元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
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2016/4/21(木)
しかし、国の対応の前に動いてくれたボランティア団体の皆様には、頭が下がる想いでいっぱいです。仕事を犠牲にしてでも助けに行ってくれる方もいたと思います。その中で、私自身も、何かをしなくてはと考えています。考えるだけでなく、行動を。そう思い、動き出します。JRAからは和田騎手が即座に200万円の寄付を実行し、他のスポーツ選手に促す運動をしています。高田騎手、高倉騎手、池添騎手も直ぐに反応し、100万円の寄付を行いました。誰かがやるのではなく、皆でやる。その意識が大事なのだと思います。このコラムでも、少しでも、この様に自己犠牲をしてでも助けようとしている人がいることを分かってもらえたらと思います。
さて、そんな心が苦しめられた週にも競馬は行われました。生き物と多くのことを巻き込む競馬は、なかなか立ち止まることはできませんからね。自分たちができることを、まず行った結果だと私は思います。その中で、牡馬クラシック1冠目の皐月賞が中山競馬場で行われました。当日のコンディションは雨予報も、早々と止んだ雨と台風並の風に騎手も戸惑ったと思います。注目を集めたのは、2歳王者リオンディーズに怪物候補マカヒキ、オーナーに初G1をプレゼントしたいサトノダイヤモンドでしたが、勝利したのは蛯名君騎乗のディーマジェスティでした。
レースはスタートから、リスペクトアースが逃げる中、馬場を考慮したリオンディーズが2番手につけました。強風でペースが読みにくい中、向正面では、あの速さの中、マウントロブソンが更に押していきましたね。これは、元騎手からすれば、リオンディーズを抑えるためだけの競馬に変わってしまったと感じましたね。その後、リオンディーズが強引に外に出すと、受けたプレッシャーにより引っかかったまま4コーナーを向かえました。直線に向いた際には、サトノダイヤモンドに押し込まれたエアスピネルが外に出してきたリオンディーズをよけるためにコース変えが必要になっている時に、大外からディーマジェスティが全てをぶった切り勝利しました。当馬の叔母は、骨折の後、予後不良になりそうなのを藤沢先生がどうにかならないかと色々な人に頼み、何とか命を繋いだ馬でした。その馬の孫が皐月賞で勝つというのは本当に筋書きのないドラマだなと思いましたね。
そして、レース後には何と降着が発表され、エアスピネルとリオンディーズの着順が変わりましたね。元騎手の目線からすれば、罰金だなと思っていたのが、降着、そして騎乗のミルコは4日間の騎乗停止という処分になりました。これには、かなりの疑問が残ります。確かに、斜行をしていましたが、パトロールで見ると接触もなく、むしろ先にサトノダイヤモンドに押し込まれ接触していました。そのタイミングで前の馬が外に出てきたことにより、急な進路変更が必要になりましたが、こういったケースは競馬ではよくあります。着差を考えれば降着もあるでしょう。しかし、それを踏まえた上でも、この処分の重さに関しては疑問が残ります。世界へと、どんどんと出て行くほどレベルを上げた馬達とは反対に、この判定はアマチュアのように感じてしまいました。見ている側も乗っている側も全ての人たちが納得のいくルール設定が早急に行われることを願っています。
今週はオークストライアルのフローラSにマイラーズCなど注目レースが沢山あります。その中でも、私が注目しているのは、安田記念に続くマイラーズCです。ドバイで世界を制したリアルスティールも参戦を発表したレースの前哨戦とも呼べる戦いからは目が離せません。その中でも、まず注目を集めるのは、重賞未勝利ながらも善戦を繰り返してきたフィエロになるのではないでしょうか。今回はミルコが騎乗停止になり、鞍上にも注目が集まりますが、勝ちきれなかった馬が勝ちきるレースが続く中で、今回もその流れがあるのではないか?と思っています。その他にも器用な立ち回りができればエキストラエンドもまだまだ力は衰えてないのではないでしょうか。その他にも連勝街道で一気に重賞制覇したいネオスターダムやケントオーなどは、どういったレースをするのか楽しみです。レース後には募金活動が行われると聞きましたので、是非競馬場に足を運び、募金協力の方も宜しくお願いいたします。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。