田口貫太騎手インタビュー第3弾 家族に支えられ更なる高みへ ホープが語る未来
2023/12/10(日)
-:地方競馬にも積極的に参戦されている田口騎手ですが、お休みの日は何をされているのでしょう?
貫:僕まだ車の免許を持ってないのでしょっちゅう遠出はできないですが、栗東の近くにいとこが住んでるんです。いとことよく遊んだりしますね。普段はあまり家から出ないです…。
車の免許は今取ろうと頑張ってるのですが、まあ…時間が掛かりますね(笑)。なかなか通えなくて…。
-:ジョッキーはまず土日行けないのが辛いところですね。
貫:そうなんです、一週間のうち、平日に2、3回いければいいほうなんです。地方の交流に騎乗させていただくこともあるので教習所の予約も取れなくて。時間を見つけて通ってます。将来的にはいい車に乗ってみたいですが、今この車が欲しい、なんていう感情はないですね。
-:ちなみにジョッキーになって大きな買い物をされたりしたことはありますか?
貫:いとこにテレビを買ったくらいですかね?いとこの家のテレビがもう3、4年くらい故障していて、画面に黒い線が入ってたんですよ。いとこは競馬の時もテレビの前でめちゃくちゃ応援してくれているんですが、ゴール板のところがちょうど黒かったんです(笑)
この映像見てもなんも面白くないやん…と思って、これはアカンと。それで最新の、大きなテレビを買いました。今はゴール板がしっかり見えるテレビで応援してもらってます(笑)
-:田口騎手ご自身が欲しいものはないのでしょうか。
貫:僕、本当に物欲がないんです。姉弟の中でも一番なくて。自分でも何が欲しいんやろ…と思ってしまっていて、普段から足りないものを補充するくらいなんですよね…。
-:休みの日に、中学までやられていた野球をプレーしたりはされないのですか?
貫:厩務員さんたちに誘われるのですが、そこでケガをしてはいけないのでなかなか…。
-:ちなみに岐阜出身ということはやはりドラゴンズファンなのでしょうか。
貫:僕、ジャイアンツファンなんです(笑)家族揃って巨人ファンで。でも僕、昔はめちゃくちゃ好きだったんですが、最近プロ野球はそうでもなくて。熱が冷めたと言いますか…。
昔は夏休みなんか朝から甲子園の高校野球を見て、夜はプロ野球の試合を観て、最後はプロ野球ニュースを見て寝るっていう生活をしていましたが、最近はもう…。日本シリーズくらいは観ますが、競馬学校に入って競馬の方向を向き始めてから、野球より競馬になりましたね。
野球は今でも観に行きますよ。今年もバンテリンドーム(名古屋)に中日戦を観に行きましたし、甲子園に阪神ー巨人戦を観に行きました。阪神が優勝する前日、佐藤輝明さんに満塁ホームラン打たれた試合を観に(笑)。
記念すべきOP初勝利・ギャラクシーSのプレゼンターはまさかの"宿敵"阪神タイガースの坂本誠志郎選手
-:野球以外に趣味はありますか?
貫:基本、色々スポーツを観るのが好きなんです。バレーボールもバスケットボールもよく観てます。生で観たことがあるのが野球とサッカーだけなんで、バレーやバスケ、ラグビーなんかを生で観たいですね。週末が競馬なのでなかなか行けないんですが。
あと最近ゴルフを始めました。厩舎コンペとか仕事に繋がるじゃないですか。めちゃくちゃ下手ですけど、打ちっ放しに行ったりして。幸さんや浜中さんは本当に上手いです、異次元です。
-:1年前の今頃は競馬学校にいたわけですが、今こうして厩舎コンペに行ったりする自分を想像できましたか?
貫:まったく想像できなかったです。よく「(今のジョッキー生活が)イメージしていた通りですか?」と聞かれるんですが、イメージすらできなかったんで。
-:話は変わりますが、そもそも元ジョッキーのお父様とは競馬の話はされるのですか?
貫:しますね。ただ父は「こうしろよ」とは言わないんです。「どうしてこうしたの?」と聞かれます。そこで自分の意図を伝えて、その上で「こういう選択肢もあったんじゃない?」と提案されるんです。おかげで自分の中で引き出しが増えていく感覚があります。
外から映像で見るのと、自分で乗っている感覚ではやはり全然違うものですが、傍から見たらこう思われているんだなと参考になります。騎乗依頼してくださる方は傍から見てくださっている皆さんなので、傍から見てくださっている皆さんの意見はとても参考になります。
父は自分の意見もしっかり聞いてくれますし、その上で色々な提案をしてくれます。困った時に相談できる信頼できる父がいてありがたいです。
-:田口騎手の場合、元ジョッキーのお母様と騎乗の話ができる立場ですよね。
貫:でも母とはレースの話はほとんどしないんですよ。頑張ってねとは言われますが。気を遣って、一歩引いたところから見てくれているのかなと思います。
レースの話はほとんどしませんが、笠松で騎乗する際は、母が手作りのお弁当を預けてくれているんです。直接会いはしないんですけど、力をもらっています。
-:お母様と言えば、昔の資料を探したところ、お母様がデビュー時の目標の騎手として挙げられていたのが"安藤勝己さん"でした。
貫:そうなんですね(笑)。母は本当に勝己さんのことが大好きなんです。母がジョッキーになる頃にすでにリーディングだった勝己さんは本当に凄いと思います。
母子共に憧れの存在である安藤勝己元騎手(08年有馬記念:ダイワスカーレット)
-:笠松競馬場で騎乗する際は"里帰りしている"感覚になるのでしょうか。
貫:やっぱり好きな競馬場ではありますね。小さい頃から身近にあった競馬場で思い入れもあります。面識のある方も多いですし、笠松に乗りに行くと、皆さんが「貫太ぁ!貫太ぁ!」と声を掛けてくれるんです。やっぱり嬉しいです。
-:芝とダート、自分から見てどちらが得意と思うところはありますか?
