元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
考えるよりも自然に動いた!勝ちへの騎乗
2017/6/28(水)
皆様、こんにちは!先日、将棋の世界では藤井四段が破竹の29連勝を挙げましたね!まだ年齢は14歳と若く、未来ある若者の躍進に、何か将棋の神がくっついているようにすら見えてしまいます。ちょうど、豊ちゃんが出てきた時と同じような印象ですね。若いのにどこか先が見えているように落ち着いており、全てを見透かされているような感じです。この勢いはどこまで続くのか、期待しかありません。
さて、それでは競馬の話に参りましょう。春の古馬三冠レースを2連勝し、リーチとなったキタサンブラックと豊ちゃんが宝塚記念にウオッカ以来となる10万票超えで出馬し、注目を集めました。しかし、勝利したのはサトノクラウンとミルコでした。前走の大阪杯ではマイナス14キロの体重に、思わずこれはダメだと思ってしまった返し馬。そこから厩舎の対応力がまさに今回の一番の勝因だったと思います。後で聞いた話だと馬運車のスペースを少し大きめに取り、馬房に関しても音がなるべく出ないところへ依頼を出し、前の週から音の確認までをする徹底ぶり。そして、調教では前回の失敗を踏まえ単走の軽めに。ここまで前回からの失敗を活かし、挑戦した堀先生ならではの準備だったと思います。
そして、もうひとつの勝因がミルコの巧みなレースメイクだったと思います。まずは、スタート後、キタサンブラックがいけないのを見るとスムーズに真後ろのポジションを取りに行きました。ここで、内からゴールドアクターも狙っていたキタサンの真後ろを譲りませんでした。ここがまずひとつ目のポイントです。意地でも譲らないことを示したことで、ゴールドアクターを内へと入れ込みました。そして、ペースが少し遅いと感じた矢先、スッとキタサンブラックを突き、ペースアップを促した後、しっかりと馬を抑えこみました。この抑えこむところが、つつくよりも難しい技術でした。
しかし、それをも簡単に実行すると、迎えた4コーナー。外から岩田君騎乗のレインボーラインがマクりぎみに来ても、全く焦ることなく我慢させました。万全のレースメイクをしたことで、ミルコにも余裕が生まれ、最後は圧勝劇で宝塚の舞台を勝利で締めくくりました。厩舎と騎手、そして馬の力が全てかみ合った勝利でした。ミルコは去年の悔しさを最高の形でリベンジできましたね。何か勝っていても引っかかっていたものがとれたような勝利に、今後のミルコにも期待をしたいと思います。
敗れたキタサンブラックはどこか本調子でないように見えましたし、何より馬場にも問題があったかも知れません。②着に入ったゴールドアクターは素晴らしい調教で期待していた通りの走りでしたが、サトノクラウンのポジションを取り切れていれば、もっときわどい勝負だったと個人的には思います。内への対応も馬場を考えれば、良かったとは言い切れませんからね。その他にもシュヴァルグランも勿体ないレースとなりました。戦前、トライをしないと勝てないとは言いましたが、押し出された逃げに、結果として馬場が合わなかったことも重なり、トライをしたのではなくさせられて何もできないまま終わってしまった印象です。シャケトラは引っかかりながらも、ギリギリで抑えこみ、あの着順は秋の主役候補で間違いない能力を見せてくれたと思っています。頭数は少なかったですが、春のグランプリに相応しいレースになったと思います。
さて、今週からは夏競馬の始まり!中京・福島が開催され、少し早めに始まっていた函館との3場開催となります。中京ではCBC賞、福島ではラジオNIKEEI賞が行われます。まず、注目をしたいのはCBC賞のメラグラーナになるのではないでしょうか?前回の大敗は完全に馬場と考えれば、今回こそはの一戦になると思います。鞍上にはリーディングを奪還した戸崎君が珍しく遠征してくるところからも本気度が伺えます。しかし、天候次第では前回のようなこともあることからも、開幕週とはいえ心配は馬場かと思っています。
2番手は菱田君の初重賞の鍵を握るメイソンジュニアになるでしょうね。重賞でも好走を続ける馬ですし、レースも自分で作れる強みもあります。馬場次第ではメラグラーナを倒してもおかしくない存在になりそうです。そして個人的に期待しているのはアリンナになります。こちらは最軽量を活かし、メイソンジュニアとケンカしないレースをすれば、前残りでの決着も見られるかも知れませんよ!夏競馬の前には名古屋のウナギで力をつけ、見事な勝ち馬券を手にして下さいね!くれぐれもお間違えなく!今週は中京・福島・函館!!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。