元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
「 安 」
2015/12/17(木)
それでは先週のレースを振り返りましょう。阪神競馬場では2歳牝馬初のG1、阪神ジュベナイルFが行われ、ルメール騎乗のメジャーエンブレムが見事なまでのレースを見せ優勝を果たしました。ルメールはJRA所属になり初のG1制覇となりましたし、驚いたのは日本語の上達ぶり。4月の騎乗開始時期のインタビューと見比べると本当に見間違えました。その中にはジョークまで入れ込む余裕もありましたしね(笑)。
メジャーエンブレムがまさにロケットスタートを決め、逃げるのかな?と少し不安になった矢先にキリシマオジョウが出て行きました。そこで、一気にレースとしては楽になりましたね。前走では、ハナに行く馬がいないことにより、道中でうるさいところが出てしまい、それでも能力差で勝つか!?と思っていた時に外から差しきられましたからね。それを考えると前に馬を置けたことで落ち着きを取り戻し、しっかりと、あの馬の競馬ができたと思いますから。そして迎えた4コーナーでは前を行っていたキリシマオジョウの脚が上がり、下がるのを冷静に見て、コースを取ると、あとは女王の競馬だったと思います。今回の勝利では、全力を出し切ったという印象を受けなかっただけに、まだまだ可能性は秘めている馬だなと感じさせられたと同時に、伸びしろとしては少ない馬なのかなとも感じました。まぁ、それだけ出来上がっている馬に映りましたからね。
そして、このレースで残念だったのは期待していたアットザシーサイドとアドマイヤリードの馬体が思っていたよりも減っていたことですね。難しい牝馬の、しかも2歳だけに体のコントロールというのは本当に難しいですが、今回は影響がなかったとはいえない結果となってしまいました。ただ、それを含めても来年のクラシックに向けては、まだまだ逆転の可能性も残していますし、能力的には格別に離れた馬はいないだけに今後も楽しみな世代となりました。
その楽しみな世代のチャンピオンを決める朝日杯フューチュリティSが阪神競馬場で行われます。今年はコパノディールが唯一の牝馬として挑戦してくる戦いとなりますが、その中でも、まず注目しなくてはいけないのはエアスピネルになるでしょうね。新馬戦での快勝に続き、前走では評価が高かったシュウジを置き去りしたあの末脚とスケールは、まさにG1馬の品格を持った馬のように見えましたしね。豊ちゃんの前人未踏の国内G1全制覇にも期待して、ここでも本命を打っていいのではないでしょうか。
2番手には、香港で騎乗停止処分となり急遽ライアン・ムーアから武幸四郎に替わったイモータルを挙げたいですね。前走は脚を少し余すところがありましたし、体付きを見ても、周りの馬と比べても良い意味で違いが見受けられますからね。その他には、未知の可能性がジョワドヴィーヴルのような衝撃をくれるかリオンディーズや、新馬戦から評価を上げてきているボールライトニングを推奨しておきたいですね。今年の漢字にかけて、安い馬券になるのか?それとも、冠をかぶった9-1の馬券になるのか?はたまた、ヤスと読んでヤスナリ君騎乗のシュウジになるのか?2歳は成長期、今までの成績とパドックで馬を良くみて、高い馬券を見事的中させてくださいね!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。