新コンビで連覇を見据えるジェンティルドンナ
2013/11/24(日)
昨年、牝馬3冠を達成、余勢を駆って挑んだジャパンカップでも歴戦の古馬たちをなぎ倒し、年度代表馬となったジェンティルドンナ。今年緒戦はドバイで2着、続く宝塚記念は3着。そして天皇賞(秋)で2着と、勝利に見放されている。名牝であることを証明するには十分な内容とも言えようが、もう善戦はいらない。今回、陣営は鞍上にイギリスの名手R.ムーア騎手を迎えて不退転の覚悟を見せる。昨年、最強の称号を手にした舞台での復活に懸ける想いを、当コーナーではお馴染みとなっている井上泰平調教助手に伺ってきた。
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1週前追い切り後・R.ムーア騎手、石坂正調教師のコメントはコチラ⇒
改めて力を示した天皇賞(秋)2着
-:ジェンティルドンナ(牝4、栗東・石坂厩舎)についてお話を伺います。天皇賞(秋)からジャパンカップ連覇に向けて挑むわけですが、天皇賞は台風の影響で、関西馬が全頭金曜輸送という異例とも言える事態でした。その影響はあったのかなとは思ったのですが、結果的にはいかがでしたか?
井上泰平調教助手:その点に関しては問題なかったですね。金曜日に競馬場に入って、土曜日に角馬場で乗りましたが、いつもと変わらず、飼い葉もしっかり食べていましたし、問題なかったと思います。
-:体重は470キロと、宝塚記念時と変わらない体重でした。
井:調べたわけじゃないんですけど、普段、量っているトレセンの体重計と、競馬場の体重計とは、誤差が少しあるんじゃないかなと思っています。競馬が終わって、帰ってきて、次の週の木曜日に量ったら484キロあったんですよ。470キロで走って、輸送して、帰ってきて、次の週の木曜日に14キロ増えているというのは……。戻りがすごく早いのかとも思ったんですけどね。僕は体調さえしっかりしているならば、別に何キロでもいいわけではありますが。
-:見た目で違和感が無ければという感じで。
井:そうですね。急激な増減がないかは、普段からチェックしていますからね。
「普段、乗っている時はすごく人の言うことをよく聞くし、引っかかるような気性ではないと思っているんですけどね」
-:天皇賞のレースですが、好スタートから、若干折り合いを欠いてしまって、力んでいるような面が見られました。あそこはコーナー4回の2400mに替わるにあたって、問題になる部分かと思います。
井:レースでは乗ったことがないので、競馬に行った時のジェンティルの精神状態というのは分からないんですけど、普段、乗っている時はすごく人の言うことをよく聞くし、引っかかるような気性ではないと思っているんですけどね。
-:その歯車は、どこで狂ってしまったんですかね。
井:普段の調教でもそういう面を見せると思うんですけど、すごく軽いキャンターでも、坂路でも馬場でも併せ馬できましたし、なぜレースでそういう風になってしまったのか、正直、僕には分からないですね。
-:その部分が、負けた一つの要因だったと思いますが、折り合いを欠いた中でも2着まで来ています。
井:ジェンティルドンナの周りに居た馬は、みんな後ろのほうまで下がっちゃっていますからね。それで残ったというのは、改めて力があるんだなと思います。
R.ムーアが追い切りで持ったイメージ
-:改めて僕らはこの馬の強さを感じられたんですが、ジェンティルドンナはやっぱり勝たなくてはいけないし、復活を臨んでいるファンっていうのも凄く多いと思います。今回R.ムーア騎手に乗り替わって、昨日の坂路での1週前追い切りも騎乗していましたが、実際に見てどんな感じでしたか?
