女子でした(笑)
-:そんな女の子が見事競馬学校に合格、栗東・寺島良厩舎の元で、騎手の道に進むことになりました。
今:関東所属なんていう話もあったのですが、縁があってお世話になることになりました。1年生の最初の厩舎実習は1週間なのですが、始めはおとなしい馬から乗ることになったんですけど、1週間の間にどんどん馬がレベルアップしていって、最後はテルペリオンやキングズガードというオープン馬にも乗せていただけたんです。いきなり凄くいい経験をさせてもらいました。
-:充実した厩舎実習となりましたね。
今:そうですね。寺島厩舎はいい馬が多くて、パワーのある馬も多いんです。力をつけさせてもらいました。
-:競馬学校を卒業した昨年は、1年間で中央、地方合わせて55勝を挙げられました。この数字に関して率直な感想を聞いてみたいです。
今:デビュー時を考えれば出来過ぎだと思うところはありますが、それ以降の馬質の高さ、環境面を考えると取りこぼしも多く、もっと勝たなければいけないと思います。ただ、いい馬に乗せてもらえたからこそ自分が成長できたところもあります。
-:順調に勝ち星を積み上げた中、11月は1勝と少々勢いが衰えた時もありました。
久々の勝利となった11月26日阪神2Rタイセイランナー
今:11月はローカル開催ではなく阪神、東京と本場で乗せていただいたのですが、本場に戻ればいい馬ほど上のジョッキーが乗るのは当然のことですし、チャンスをモノにできなかった1カ月だったと思います。
ただこれは言い訳ではなく、4kg減から3kg減になったタイミングで秋の新潟開催が終わり、本場での騎乗となったことは大きかったと思います。
-:なるほど、1kg減のタイミングですか。
今:10月の新潟開催のうちに3kg減で1つでも勝てていれば自分の中でも気持ちの面などが変わったと思うのですが、11月に3kg減になってから勝てなくなったことで、1kg増となった影響を言われることも多くなりました。
※10月29日の新潟12Rで中央地方通算51勝に到達し、それまで4kg減だったところ、11月から3kg減に
-:ほんの1kg、されど1kgということでしょうか。
今:そうですね。これが"1kgの壁"と思いたくもなかったですし、自分に言い聞かせてもいたのですが、葛藤とは言わないまでも思うところはありました。同期の角田大河も1kgの差は大きいとよく言っていますね。それもあって、今は更に1kgアドバンテージがなくなった時のことを考えて乗っています。
※女性騎手は50勝以下は4kg減、51~100勝は3kg減、騎手免許取得後5年以上、または101勝以上挙げると、一般競走は永久的に2kg減となる
-:それほど本場はハードなのですね。
今:先輩ジョッキーの皆さんは技術があり過ぎて、簡単に行かせてもらえないんです。動かせる技術があるんですよね。安定感が凄いんです。四位(洋文)調教師にも「聖奈、本場は難しいだろう」と言われました。
-:本場で騎乗するようになった中、年末のホープフルSでG1初騎乗を迎えました。騎乗依頼をもらった時の思いを教えてください。
G1初騎乗となったホープフルS
今:早くG1に乗りたい気持ちもありましたし、秋以降のG1に乗るために夏の小倉までに30勝することは自分の中で目標でした。そうした中でスカパラダイスに乗せてもらえるかもしれないと聞いた時は、モチベーションも更に上がりました。寺島先生には本当に感謝しています。
-:実際騎乗してみて、G1の雰囲気は違いましたか?
今:重賞でもスタンドの雰囲気が変わるので、G1だとこれ以上のものがあるのかなとは思っていたのですが、特別でしたね。ちょうどスタンド前のスタートで、それまでスタンドで感じていた「うわぁ、G1だ」という感覚を実際コースで馬に乗っていて感じられたことで、またG1に乗りたいという気持ちがより強まりましたね。更にモチベーションが上がりました。
プロフィール
【今村 聖奈】Seina Imamura
2003年11月28日、滋賀県生まれ。父は元ジョッキーで2001年の中山大障害をユウフヨウホウで勝った今村康成氏(現飯田祐史厩舎調教助手)。18年、競馬学校に幼馴染の角田大河騎手、大久保友雅騎手らと38期生として入学。22年に卒業。3月に栗東・寺島良厩舎所属としてデビュー。
同年3月13日の阪神8Rをブラビオで優勝しJRA初勝利。順調に勝ち星を積み重ね、5月22日に新潟3Rで10勝目を挙げ、女性騎手によるデビュー年最多勝記録(9勝)を22年ぶりに更新。7月3日に小倉競馬場で行われたCBC賞でテイエムスパーダに騎乗し、JRA史上5人目の重賞初騎乗初勝利(グレード制導入後)を果たす。
8月1日には中央地方合わせて31勝に到達しG1騎乗条件を満たすと、12月にはホープフルSでG1初騎乗。最終的にはルーキーイヤーとして史上4位となるJRA51勝を挙げた。
座右の銘は万里一空。トップジョッキーへ向け努力を怠らない、馬を愛する19歳。