元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
熱中症
2015/7/30(木)
さて、その末っ子の幼馴染の佐々木助手が担当するブランボヌールが制した函館2歳Sを振り返りましょう。レースは、1番人気に推奨され3角で早めに仕掛けると、らくらくと後続を引き離して勝利しました。鞍上のホンキーマン改めGLAY岩田君も灰色ではなく白星を量産し、ブッチぎりの函館リーディング獲得となり、函館の全てを制したといっても過言ではないのではないでしょうか。優勝後のコメントでは距離の延長もいけそうだと言っていましたし、函館の洋芝をこなしたパワーも考えると、2歳女王へ、最も近い存在になったと思います。まだまだ能力よりも成長力がモノをいう2歳戦ではありますが、そこには確かな才能が垣間見えたレースだったと思います。
こちらも最終週を迎えた中京では中京記念が行われ、ミルコ騎乗のスマートオリオンが初のマイルを克服し優勝しました。初マイルとはいえ、ミルコの折り合い技術に加え、内ラチに沿って走らせ、直線で押し切るといった戦法は天下一品のため期待はしていましたが、想像以上の走りをしたのではないでしょうか。レースは唯一のG1馬カレンブラックヒルがハナを奪う中、3番手にスマートオリオンがつける配列となりました。しかし、迎えた向正面では気性に難があるメイケイペガスターが外から上がっていったため、ペースが速くなってしまう!と心配しましたが、名手はじっと我慢させることを選びました。ここが匠ポイントでしたね。
本来であれば、外からかぶされるのを嫌い、ペースを合わせていきやすい中、馬の力と馬群をさばく自信からも動かず、万全の体制で内から外へと直線で追い出し見事に勝利しました。前日のレースから荒れた中京馬場の中でも唯一、内を選び、結果を出していたミルコだからこそ通れたコースだったと私は思います。初の夏参戦で、中京リーディング獲得の結果がその技術は確かなものだと裏付けています。2着に入ったアルマディヴァンの藤岡佑介君も見事な騎乗でしたね。斤量を活かし、内から馬群をさばき2着に入ったのは、少し不利もありましたが、彼にとってひとつ成長できる騎乗になったと思います。
函館・中京・福島が終了し、今週からは札幌・新潟・小倉へと開催場が移ります。有力騎手が全国に分かれることで、リーディング争いにも大きな変化がある夏競馬が始まります。今年の有力騎手分布図が欲しいところですね(笑)。まさに陣取合戦のように北、新潟、南の競馬を制するのは、どの騎手かにも注目していきたいです。そんな中、札幌の大地では、早速、重賞クイーンSが行われます。注目は、状態の良さから引退を先延ばしにし、更に力をつけてきたフーラブライドになるのではないでしょうか。春の混合戦でも力を発揮していましたし、陣営としても牝馬だけの対決では負けられないと感じていると思います。そして、レッドリヴェールも同じ考えでしょうね。2歳時に制した札幌で、同じ1800mからもここで復活といきたいところだと思います。そして、その2頭にブランネージュがどの様に食い込むのか非常に楽しい夏の牝馬戦となっています。
新潟名物アイビスサマーダッシュでは、今年もこの馬が注目を集めることになるのではないでしょうか。そうです1000mスペシャリストのセイコーライコウです。夏の本番を前にひとつ叩いたことで、万全の体制で臨んでくるのではないでしょうか。ただ馬齢が8歳ということもあり、競走馬で言えば高齢者だけに熱中症にならず、暑さを感じず、走りきって欲しいと思います。そんな中、私の注目はアースソニックになります。前走でも惜しいところを見せてくれましたし、あのスピード能力には非凡なものを感じますしね。切れ味抜群の末脚を活かせれば、勝利も見えてくるのではないでしょうか。その他ではエーシントップ、夏は牝馬の格言に黒より白は涼しいということも含め芦毛のリトルゲルダや、鞍上変更で新たな魅力を見せ付けるかベルカントに注目していきたいと思います。
皆様、楽しみすぎて、水分補給を忘れないように!熱中症になりますからね。競馬熱の熱さで、競馬熱中症に今年はなろう!!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。