井:追い切りでずっと後ろの方を走っていたので、見たのがゴール前の一瞬だけだったんですけど、ジョッキーのイメージとしては、もう少し行きたがると思っていたみたいです。新聞にも乗っていたように「乗り手の言うことをよく聞く、すごく乗りやすい馬だ」とおっしゃっていたので、きっといい感触をもたれたんじゃないかなと思います。
-:追い切りが終わった後、天皇賞のレースは勿論見ていて「引っかかるかどうか構えて乗るんじゃなくて、いつも通りに自然体に乗りたい」というようなコメントをされていました。「あとは彼女のコンディションが戻っているかどうかだね」とも言われたので、別に天皇賞の時は、コンディション悪かったわけじゃないんだけどな。と思いましたけどね。
井:そうですね。今回が今年に入って初めての叩き2走目のレースなので、その辺にも期待しています。
「彼女の心臓は凄いので、逆に皆がしんどい時の方が、上手く乗れれば末脚が生きるでしょうし、それだけの体力も瞬発力もあると思うので」
-:中間、叩き2戦目であっても、レースを使ってからの順調さを欠いたり、疲れが出てちょっと調教を休むだとかも多々あると思うんですけど、ジェンティルの場合はここまでスムーズに来ています。そういうタフさがあるというのは、牡馬に混ざって戦うのにふさわしい馬という感じがしますよね。
井:本当にフィジカルが強いというか、歩様の乱れも見せないですし、テンションが上って手を焼くというのもないですしね。
-:ジェンティルドンナが強い馬だというのは認識しているので、重箱の隅をつつくような質問しかなくて申し訳ないのですが、僕としては2000mよりも2400mに延びたほうが牡馬と戦うには不利というか、やりにくさがあるのかな、という心配がするのですが、井上さん的にはどうですか?
井:僕が思うには、彼女の心臓は凄いので、逆に皆がしんどい時の方が、上手く乗れれば末脚が生きるでしょうし、それだけの体力も瞬発力もあると思うので。
-:スローの瞬発力勝負と、平均ペースで流れた2400m。その2パターンで行くと、どちらがジェンティルに向いていると思いますか?
井:スローよりも、平均的に流れた方がいいと思いますね。
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【ジャパンC】1週前/新コンビで連覇へジェンティル「去年のデキなら」
-:去年のJCは、ビートブラックが引っ張って、2400mにしては平均的に流れたペースで差し切りました。やっぱりそれが合っていますか?
井:どのペースでも対応はすると思います。位置取りによって、絶えず後ろからプレッシャーを掛けられる展開は、どんな馬でも苦しいと思うんですけど、そういうのでなければ、それほど“こういう展開であって欲しい”という注文はないんですよね。道中のスムーズさというか、引っかからないで気持ち良く走れるポジションにさえいれば、大丈夫かなと思います。
-:この間のように引っ掛かってしまうほうが稀だったので、僕らはビックリしてしまいました。レースで走っている時はもう少し落ち着いているイメージでした。
井:そうですね。宝塚の時も後ろから突かれるような形にはなったので。
-:そういうトラウマが残っているんですか?
井:トラウマが残るタイプではないと思うんですけど、結構苦しい競馬はしているなというのは。他の馬たちのように、上手く流れに乗れて、じっくり溜めが聞けば、十分対応すると思います。
-:そういう意味では、天皇賞(秋)を使って、うまくガス抜きが終わって叩き2戦目に繋げられると?
井:そうですね。
-:昨日の1週前追い切り、動きは非常に良かったと思いますが、騎乗するムーア騎手は以前との比較が分からないと思います。栗東の坂路も未経験でしょうから、いい意味で先入観なく乗ってもらえるような気がします。
井:競馬はやってみないと分からないけど、いいイメージは持ってもらえたと思います。
-:昨日の追い切りは、ジェンティルの時計よりも、馬場に向かうまでのコミュニケーションや、フットワーク等が分かってもらえた、ということですね。
井:ビデオだけ見ると引っかかるイメージしかないと思うんですが、実際はそうではないということも分かってもらえたし、非常によかったと思います。
-:あとは結果を。
井:順調に来ていると思いますし、僕たちができることは無事に、順調に送り出してやることなのでね。あとはジョッキーが、ゲートが開いたら色々な判断をされるだろうし、先生の指示もありますから。
-:ムーア騎手は世界のトップジョッキーですからね。
井:きっと上手に乗ってくれると思います。
-:レースぶりを見ていたら、熱い乗り方で「シブいところを突いてくるなあ」というパワフルなタイプですが、パートナーとしては申し分ないと?
井:うちの馬も、その激しさに付いていけるような気性をしていると思いますので、楽しみですね。
ジェンティルドンナの井上泰平調教助手インタビュー(後半)
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