元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
箱だけ馬券
2015/7/16(木)
ここまで来るには社台ファーム様を含め、日本のホースマンたちが世界へと目を向け、努力してきたことが馬の品質向上に繋がっていることだと思います。結果として、今年のセレクトセールでは総売上げ131億7350万円という売上げが品質向上を物語っていると思います。この小さな島国が、海外から少しずつ新しい血を入れ、悩み、挑戦した結果が今回の売上げだったと思います。まだまだ、発展する日本競馬の未来が、明るいものとなることを祈っています。
そんなセレクトセールの前日には福島競馬場で一週間遅れの七夕が行われました。地方開催の重賞ということもあり、競馬場には多くの人が集まってくれた中、 七夕賞では皐月賞1番人気だったグランデッツァが見事な勝利を飾りました。両足屈腱炎という重病を乗り越え、掴んだ今回の勝利は、彦星と織姫が長い間、募らせた思いを爆発させるかのように、走るだけでなく強い姿での復活を期待していたファンは喜びを爆発させたのではないでしょうか。
レースはスタート直後にレコンダイトが他馬に寄られる形となり行き場を無くして後ろからの競馬になる中、ハナを奪ったのは復活が期待されるトウケイヘイローでした。その次に夏馬メイショウナルトがつける展開になり、グランデッツァはそれらを見る余裕の位置取りを取りました。ここが鞍上の川田君の最近乗れているポイントだったと思います。焦ることなくスタートから自然と良いポジションを取ると、小回りを考え、ロスのない競馬を行ったこと、それが正に馬の力を最大限に活かしたポイントだったでしょう。
そのエスコートに導かれる様に4コーナーから抜け出すと、もう独壇場でしたね。これで川田君は中央競馬全10場での重賞勝利へとリーチとなりましたね。昔のように移動が困難でなくなった今、全国各地にトップジョッキーたちが騎乗するのも嬉しいことですし、この様な大記録をまた目にすることができるのかと、ファンの皆様同様、ドキドキしています(笑)。1番人気に推奨されたレコンダイトは小回りコースと福島の暑さにやられた様に見えましたね。阪神、東京と連戦が続いていたことで見えない疲れもあったかもしれません。まだまだ、ここからの馬にも見えますし、立て直して重賞戦線に戻ってくることを願っています。
今週はとうとう終了まで、あと2週となった函館で函館記念が行われます。函館記念といえば、毎年思い出すのはエリモハリアーの3連覇ですが、今年はどんなドラマが待っているのか非常に楽しみになっています。その中でも、デウスウルトには必然と注目が集まるのではないでしょうか。それもそのはず、上記した通り、鞍乗には川田君ということで、七夕の勢いそのままにJRA全10場での重賞制覇がかかっているからです。
力だけで考えれば抜きに出ているのはエアソミュールでしょうね。鞍乗するミルコはトルコ国際招待から帰国後の参戦となるだけにレース勘がいつもより研ぎ澄まされて騎乗してくれるのではないかと思っています。その他にも復活に期待がかかるDr.コパさんの持ち馬ラブイズブーシェも気になるところではあります。有馬記念でも善戦しましたし、暖かい気候で体が柔らかくなり、疲れが抜けてきたかなとの思いも込めてですけどね。函館の地で行われる3つの重賞のうち、一番歴史の長い函館記念を制し、秋に堂々とG1戦線に躍り出るのはどの馬か!今週は函館だけに、BOXの箱だけ馬券で勝負はいかがでしょう!?
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。