元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
3ルコ
2017/2/23(木)
皆様、こんにちは!とうとう本格的な寒さから解放だ!と喜んでいた矢先に、栗東では朝から雪が降り、油断した気持ちを一気に寒さで引き締め直した松田です。そんな中、世間ではイングランド5部のゴールキーパーが注目を集めていますね。体重は100キロを超える体格ながらもチームに所属している選手です。なかなか、サッカー選手と呼ぶには厳しい体格ながらも、注目を集めていましたが、そんなキーパーが試合中にベンチでパイを食べて、退団になるかもという記事を読みました。そんなことで退団になるのかと驚嘆した週となりました。
では、競馬の話にまいりましょう。先週は東京競馬場で2017年初のG1レース フェブラリーSが行われました。そのレースで期待していたのは、何かしらの連覇(※前回のコラム参照)!そして、見事に連覇を決めたのは騎手ミルコ・デムーロとG1初勝利の相棒ゴールドドリームでした。レース前のパドックでは少しうるさいところを見せるも、前走のレース前とは全く違う形を見せました。厩舎側も前回、馬のテンションをあげすぎたことを活かしての対策はお見事でした!
レースはスタート直後、コパノリッキーがハナをうかがうかなと思っていた矢先にインカンテーションがハナを奪いに行く形となりました。少し早くなりそうに見えたペースでしたが、落ち着いた瞬間、勝利したゴールドドリームとミルコが早々に進路を変え、外に出しました。ここがまさに勝負の分かれ目でした。馬のテンションさえコントロールができれば、能力は抜けていると信じているからこその騎乗で、外からキングズガードに被されかけた一瞬を狙って外に出しました。ここまでスムーズに事が運ぶと、あとは百戦錬磨のミルコならではの追い出しで、見事に食らいつくベストウォーリアを振り払い勝利しました。
ゴール後には久しぶりに見たミルコの飛行機にファンの皆様同様、興奮しました。ゴール後でも危険なため、すぐに今後はやめてくださいと注意をもらったようでしたが、あのポーズを全速力の馬の上でできるのは、ミルコだからこその芸当だと思います。そして、負けはしましたが、戸崎君の騎乗は本当に素晴らしかったです。馬の器用さとレースの上手さを活かし、ギリギリまで待ったあの騎乗は、そう簡単にできる芸当ではありません。2017年は不調かな?と心配していましたが、あの騎乗ひとつで、彼の成績もグンと上がってくることだと思います。しかし今回は、本当に3週連続重賞勝利の③番の3ルコが3ごとな連覇をしました!!
興奮のG1戦のあとは阪急杯や中山記念、そしてアーリントンCもありますね。その話をする前に、突如、帰国が決まったライアン・ムーアについて一言だけ。優先契約のための急遽の帰国となりましたが、今回の印象は最悪でした。現在、オフシーズンだっただけに馬の乗り方もいつもの世界一の技術は見られず、少し残念な思いをしていたところで帰国。中山記念で騎乗予定だったリアルスティールは戸崎君に乗り替わりとなりました。もちろん、契約があるからと思いますが、それでも騎乗を承認していた時点で、騎乗予定は整理しとかなくてはいけないと思います。毎日、馬に関わるうえで、だれだれが乗るなら、こういう作り方をしようというイメージを持って仕上げることもありますから。だからこそ、リアルスティールに関わる全ての人に対して、すごく悲しくなりました。上手いから許されるだけではダメな気がします。
そんな中山記念には、戸崎君を迎えたリアルスティールに、去年おしくも敗れたアンビシャス、海外で復活したヌーヴォレコルトにドバイ参戦を表明したヴィブロスなど今年も豪華なメンバーが揃いました。その中でも、私の本命はアンビシャスになります。枠にもよりますが、中より外だとより信頼がある気がします。ここは前年度②着の当馬が万全の体制でリベンジを達成するのではと思っています。2番手には、やはり力があるリアルスティールでしょうね。その他には個人的にネオリアリズムの器用さにも期待しています。何でもできる馬ですから、ここでもアッと驚く一発に期待したいです。今週からは阪神に中山!皆様間違えないように現場にきてください!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。