元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
女王の指輪
2016/11/16(水)
皆様、こんにちは!先日、滋賀県では驚く事件がありました。京都市内で盗まれた車をパトカーが発見し、追跡していると、100kmを超えるスピードで逃走し、事故を起こしました。その後、運転していたのは17歳の免許もまだ取れない未成年だったとのことです。本人も重傷ということです。少し前までならば考えられないような事件に、安全大国と言われてきた日本も変わってきたのだなと改めて、時代の変化を感じさせられました。その前には、他府県で高校生が麻薬を吸っていて逮捕など、悪いことへの認識が薄れてきている気がしますね。孫が大きくなるときには日本はどのようになっているのか、非常に心配です。
日本が良い方向にいくことを願いつつも、先週のレースを振り返りましょう。京都競馬場ではエリザベス女王杯が行われましたが、制したのは開業5年目になる吉村厩舎のクイーンズリングでした。去年はG1で少し足りないなという印象でしたが、馬も成長し、今回は、パドックから調子の良さが非常に伝わってきました。踏み込みの力の入れ方も、後肢の運びも素晴らしかったです。そして、レースではゲートイン直後、駐立は上手く行っていたのですが、出る寸前に気合が空回りし、脚をバタつかせながら飛び上がるスタートとなってしまいました。しかし、百戦錬磨の鞍上は落ち着いていましたね。
じっくりと内の2頭が行くのをみると、すぐに後ろの内ラチ沿いに入れました。ここで焦らなかったことが、今回の勝因の一つになります。そして、1コーナーでは福永君騎乗のシャルールが内へと急に入る事象があり、同じ勝負服のマリアライトが不利を受けてしまいましたね。これにより、福永君は戒告を貰うことになりました。しかし、私個人としては、G1の舞台で1番人気に推奨されている馬への、あの行為は戒告だけでは軽すぎると思いました。そんなバタつきを内で関係ないように見ていたクイーンズリングが迎えた4コーナー手前。思わず、「ここで、もう一呼吸我慢!!」と叫んでいました。するとミルコに聞こえていたのかというくらい、一呼吸我慢してから、内ラチギリギリを攻めて周りました。
直線に入ると、スローの展開と腕っ節の強さがあるルメールが噛みあいシングウィズジョイが抜け出しました。それを、追うようにパールコード抜け出す間をクイーンズリングが抜け出し、見事な勝利を挙げました。鞍上のミルコは京都での初G1制覇となり、厩舎と馬にとっても初G1制覇となりました。名前のごとく、女王のリングをはめることになった勝利は、本当に陣営の挑戦する気持ちが生んだものだと思います。そして、日本の騎手になり、乗り続けてきた相棒とのG1勝利はミルコにとっても特別なものになったと思います。
まだまだ熱いG1シーズンは続きます。今週もまた京都競馬場でマイルCSが行われます。モーリスが抜け、期待していたリアルスティールも出ないとあって、本命が割れそうなレースになりそうですね。その中でも私のイチ押しはイスラボニータになります。皐月賞を制覇してから伸び悩んでいる当馬ですが、能力は本物ですからね。前回のデキで、トライアルを②着に来たというのも、今回力一杯で走った場合、地力の違いを見せ付けるのではと思っています。そして、騎乗するルメールのスタートの上手さに、腕っぷしの強さがここでも活きる気がしています。そして、2番手はサトノアラジンになるでしょうか。前走は休み明けでの快勝となりましたし、ベストは1400mですが、こちらも川田君ならやり切ってくれるのではないかと思っています。
重賞3連勝中のヤングマンパワーも気になりますね。こちらは、戸崎君に先約があったためバルザローナに変わっていますが、彼も非常に上手い騎手ですからね。ただ、個人的には戸崎君だからこそ乗りこなせていた馬と思っているだけに、少し評価を下げざるを得ないです。その他では、掛かるところを豪腕ミルコが押さえ込み一発を狙えば怖いサトノルパンに、もう一度マイルで輝きをロードクエストなども注目して見ていきたいと思います。今年最後の京都G1を制覇するのは、どの馬か!生ファンファーレは鳥肌ものですからね!是非、皆様も京都競馬場へGo!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。