元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
圧巻の金
2016/12/14(水)
皆様、こんにちは。今年の漢字が決まりましたね!なんと、今年の漢字はオリンピックの金メダルから金に決定しました。しかし、個人的には、金メダルよりも吉田沙保里選手の涙の銀が印象に残っています。その他にも、ゲス不倫など不倫が話題になっていたことからも倫かなとも思っていましたが、さすがに年を代表する漢字にはなりませんでしたね。
先週は世界に衝撃が走りましたね。日本代表のモーリスが香港カップの劇的なラストランで、見事に引退レースで、圧勝劇を繰り広げました。その走りは、香港では神の域とまで評価され、次世代へどのように繋いでいくのか非常に楽しみになりました。その他にもサトノクラウンが香港ヴァーズに優勝し、堀先生は初めての同日2つのG1勝利をした日本人調教師となりましたね。両馬共、抜群のデキで、これで負けては仕方ないといった仕上げのなか、騎乗した二人の技術も素晴らしく、全てがかみ合った勝利だったと思います。決して観光や冷やかしではなく、勝負をしに行った日本代表全ての馬にありがとうと伝えたいです。
そんな興奮の最中、日本では来年のクラシックを占う阪神ジュベナイルFが行われました。当日はメインまでに5勝を挙げていたルメール騎乗のソウルスターリングが見事勝利を収めました。内容としても、申し分のないレースだったと思います。②着には期待していたリスグラシューが入りました。こちらは、出遅れながらの鬼脚でしたが、相手が悪すぎましたね。名血統での圧倒的な力は、まさに去年のメジャーエンブレムを見ているかの様な気持ちになりました。しかし、ルメールは本当にいい馬に乗り、波に乗り切っていますね。勝たせることができるのでいい馬が集まるのは当然のことですが、スタートしてから今回も一頭だけ別次元にいるような走りでした。過大評価ではなく、今一番、本当の1番人気に乗っている騎手と言えるでしょうね。
前回のジャパンカップの時にも言いましたが、一番強い馬が一番楽な競馬をしての勝利は、正直面白くはありません。私が競馬を見ていて面白くなるのは、ギリギリのせめぎ合いであったり、人気のない馬がどれだけ対抗していくかです。今回のレースに関しては相手とのレースに対しての対応策が全て薄かったように感じました。それは、トップにいる多くの騎手が不在だったことも影響したでしょうが、ライアンのように勝ちに行く競馬をしてくれる騎手が他にいなかったことが、ジャパンカップよりもなお、終わった後の物足りなさを感じた理由だったからかもしれません。シンハライトとジュエラーの戦いや、ロゴタイプの奇策など、熱い戦いが見られることをファンの一人としては願っています。
牝馬が終われば、次は2歳馬混合の朝日杯フューチュリティSがやってきます。今回の注目は何と言っても、牝馬ながらに牡馬に挑戦してきたフランケルが送りだしたもう一頭の怪物ミスエルテではないでしょうか。今年はまさに牝馬の年とも呼べるほどに強い中、ソウルスターリングと1位の座を争うのは、この馬と言えます。その他には、距離の不安がありつつも展開が向けば切れ味抜群のモンドキャンノや自在性が活かせれば面白いレッドアンシェル、松若君の初G1なるかアメリカズカップに、豊ちゃんの全G1制覇が懸かるタガノアシュラ。ルメールの2週連続勝利なるかダンビュライトなど、多くの話題があるレースとなるだけに、注目が集まります。
今週のレースでは熱い戦いを見せてほしいと心より願っております。今年の漢字である金のように金メダルを取るのは、どの馬か!結果は阪神競馬場で、見届けてください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。