元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
シンジ
2015/9/10(木)
して、競馬界のシンジと言えば、真っ先に名前が挙がるのは藤田伸二でしょう。その藤田君が夏競馬最終週に引退を発表しました。数々の名馬に跨り、結果を出してきた男でもあり、競馬界の風雲児でもあった彼の引退は少し寂しく感じました。引退時の彼の直筆のメッセージでは「エージェント制による騎乗馬の偏り」が一番の問題に挙げられていましたね。エージェントとは、騎乗馬の依頼を騎手の代わりに請負い、騎乗馬が重なった際、複数の騎手を抱える場合は、そちらに回すなどを行う仕事になります。現在では、馬の情報を多く持つ競馬記者がエージェントになることが多く、しかし馬券も購入できるといった競馬関係者でありながら、競馬関係者でないような扱いを受けています。
そんなエージェント制により、有力エージェントの確保が勝利数に繋がるようになり、いつしか、エージェントにより、殆どの騎手の順位が決まってしまうようになりました。昔の競馬であれば、調教に跨ってくれている騎手を可愛がり、そして馬主様にもお願いして、名コンビが誕生していたのですが、今では田中健君とアンバルブライベンや森一馬君とマジェスティハーツというようなコンビが本当に少なくなった気がします。勿論、良い騎手に良い馬が集まるのは必然ではありますが、競馬にはそれだけではない気が私はします。今回の競馬界の伸二が起こした動きでどう変わっていくのか、注目していきたいと思います。
そんな伸二君の引退した週には、夏競馬最後を飾る重賞が行われましたね。小倉2歳Sでは注目通りのシュウジが圧倒的なスピードと競馬センスで勝利し、ロードカナロア以来のスプリント界での衝撃となりました。少しスタートで遅れる場面はありましたが、それをも気にならない程の圧倒的なスピードは本当に脅威でした。
新潟記念では6番人気のパッションダンスが見事、マイネルミラノをゴール前で交わし優勝しましたね。今回は降っていた雨により、重くなった馬場も味方したと思いますが、何よりも騎乗のミルコの技術に脱帽してしまいましたよ。直線に入るまでは内枠を活かし、じっと我慢すると、直線に入り外に出しながらも、他馬に合わせながら追い、更にマイネルミラノに迫る際のムチの持ち替えの技術は超一流だったと思います。
夏競馬の新潟の開幕重賞と最終重賞を手にしたミルコは新潟リーディングにも輝き、表彰式には「I Love 新潟」のTシャツを着て登場した際には、これがファンに愛されるポイントだなぁと改めて名手の技とお茶目さを見られたレースでした。そして、敗れたとは言え、柴田大知君の騎乗は完璧でしたね。その前のレースでも3勝を挙げ、何か覚醒したように見える当騎手には今後も注目していかなくてはと思わされました。
夏競馬の終わりは秋競馬の始まりでもあります。開催を今週から阪神・中山に戻し、早速、重賞が行われますね。中山では京王杯AHが行われ、レッドアリオンが虎視眈々とサマースプリント王者を目指して出馬してきそうですし、中京で輝いたスマートオリオンとオンコンビがどこまでいけるかに注目が集まりそうです。阪神ではセントウルSが行われますね。ここでは馬だけではなくサマージョッキーシリーズの優勝もかかっているだけに注目は岩田君とミルコに集まるのではないでしょうか。
岩田君は覚醒したウリウリにミルコは好相性のアースソニック(ザ石により出走回避になりました)とコンビを組むことになり、岩田君は優勝しミルコが5着以下にならないと優勝できませんが、ここでも岩田君の勝負強さが発揮される気がしてなりません。その二人以外にもマイル王者となったストレイトガールや復活がかかるハクサンムーンなど注目が沢山のレースとなりますが、皆様はどの騎手、どの馬をシンジてみますか?私は分かりません(笑)。まず、シンジという暗号を探してみたいと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。