元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
祝!岩田君
2017/1/19(木)
皆様、こんにちは!先週はもの凄い寒波に襲われ栗東は積雪20cmほど積もりました。その影響で、京都や中京では競馬が延期になるハプニングとなりましたね。馬にとっては一日や二日空くだけで、体調が変わり、特に休み明けやお正月をゆっくりと調教していた馬にとっては、とても体調管理が難しい週となりました。
馬場にも影響が出ていましたね。見た目以上に柔らかかくなった馬場に、馬の力+適性力といったものがカギになった週でもあったと思います。最近の馬場を見ていると、空気を入れる技術を使うようになり、芝自体の育成は非常に良くなったと思いますが、逆に馬場が幾分柔らかくなり、悪天候になった際に、柔らかくなりすぎるのではないかと個人的には感じています。こういった馬場の悪化が進む今、やはりスクラッチ制度について、もう一度考える必要があるのではないか?と思います。この雪でホースマンにとっては大変な週となりましたが、昨年を大きく引き離す売上を記録しました。やはり、インターネットでの馬券購入が主流になったことが大きな原因なのかな?と思いますね。しかし、売上だけではなく、実際に競馬場に足を運んでくれるファンの皆様の増加にも期待したいです。
それでは、延期された日経新春杯を振り返りましょう。レースは、サトノダイヤモンドと接戦を繰り広げたミッキーロケットが1番人気に推奨され、2番人気には才能は抜群でキャリア5戦のシャケトラが選ばれました。レースはスタート後、少し休みの影響で太かったヤマカツライデンが逃げる形を取りましたが、体が重いことも影響し、いつもよりも行けませんでした。そんな中、シャケトラには鞍ズレするハプニングがある中、迎えた直線。早め先頭に立ったミッキーロケットと和田君のコンビが見事ハナ差しのぎ、初重賞制覇となりました。
和田君にとってはクランモンタナ以来の重賞勝利となり、この春に向けて、大変うれしい勝利になったと思います。②着のシャケトラは鞍ズレさえなければというレースで、少し悔しくも、春や秋に向けては大変楽しみなレースになりました。その他に人気をしていたカフジプリンスは、結果論としてやはり岩田君が合っているのかなと思いましたね。レーヴミストラルにとっては、8か月半ぶりのレースで延期になり、完全に太く映りましたし、まったくもって合わない重馬場に落鉄と、ついていないレースにもなりましたね。それぞれの馬が、この延期によって一喜一憂となったレースでした。
延期より前の日には、岩田君が1年4か月ぶりに中央競馬の重賞(愛知杯)をマキシマムドパリで制覇しましたね!この勝利は、本当に嬉しかったです。少し前までならば、重賞と言えば岩田と思っていたのが、このところの不振で遠のいていましたが、馬乗りだけを考えれば、本当に天才と呼ぶにふさわしい男が帰ってきたことが何よりも嬉しかったです。色々なことを乗り越え、最近ではすっかりおとなしくなってしまっていた岩田君の勝つか負けるかの腹をくくった騎乗というのは、勝った時に清々しい気持ちにさせてくれますからね。ここを弾みに、他の重賞でも岩田君の名前がこれからも聞けることを楽しみにしています。
変則の4日間が終わったばかりですが、今週の競馬にいきましょう!今週は中京では東海S、中山ではアメリカJCCが行われます。その他にも、天才豊ちゃんと日本競馬界のアイドル藤田菜々子ちゃんが参戦するマカオのレースもあります。その中でも、私の注目は東海Sになります。2017年の初めてのG1(フェブラリーS)に向けて、ここを試金石にする馬が多いでしょうからね。
注目はグレンツェントになるでしょうね。今回は初コンビとなる典ちゃんがどの様な騎乗をするのかにも注目しています。次点ではピオネロにも注目したいですね。初めてのダート挑戦から、連対を外したこともないですし、器用な馬だけに、どの様な展開にも対応できるのではないでしょうか。力で言えば、私はこの馬が一番ではないかなと思っています。日経新春杯制覇で波にのる和田君騎乗のアスカノロマンも得意な舞台だけに負けられないでしょうし、初ダートでいきなりのG2挑戦のラストインパクトにも楽しみを込めて注目しています。2月の本番を前にそれぞれの思惑がぶつかりレースを是非、生観戦してみてください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。