元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
勝負所
2016/4/14(木)
それでは競馬の話に参りましょう。先週日曜日には牝馬クラシック第一弾の桜花賞が行われましたね。その中で勝利したのは、ひとつのミスもしなかったミルコ騎乗のジュエラーでした。レースはスタート前、1番人気のメジャーエンブレムがゲートを出ようとし、一度下がったタイミングでスタートとなってしまい、いつものロケットスタートができないなか始まりました。ここで、騎乗のルメールも積極的に出て行けば良かったのでしょうが、1番人気の重圧か控える競馬を選びましたね。すると、それを見た戸崎君がスッと横につけると直線まで厳しい競馬を行いました。この騎乗を見たとき、戸崎君は本当のプロだなと感じましたね。断トツの1番人気があのポジションならば、マークするのは当然ですからね。
そんな中、勝利したジュエラーは4コーナーに入った時、ミルコが一呼吸置きましたね。馬の脚を信じているからの一呼吸が勝利への勝負所だったように感じます。直線に入ると、豊ちゃんのムチが馬の顔に入るアクシデントもありながらも、最後はミルコがゴール直前に馬の首に乗る技術を見せつけ、2cm差で前を行くシンハライトを捉え、見事に前走での雪辱をリベンジしました。まだまだ、次のオークスまで、この2頭の力比べは続きそうですが、本当に良い戦いを見せてもらえたと思います。そして、初牝馬G1を勝利したミルコの娘さんが当日、誕生日だったことも含め、本当に馬でも人にも心を掴む、勝負所を分かっているなぁと感じたレースとなりました。
牝馬クラシックの後は、牡馬クラシック1冠目の皐月賞が今週日曜日、中山競馬場で行われます。今年は例年以上に怪物が揃い、まさに牡馬戦国時代の幕開けではないでしょうか。まず、注目を集めるのがルメール騎乗のサトノダイヤモンドになるのではないでしょうか。パーフェクトボディと呼ばれる完璧な体と共に、里見オーナー悲願の初G1へ向けて、視界良好といったところだと思います。しかし、やはり3強の2頭と違い、戦ってきたメンバーの強さが違うところに心配を覚えます。前走で始めてステッキを使用し、完璧なレースを行いましたが、今回のメンバーで、どうなるかが当馬にとっては試金石に見えます。そして、個人的な意見では、調教を見る限り、この馬は海外の馬場の方があっている気がしています。次に注目を集めるのは、前走で2歳チャンピオンを負かしたマカヒキになるのではないでしょうか。あの切れ味鋭い末脚は見ているものを飲み込んでいきますからね。この無敗の2頭がどこまで、やりあえるのか非常に楽しみにしています。
そんな中、私の本命は2歳チャンピオンのリオンディーズですね。前走では引っかかりながら、とてつもなく速いペースのレースの中、競馬を勉強した当馬を波に乗るミルコが自身5回目の皐月賞制覇へと導くのではないかと思っています。能力に関しては、怪物達の中でもずば抜けていると私は思っています。乗り難しい馬だけに諸刃の剣に成りかねませんが、それでも爆発力のリオンディーズに期待したいです。その他にも、長く追うことができるならばアドマイヤダイオウに、2000mの適性なら一番ではと思っているエアスピネルと挙げられると思います。牡馬頂上決戦を決める勝負所は向正面での馬の落ち着きと、4コーナーの回り方ですよ!熱い戦いを期待して、日曜日は中山競馬場に集合しましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。