今村聖奈騎手インタビュー【第3弾】オープンの貴重な経験
2023/5/1(月)
2年目の今年、自厩舎の3歳有力馬にも騎乗することが多くなった今村騎手。ベンダバリラビア、モックモックと、ダートで先々が期待されている馬たち、そしてセルバーグとの歩みを振り返っていく。(取材日:4月24日月曜)
-:メロディーレーンの阪神大賞典のお話を伺いましたが、この阪神開催では3月4日、3歳1勝クラスのダート1800mで自厩舎のベンダバリラビアに騎乗し、鮮やかに差し切り勝ちを決めました。
今村聖奈騎手:いい馬なんですが、まだ大型で緩いところがあって、トモが噛み合わないところがあるんですよね。序盤に急かすと脚を使ってくれないんです。追い切りでもじっくり運んでエンジンを温めるイメージで乗らないといけないんです。温まったらズキューン!と伸びるんです。
ゲートはうまく切れませんでしたが、腹をくくって乗りました。ダート1800mであれだけの末脚が使える馬はなかなかいないですよね。直線だけ脚を使わせる競馬でも突き抜ける自信がありました。リズム重視で乗れました。
-:序盤行けない分、脚の使いどころが難しそうな馬ですね。
今:みんなレースを見て、「よく1番人気であれだけ落ち着いて乗れるな」って言ってもらえました。
-:普通後ろからになると焦る時がありませんか?
今:「後ろからの競馬になっても、なんでそんなに焦らないの?」と1年目から言われる時があるんです。でもそのたびに、「走るのは馬やしなあ」と思います(笑)焦ったところで動かしきれないですから。
ベンダバリラビアに関してはずっと調教に乗せてもらえていたことで馬を分かっていた部分もあったと思います。5月の京都を使うと聞いていますが、楽しみな存在です。
-:ベンダバリラビアが次走挑んだ3月25日の伏竜Sでは、同じく寺島厩舎所属のモックモックに騎乗して2着でした。1400mの外枠だった前走とはまるで違い、1800mの内枠という条件でしたね。
今:あの馬は跳びがきれいで芝でもいけるんじゃないかと思っている馬なんです。ダートスタートだと現状あまりスピードの乗りが良くないところがあるので、ダートスタートの中山ダート1800mで内枠から前に行けるのか疑問に思っていたんです。
そして調教でも持っていかれるところがあったので1800mという距離もどうかと思っていました。
-:実際レースは後ろからとなりましたが、直線上がり3Fメンバー中最速の末脚で追い込んで2着でした。
今:距離は持ちましたね。この馬、めちゃくちゃいい馬なんです。ビックリするくらい気持ちのいい背中をしています。それだけに骨折が残念です……。
※レース後左前種子骨を骨折したことが判明し長期休養入りへ
-:伏竜Sの翌日、3月26日には阪神のオープン、六甲Sでセルバーグに騎乗しました。昨年の秋から騎乗し始めて、これが5回目のコンビ。これまで2勝を挙げています。
今:乗り難しい馬ですね。でもあの馬のおかげで自分の経験値を上げてもらえたと思います。以前大逃げしていた馬なのですが、ゲートが遅いところもあって……。初めて乗ったのは昨年10月なんですが、その時も中京の1600mだったので簡単には行けないと思っていました。
実際返し馬でもテンションが高く、行けたら行くけど、行けなかったら我慢させようと思って乗ったんですが、めちゃくちゃ難しい馬でしたね。先輩ジョッキーの皆さんにも心配されるくらいだったのですが、我慢した分だけ直線弾けたので能力が相当ある馬だと感じていました。
-:今年の1月29日、中京の2勝クラスではそんな難しいセルバーグで、2番手から折り合って運んで見事1着でした。
今:この馬に乗っているうちに、自分の中で自信もついてきたんです。馬も成長した分、色んな競馬ができるようになりましたよね。
-:そその次走、3勝クラスの武庫川Sは岩田望来騎手で逃げ切り勝ち。続く六甲Sは今村騎手に手が戻って、内枠から中団に控えて4着でした。
今:(ハナに)行けたら行ってほしいという指示がありました。ただある程度上のクラスになると周りの馬も速く、馬自身いい意味で気持ちが抜けていたと言うか、これなら馬群の中でも競馬できるのではないかという思いがあったんです。 これまでセルバーグに乗ってきて抑えられる自信もありましたし、中団からこの馬のリズムを守って運びました。馬群の中で我慢したこの経験はこの先に繋がりそうです。左回りだと張るところがあるので、右回りのほうがいい馬ですね。
プロフィール
【今村 聖奈】Seina Imamura
2003年11月28日、滋賀県生まれ。父は元ジョッキーで2001年の中山大障害をユウフヨウホウで勝った今村康成氏(現飯田祐史厩舎調教助手)。18年、競馬学校に幼馴染の角田大河騎手、大久保友雅騎手らと38期生として入学。22年に卒業。3月に栗東・寺島良厩舎所属としてデビュー。
同年3月13日の阪神8Rをブラビオで優勝しJRA初勝利。順調に勝ち星を積み重ね、5月22日に新潟3Rで10勝目を挙げ、女性騎手によるデビュー年最多勝記録(9勝)を22年ぶりに更新。7月3日に小倉競馬場で行われたCBC賞でテイエムスパーダに騎乗し、JRA史上5人目の重賞初騎乗初勝利(グレード制導入後)を果たす。
8月1日には中央地方合わせて31勝に到達しG1騎乗条件を満たすと、12月にはホープフルSでG1初騎乗。最終的にはルーキーイヤーとして史上4位となるJRA51勝を挙げた。
座右の銘は万里一空。トップジョッキーへ向け努力を怠らない、馬を愛する19歳。