貫:どちらが好きということはないですが、よく勝っているのはダートだというイメージはありますし、データにもそう出ていますね。笠松を始め地方でも乗せていただいて、単純にダートのほうが多く乗っているのもありますが。
-:田口騎手はここまで24勝中(10月22日時点)、逃げ切りは4度だけでした。ルーキーイヤーのジョッキーとしては珍しいように思いますが、減量が取れてからのことを意識しているのでしょうか。
貫:減量もある分、もちろん逃げられる馬は行きます。そういうオーダーは多いです。でも馬のリズムを崩してまで行きたくないという思いは自分の中にあり、馬のリズムを大事にしていく中でそのような成績になっているんだと思います。
デビューしたての頃は急かしてしまいリズムを壊してしまうことがあり、反省することもありました。最近馬のリズムに合わせながら乗れるようになってきた気はしています。
減量が取れてからが勝負と思っているので、馬群の中に入ってロスなく立ち回って騎乗することは意識していますね。先輩たちからも意識したほうがいいと言われているので。
-:フナデの未勝利勝ち(8月26日小倉1R・2歳未勝利)のような形ですね。
貫:あのフナデのレースは自信を持って乗せていただいたのですが、新馬戦より道中の進みが悪かったんです。それでもリズム良く乗ったらハミを取ってくれました。
たぶん外を回しても勝てていたとは思いますが、少しでも勝つ確率を上げるなら一旦待って、そこから追い出したほうが弾けるなという手応えだったんです。絶対前を交わせる手応えがあった影響もあります。
-:その今年の夏の小倉で田口騎手がニホンピロキーフに乗って1勝クラスを勝たれましたが、その前走、8月頭の新潟1勝クラスで2着になった時、「1勝クラスの馬ではない」という田口騎手のコメントがあり、実際すぐに勝ちました。ファンからすると他の馬とは何が違うのかと思うところですが、どのような部分に違いを感じられたのでしょう。
貫:これまで乗せていただいた1勝クラスの馬とは背中の柔らかさが違いましたし、調教では凄い時計を出す馬なんです。1勝クラスにいる馬ではないと感じましたね。初めて跨った時からいい馬だと思っていました。
-:デビューして半年以上経ちましたが、『いい背中かどうか』はだいぶ分かってきたのでしょうか。
貫:もちろん多くの関係者の皆さんにこれだけたくさんの馬に乗せていただいて、デビューした当時より返し馬で馬の雰囲気であったり、歩様の硬さであったり、走りそうかどうかの感覚は感じられるようになったと思います。
-:田口騎手がこれまで乗られてきた馬で思い出深い馬はいますか?
貫:それこそニホンピロキーフは新潟で負けた際、長い直線で自分が早仕掛けして差されてしまう一番やってはいけない競馬をしたんです。それでも大橋先生は継続して乗せてくださって、小倉で勝ち切れたのは良かったです。
-:印象的な勝ち方だったレースはありますか?
貫:夏の小倉の最終日の2600m(9月3日小倉12R・3歳上1勝クラス)のジューンレインボーですね。芝の長いところで勝ったことがまだなかったのですが、馬とのリズムを大事にして乗ることができましたし、とても印象に残っています。
-:自分の騎乗でファンの皆さんに注目してほしいところ、自分のここを見てほしいところはどこでしょうか。
貫:最後まで、ゴール板まで追う姿は一番見てほしいところですね。
-:今年も残り少なくなってきました。年内の目標を教えてください。
貫:やはり30勝です(12月3日阪神1Rで目標達成)。皆さんにも行けるんじゃないかと言ってもらえているので意識はしています。ただその中でも1頭1頭しっかり向き合っていきたいと思っています。
-:来年の目標を教えていただけますか。
貫:デビュー当初より経験や技術はレベルアップしていますし、その中で今後、3kgから2kg、2kgから1kgと減量が少なくなっていくので、減量が取れても結果を出して、今年以上に活躍できるよう頑張りたいです。
-:最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
貫:いつも競馬場で応援してくださるファンの皆さんの声援は凄く耳に届いています。ファンの皆さんの応援で競馬は成り立っていると感じていますし、これからも競馬場に足を運んでいただいて、応援していただければとても嬉しく思います!
プロフィール
【田口 貫太】Kanta Taguchi
2003年12月10日生まれ、岐阜県出身。父は笠松競馬の元ジョッキー・田口輝彦調教師。母の広美さん(旧姓:中島)も笠松競馬の元ジョッキー。両親共にジョッキーという家庭に生まれ育つ。2017年の日本ダービーをお世話になっている馬主さんと共に観戦し、ジョッキーを志すと、2度目の受験でJRA競馬学校に39期生として入学。
2023年に栗東・大橋厩舎からジョッキーデビュー。3月26日、阪神1RのレッツゴーローズでJRA初勝利を挙げると勝ち星を積み重ね、現在39期生トップの勝ち星を挙げるホープ。趣味は野球などスポーツ観戦。座右の銘は"明日の自分は今日より強く"。最後まで貫きやり通す期待の若武者。